#161 例の愚槍をまたまた使用した件
「『ストレージ』っ...。」
剣を交えたまま、エミールは言う。すると、リザルドの頭上にゲートが出現し、そこから巨大な斧、迷宮の巨斧が落ちてくる。
「貴様、ベヒモスの斧まで...!」
リザルドは言って両手で剣を振りかぶり、まずグラムを振りほどく。からの後ろへ下がってそれをかわした。外れた巨斧は地に倒れる木にグザッ!と刺さる。
「フハハ...!その斧も命中はしなかったようだな!様を見ろ、この裏切り者が!!!」
その不意打ちをかわしたことでリザルドはすっかり有頂天となって、誇ったようなことを言い始める。唯一頷ける所と言えば、エミールを裏切り者としたことである。そりゃ、あちらからすれば彼は裏切り者だろう。
そんな裏切り者は誇る竜騎士に、ニヤリという嘲笑で返す。
「き、貴様...!何が面白いのだ!!!まさか魔王様の恩を忘れたのではあるまいな!」
これに奴はキレるがまだ嗤う。
「ちっ...少しは話を聞いてやろうと思ったが、裏切り者は最後まで裏切り者なのなっ...!この私手づからが粛清してくれるわ。」
今度はガチギレへと移行してもまだ嗤う。
「龍爪礫剣っっっ!」
その次の瞬間には、既にリザルドが奥義を発動。一直線にエミールの首を狙う。にも関わらず、彼はまだ嗤い、奴が目の前に来た所で、
「心象切結、発動。」
すると、奴の狙いは大きく逸れて勢いよく地面へ。
「ぐぎゃぁぁぁっっっ!」
次の瞬間、そんな断末魔が響き渡り奴は地面に倒れ伏した。首はしばらくすると元に戻ったが、何故自分が狙いを外してしまったかの謎は未だ残るばかり。それを奴の表情から読み取ったか、
「まさが忘れたのか、リザルド?迷宮の巨斧には対象の思考を組み換える心象切結という力があるのだよ。あの時、奴は封印から解かれたばかりで見せてくれなかったがな。」
と言ってやる。これを聞いたリザルドも思い出して、立ち上がる。
そして、再び飛び上がってエミールと激突した。
「はぁっ!」
早速、リザルドは思いっきりエミールを押し飛ばす。彼はその勢いに体を預けつつ、
「『ストレージ』!レイン・オブ・ファイア!」
と必殺の大魔弓を取り出し、焼夷の矢。何とかかわそうとするが、やはり何本かは命中してしまう。エミールはその内に迷宮の巨斧を「ストレージ」に回収。続いて、2つのゲートを開いて俺には竜殺しの愚槍を、自身の手には死の大鎌を取り出す。
「死の大鎌っ!」
エミールは言って、赤い斬撃をいくつか飛ばす。流石にそれはかわされ、さらに、上からの突進。
「ぐっ...!」
彼はこれに吹っ飛ばされて地面に衝突。
「はぁっ!」
が、それでも見えない斬撃で隙を埋める。
その内にエミールは「テレパス」で俺に作戦を伝えてくる。彼が斬撃戦で奴の目を引いている内に俺が竜殺しの愚槍の「ドラゴンスレイド」で心臓を穿てということらしい。俺はコクリと頷いて早速、詠唱を開始した。
打ち合う剣と弾け散る火花、幾度も混淆する緑と紅。その下で俺は詠唱を続ける。
「...なればこそ、この聖槍もとい愚槍も我が物と化す!!!」
と締め括ればゲオルギウスとの同化は完了。続いては、槍を投げる構えで持って、
「聖ジョージが死後、かの槍はやはり聖槍から愚槍となる。されど、竜殺しの性は変わらず。かつ、竜と毒の力も得る。その力は天災竜鎧と称される。この力がありてもなお、我は元よりある投擲にて竜を殺す力の方を望む。槍に纏わせるは竜をも殺す力、槍に狙わせるは竜騎士が心臓、槍に望むはかくの死。」
詠唱は終盤に差し掛かり、槍を魔力で包み、右腕に力を込める。
それを後ろ目で見て、再びニヤリと笑むエミール。
「今ここには竜殺しの性質を持つ武器が2つある。1つはこの魔剣グラム、そして、もう1つは...。」
と言って、奴の目をこちらへ促す。
「ま、まさか...!」
「そうだ...竜殺しの愚槍。愚者ゲオルギウスの元魔具だ。」
「貴様...やはり、今までに消えた幹部の魔具を持っていやがったかっ...!」
「その通りだ。崩壊の後脚と呪殺の息吹は例外だがな。」
リザルドはそんなエミールの言葉を聞くこともなく、
「マ、マズい!」
とただその場を離れようとする。だが、彼がそうはさせない。一気に力を解放して、目に止まらぬ速さで手足、続いて両翼を切り落とす。奴は純粋な龍種ではなかったが、それでも普通のドラゴンナイトよりは近かった。竜殺しの武器にやられれば少なくとも再生能力の質はかなり下がるだろう。
「そうはさせんぞ。」
そう言ってエミールはこれで勝利は決まったと余裕の表情で横に退いた。
そして、俺は翼を失って落ちていくリザルドを睨み付け、腕を後ろにやり、
「貫け!ドラゴンスレイド!」
と槍を思いっきり投げる。槍は光の筋となって空を一直線に進み、奴の心臓貫いた。
「ぐぁぁぁぁぁっっっっっ!」
と辺りに断末魔が響き渡り肉塊は地面へと落ちる。同時に魔剣も落ちて地面に突き刺さる。
しばらくすると、奴は息絶え、灰となって空気に溶けていく。竜殺しの愚槍はエミールの「ストレージ」へ回収された。
こうして、俺たちはたった2人で第十の魔王軍幹部を倒すことに成功した。




