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#168 アルマで出会ったあの少女と再会した件

 さて、奴から必死に逃げている内にいよいよ水門がその巨体を俺に見せつけ始めた。つまり、近付いてきたというわけである。

 見ると、水門の上には丁度係らしき方々がいるのがわかる。俺はそちらに向けて、

「水門を閉めてくださぁぁぁっっっーーーい!!!」

と叫ぶ。事情の説明もなし、いきなり言ったからか戸惑った素振りを見せる彼ら。だが、俺の後ろにラクス・ケトゥスが付いていることを確認した瞬間、慌てた素振りに変化。彼らは手を振りかぶって、水門の上辺りへ何かを振り下ろした。

 すると、ゆっくり水門が下り始める。俺は半分ぐらい閉まった所で引き連れ街の外の湖へ。

 刹那、また奴が飛び込んで来る。俺は舟を右にやってかわし、そのまま方向転換をしてやって、閉まりかける水門を目指す。だが、結局は行く手を阻まれ、引き返す。

  「ギャァァァァァッッッッッ!」

その流れで俺は湖を右往左往。時には右へ漕ぎ、時には左へ漕ぎ、時には例の高速方向転換で奴の飛び込みをかわし続けた。その度に水飛沫が上がり、辺りはビショビショ。水門は流石にもう閉まりかけ。そこで、俺は一つの道筋を見出だした。

 見つけた―――――――完遂への一筋!俺は若干パロディーの入った言葉を心で呟いて、水門の方へと直進を開始する。後ろを見れば、奴はタイミングよく潜っていって跳ぶ準備をする。俺は進みつつ、その動向をしかと見守る。水門は八分目ぐらいに差し掛かり、刹那、俺は舟から飛び出した。

 ザバァァァッッッン!巨鯨は同時に跳んで俺を丸呑みせんとする。が、俺がその前に空中で毛延びをして飛び込みの準備。少し下に傾いた所で、

「『ブースト』っ!」

と加速を掛けた。その勢いでザバババ...!としばらくは水面を滑るが、やがて水中へ。それでも、勢いは収まらずに高速で水門の下を通過した。

 そして、腰に着けたライフベルトのスイッチを入れる。すると、付与された気体生成魔法か何かにより内部へ空気が貯まり、ベルトは浮き輪化。そのまま、水上へ浮き上がる。と、同時に辺りに、

ゴォォォォォッッッッッン!

という鐘のような音が鳴り響き、水門が少し凹んだ。

 「はぁ...。難は去ったな。」

俺は安堵と疲労の混じったため息をつく。が、何やらおかしい。先程から、

ガァッン!ガァッン!ガァッン!

と鐘の音擬きがずっと続いている。何事だと思ってみてみると、水門が飛んでもないぐらいに凹んでいる。

「マジか...。」

俺はその様にしばらく唖然。水門を丈夫にしろ、だとかそんな話ではない。これは明らかに奴が水門を破って抜けようとしているのだ。そのために何度も叩こうなんて普通は思い付かなさそうなことである。

 俺は直感で危険を感じて、向こうへ泳ぎ出した。

 それからしばらくして、奴は門を破って運河へと逆戻りをしてくる。俺の泳ぎと巨鯨の泳ぎでは図体が桁違いに大きいとは言えどあちらが優勢でどんどん距離を詰められていく。これには俺も流石にまいって、ただ逃げつつ、ただ

「誰かぁっ!助けてくれぇぇぇっっっ!」

と助けを求めて叫びつつすることしかできなかった。


 と、そんな声を聞き付けたか運河の横を歩いていた1人の少女が歩みを止める。

「ったく、仕方ないわねぇっ!」

と言って塀に乗り出したそんな彼女の声にも、また顔にも俺は覚えがあった。

 灰色の長髪に、双剣を左右に携えた細い体。そう、あの日、アルマで出会ったツンデレ少女セレスである。

 「あんたには借りがあるから、今回はその借りを返すだけよ。借りがなかったら多分、アンタのことなんて助けないんだからねっ!」

セレスは相変わらずのツンデレ気質を見せる。俺は絶対そうじゃなくても助けるだろ、と思いつつ、

「助かる!頼んだぁっ!」

とこちらからもそれを望んだ。

「頼まれなくたってやるわよ!」

と彼女は返して、塀から飛び出す。

 「双剣奥義・技!伍の剣『鹿威し』っ!」

続いて、そう言うとその華奢な体は剣を下に勢いよく降下し、その先が巨鯨の頭を叩く。その反動を使って、彼女はしなやかに一回転、普通にパンツをちらつかせつつも、

「『アイシングタッチ』。」

と言って、水の上に着地した。厳密に言えば、"氷"となった水に着地した。

 そんなところへ奴の次の攻撃は入る。奴は口を大きく開けて、下からセレスへ一直線。だが、彼女はこれを飛び上がってかわし、しかも、剣を手前で交差させる。やがて、真下を向くとまずは、

「『コンプリーティング』っ!」

と剣の回りに魔力の巨大な刃を生成。

 次に、先程と同じ類の奥義を発動した。

漆弐しちにの剣『大火球』っ!」

と彼女が言うと、真下へ高速落下。これは「漆の剣『流星』」に相当する。その加速は弱めず、今度は交差した双剣を左右の外へ。勢いよく奴の巨体が真っ二つに引き裂かれ、やがて別れて血を吹き上げながら水へ沈んでいった。これは「弐の剣『逆十文字』」に相当する。

 既定の剣技と剣技を組み合わせて新たな剣技を生み出す。それが、双剣奥義・技の1つの特徴であった。

 底に足をつけたセレスは上を向いて、

「漆の剣『流星』っ!」

と今さっきの剣技から「弐」を抜いたものを発動して水から飛び出し、脇に道へと戻っていた。俺も魔力で梯子を使って砕きつつも何とか上りきり、道へと入り彼女の元へと行った。

 が、礼を言う前に俺は目を逸らす。なぜなら、セレスの服が透けて下着は丸見え、しかも息切れで変に色っぽい吐息を漏らしていたからである。昨日女子の裸を見たばかりではあるが、目を逸らさずに雅のを見たときみたいにならない自信はどこにもなかった。

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