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#175 俺たちと銃士が裏庭戦を繰り広げた件

 モーガンは銃を両手に徐々に接近する。俺たちは息を潜めつつ、応戦の準備に取りかかった。と、言っても現状は作戦がないため行き当たりばったりでやり合うしかない。

 ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!乱射された散弾が俺の横や上を掠めていく。

「ひっ...!」

それがあまりにギリギリを攻めてきたので俺は思わず悲鳴を挙げる。

「そこか...!」

声の大きさで言えばかなり小さかったはずだが、なぜか位置がバレてしまったようだ。

 奴の耳がとても良かったからだろうか?などと、推し量っている暇はない。奴は噴水の上で空中回転をし、その際に俺の上も通過する。俺はすぐに、

「『マジッククリエイション』っ!マルチドーム!」

と詠唱。俺と雅を魔力の半球が囲み、その層を以て

ズガンッ!ズガンッ!

と放たれる銃撃を防ぎきる。

 モーガンはこちらを背に向け降り立つ。

「(今のは錬金術か...?マスターからはその技術は失われたと聞いたが?)」

からの小首を傾げて、シュバッ!と勢いよく振り向き、銃を向ける。しかし、そこには俺たちの姿も、また生成された半球もない。それもそのはず、俺たちは「テレポート」で反対へ行き、半球はさっきの銃撃で跡形もなく砕け散ったのだから。

「(いない...?)」

奴は再び小首を傾げた。

 俺はそれを「ペルスペクト」で見ながら、仕組んでおいた精神感応スキル「テレパス」のネットワークをを介して、

「アリシア、シリアンさん。そこから、奴を狙えるか。」

と2人に伝える。

「できるのはできるけど、あんたってもしかしておバカさんなの!?あいつには魔法が効かないってことぐらいもう分かってんのよ!?」

「そうだぞ、俺たちに反射してきた自分の攻撃を受けろってんのか...!」

と即刻怒られたが、試行に付き合わせる以上、そこら辺もちゃんと考えていた。

「試したいことがあるんだ。その件でお前らが傷付けるようには絶対させない!それが、言い出しっぺとしてのせめてもの責任だ!だから、威力は弱めに設定しといてくれ。」

と俺は諭す。

 「まぁ...あんたがそこまで豪語するなら私は信じるわよ。その代わり、何があっても私を守りなさいよ。」

「俺も同感だ。では、最小限の魔力とともに『ファイアシュート』を。」

「分かったわ。3、2、1で行くわよ。」

その諭しが効いたか、2人とも納得して打ち合わせまでも行った。

 そして、アリシアとシリアンさんは声を揃えて、

「「3、2、1...!『ファイアシュート』っ!」」

双方から炎の球が奴を狙い、これをモーガンは

「『マジックカウンター』。」

と両方反射。俺は「マジッククリエイション」で彼らを守り、その隙に「テレポート」で移動させた。

 「マジックカウンター」は単体にしか発動できないという予想は外れた。だが、同時に兼ねていた検証の結果も得ることができた。その結果は俺にとってはかなり有益なものである。


 モーガンは球の飛んできた木の方へ寄るが、もちろんそこにアリシアもシリアンさんもいない。それと引き換えに俺と雅は後ろにいて、アリシアに「ヒュージ」で肥大化してもらった噴水囲いの欠片(序盤の威嚇射撃の際に手に入れた)を、同アリシアに「ガイアプロテイン」で超強化してもらったイカつい筋力で振り下ろす。

「甘い。」

が、モーガンは俺たちを見ずとも後ろ手で撃ち抜かんとした。俺と雅はこれを欠片で防ぎ、別の遮蔽物へと消える。ちなみに、後ろにあった岩場の裏である。

 俺はそこへ隠れるや否や、

「『マジッククリエイション』っ!サブマシンガン!」

と火薬でなく、魔力で撃ち出す短機関銃を生成。中の仕組みはよく分からないのでハリボテに魔力で銃弾を加速させるようにしたのみである。

「銃なんて使えるんですの、悠人くん?」

と雅が言うがもちろん使えるわけがない。だから、数撃ちゃ当たる作戦を遂行できる短機関銃を選んだのだ。

 俺はこれを持ったまま、岩場から顔を出し、ズドドドドドドドドドド...!ただひたすら乱射する。バリバリィィィッッッン!バシュバシュバシュ!シャバシャバシャバ...。流れ弾は窓を割り、壁に弾かれ、水に沈む。

「『マジックカウンター』っ!」

機銃掃射というのは逃げ場がないために近距離持ちにとってはかなりの天敵。だがら、モーガンもそう唱えるのだが、たまたま一発弾が掠めて、そこに傷が現れた。

 「何っ!?」

とモーガンが驚きを露にしたのを他所に、

「何故、攻撃が当たりましたの?」

と雅が聞く。

 これを説明する前に、まずは魔法というものの前提、というか原理を教えておかければなるまい。実は魔法というのは古代近代に関わらず、等しく"現象"の一種である。

 エミールによるとこの"現象"を引き起こすために必要なものこそが魔力という見解が魔法学の常識らしい。

 それは古代なら例えば象徴術式、魔力は象徴物と結び付けて"現象"を導き出すために使われる。近代な例えば「ファイアシュート」、魔力は炎を生まれて撃たれるという"現象"を導き出すために使われる。そうして、一度生み出された"現象"にはもう魔力など不要なのである。だから、「ファイア」

 「実はさっき奴が『マジックカウンター』を唱えたときに、魔力感知で見てみたんだがな...。魔力そのものは普通に通過してたんだよ。」

そう、先程の双方攻撃に兼ねていた検証は「マジックカウンター」は魔力も反射するのが否かであった。結果は反射せず、であった。

「それはつまり...あの方の『マジックカウンター』はあくまでも魔法を反射するまじないであって魔力を反射する呪いではない、ということですの?」

「そういうことだ。だから、魔力をただ固めただけの銃弾には『マジックカウンター』を貫通したんだ。」

俺と雅が小声でそんなやり取りをしている内に、モーガンが徐々に近付いてきているのがわかる。

 だが、これからの作戦には不意打ちがないとキツい。

「アリシア、噴水の両脇に木が見えるだろ。」

「えぇ。」

「それを魔法か何かで焼き切ってくれ。」

「分かったわ。」

「そこをルチア、ルナ。お前らがそれぞれ木の後ろに言って、打撃系の魔法で奴に吹っ飛ばせ。」

「分かったよぉ。」

「分かりました。」

と「テレパス」で作戦を伝える。これで奴の気を引こうというのである。


 「『マルチレイ』。」

アリシアは噴水裏で杖を突き出し、2本の光線を何か挟むようにして、それぞれで両脇の木を焼き切る。その音を聞きつけ、

「ん?」

とモーガンは後ろを向く。

 「『スプリットテレポート』。」

次にアリシアは横に岩に隠れているルナとルチアをそれぞれ木へ。ルチアはメイスを振りかぶり、ルナは拳を握り、

「『クリスタルバスタードハンマー』っ!」

「『ハイパーパワードスマッシュ』っ!」

とそれぞれ最近、習得したという現段階最強の打撃系スキルをに木に発動。

 すると、切れた木は簡単に吹っ飛び、モーガンを狙う。もちろん、これは物理攻撃であって魔法攻撃でないので、「マジックカウンター」では防げない。

「マズい...!」

奴は咄嗟に後ろ飛びでかわした。

 瞬間、俺は岩場から飛び出し、まずは近くの木の太い枝へと向けて、15Pを捧げた

「『ワイヤーバインド』っ!」

手から現れた鎖はその幹を縛り、俺はこの下端を持ってスイング。前に行く時には、

「『ブースト』っ!」

と唱えて加速。

 俺の体は放物線を描き、その落下地点にモーガンを合わせる。ズガンッ!ズガンッ!と散弾が襲ってきたが、

「『マジッククリエイション』!マルチシールド!」

と盾をたくさん生成して、これらを防ぐ。さらに、

「『マジッククリエイション』!ピストル!」

と先程の自動小銃と同じ原理の拳銃を生成。あと、一応、アリシアに「マジックフィルム」をかけてもらった。

 俺はそのまま、奴の前まで来ると首元を掴んで地に押し付け、残った慣性でしばらく滑らせる。奴はへ短剣へ手を伸ばすが、その前にその頭に拳銃を突き付ける。

 「俺の体は魔力で守られている。それにこれだけの距離、今度は掠り傷では済まないぞ。それとも、三大英霊のお前なら逆転の一途を辿れるか?」

俺は未だに効果の残る「ガイアプロテイン」の押し付けでモーガンの身動きを封じて言う。

「いや、これだけの力と0距離射撃の寸前だ。いくら足掻くとも、死は免れないだろう。」

すると、奴は諦めて両手を投げ出した。

 「早い目に負けを認めてくれて、手間が省けたよ。」

これに俺は最後に若干の感謝を覚え、それを奴に伝えてズバンッ!0距離から脳天目掛けて引き金を引く。

「君らとの戦いは実に楽しいものだったよ。礼を言おう。」

奴はそう残して、穏やかな死に顔で空気中に溶けていった。

 「それは、どうも...。」

モーガンに聞こえたかは分からないが、俺は最後に小声でそう言う。遺言から察するに、あの男はかなりの戦闘狂らしい。とにかく、これで一件落着。俺たちは三大英霊全てを倒すことに成功したのだった。

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