#173 街外れで狙撃手か何かに絡まれた件
セレスと別れを告げた後、俺たちは南の街外れを散歩していた。そこの森に毎年夏、美味しい果実がなるとい情報を聞き付け、「テレポート」でいつでも帰れるしとそれを探しに来たのである。まぁ、いわゆる間食を取りに来たという奴だ。
その名をパラディーゾフルーツ、楽園の果実という。何だか生命の実だとか知恵の実だとかみたいなのを彷彿とされる感じだが、実はこの世界ではこのフルーツと同じ仲間がそれらのモデルだと考えられている。
しばらく、森を進んでいると途中で黒髪紅眼で見覚えもある1人の男性に俺たちは出会った。
「君らは確か...ニージマユート君たちだったか...?」
その男性はそう言う。俺は
「はい、その通りです。覚えてくれたんですね。確かダイノロートスさんでしたよね。あの、着かぬことことをお伺いしますが、フロリスさんは今日はどこに?」
と問う。答えは憂い、彼は
「実は数ヶ月前から行方不明なのだ。モナルキーアから捜索隊も派遣して、入念にアルメニアを探しているのだがまだ見つからんのだ。もしかしたら、既に死んでいるかもしれん...。」
と言った。
「大丈夫ですよ。必ず生きていると信じましょう!」
と励ますことぐらいしか俺にはできなかった。共に捜そうにも時間が掛かり過ぎるし、数ヶ月前のことだから有益な情報を得るのも難しそうなのである。
「そうだな、私も信じてみよう。諦めず捜索を続けるよ。もし、彼を見かけることがあったら、この紙とともにモナルキーアに引き渡してほしい。」
その言葉が少しでも功を奏したか、ダイノロートスさんは明るい表情でそう言った。俺たちは彼から「行方不明者目撃届」なるものを受け取った。俺は、
「はい、わかりました。」
「ありがとう。」
のやり取りの後、これを綺麗に折り曲げてズボンのポケットへ差し込んだ。
そして、ダイノロートスさんは俺たちの来た方向へと去っていく。
それから、数分ほど森を進んだだろうか。木々はいよいよ鬱蒼となり、舗装された小道も少し前に途絶え、そんな所にお目当てのパラダイスフルーツのなる木があった。色はヘタ付近のクリーム色以外はピンク色、形は球根型でその風貌はイチジクとかによく似ている。
「『ソードビーム』っ!『ソードビーム』っ!『ソードビーム』っ!『ソードビーム』っ!『ソードビーム』っ!...」
俺は「ソードビーム」を連呼して、飛ぶ斬撃で果実を下に落としていく。最終的には十数個の果実が地面に転がった。
俺はその中から1つを取って、
「『ハイドロボム』っ!」
と土を弾き飛ばす。からの、一口かじる。ジュクッ...!と濁った音が口の中へと響き、中の黄色い粒が弾けて強めの酸味が口の中へと広がった。しかし、そこに遅れてほのかな甘味もやってくる。食感はイチジクっぽいのだが、味は夏ミカンっぽくて何だか不思議だったが、美味しいことに変わりはなかった。
俺たちはこのパラダイスフルーツをかじりつつ、元来た道を戻っていく。森はすっかり闇に包まれ、途中、夜行性の魔物とかが茂みから襲い掛かってきた。と言っても、
「『マルチウィンド』っ!」
「『マルチエナジー』っっっ!」
「『マルチレイ』っ!」
「『クリスタルハンマー』っ!」
ギィィィッッッン!と魔法と魔剣で全て瞬殺。徐々にスキルポイントと経験値が貯まっていった。
やがて、森を出ると日はもう西に半分沈んでいる。
「...!」
その様子を見ていると、雅が何かの接近を感知した。咄嗟の判断で俺を押し、その刹那にバシュン!俺のさっきいた場所を銃弾らしきものが通過した。銃弾らしきものが通過した。
この世界では火縄銃的なの以外に銃を見たことがないのだが、辺りに人が見えないのを見ると、この元手はスナイパーライフが何かである。つまり、俺たちは狙撃手が何かに絡まれた訳である。
「アリシア!『ラージテレポート』だ!」
「わ、分かってるわよ!『ラージテレポート』っ!」
俺の指示に応えて、アリシアが唱えると俺たちを光が包む。そこへ、次の銃弾が来たが、これは見切った雅が剣で斬り落とした。もしこれが連続だったら、まさに2つ目の竿のソレである。別に下ネタとかじゃなくて。
ともかく、そのお陰で俺たちは無傷で瞬間移動することができた。行き先はプロスペレの我が屋敷、その玄関。何とか逃げ延びたようだ、俺は安堵のため息1つをついた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
時は少し前に遡り、場はダンディコーンの灯台上。そこに、狙撃銃1丁を手に、散弾銃2丁を背に、また短剣1本を腰にの男1人がいる。
その男は2射目の後、狙撃銃のスコープを通して悠人たちが消えるのを確認する。
「瞬間移動魔法か...。奴ら、どこへ消えやがった?」
と言って、スコープから眼を離して、背中にしまう。
次に鞘の横のポーチから短冊1枚を取り出し、その鞘から短剣も取り出し、その指をサクッ!と軽く切る。すると、血が滲み出てきて、血文字で「positioning」と記した。これは古代魔術の1つで陰陽術式である。
しばらくすると、その文字は消えて代わりにイングの文字でとある座標が浮き出てくる。男はこれを見ながら、ポーチからさらに1枚短冊を。ここにその座標と「set point」を記した。
ここに魔力が通った数瞬、今度はその男がそこから姿を消した。




