#15 見ず知らずのメス蛙に魅入られた件
ピョーン、ピョーン!と俺は跳ねながら、前へ進む。
「おっ!空中に虫!」
俺は跳び上がり、さらに舌を伸ばしてその虫を食らった。とても美味しかった。だって、蛙の味覚だもん。蛙は虫を好んで食べるんだもん。
「こ、これは、う、運命よ!」
そんな俺を誰かが見ていた。いや、蛙だったから"誰か"と言う表現をするかは分からないが、俺に危機が迫っていた。見ず知らずのメス蛙に魅入られると言う、最大で最悪な危機が。
「ん?」
見ると、1匹の蛙が俺に突っ込んできた。
「『セクリーション』っ!」
俺はそう唱えて、そいつを滑らせる。
「いっつー...。で、でも、すっごくクールだわー!」
そいつは目を輝かせてこっちにやって来る。蛙って確か、鳴いて雌雄を確認しあうんだよな。でも、「バークド」と唱えたら仲間が来るので、俺は普通にゲロゲロ!と鳴いた。返事は返ってこない。ていうことは...。
メス蛙かこいつ!?俺は、
「あ、あの悠人君に何かご用があるのですか?」
彼女(?)に聞いた。
「あ、あの私と付き合ってはもらえないでしょうか?」
う~ん?なんやろな~?この状況ってなんやろな~?俺は沈黙に入った。
「...。」
「どうしたの?急に黙っちゃって...。」
それでも、俺は沈黙をやめない。
「...。」
「『はい』とか『いいえ』とか言ってください!返事なしが一番困るんです!」
やっぱり、沈黙をやめない。いや、やめたくない。
「...。」
そして、その静けさを破るように、力強く俺は唱えた。
「『バークド』っっっ!」
と。その瞬間、鳴き声の音波は波紋のように辺りへ広がる。すると、あちこちから、ゲロゲロ!ゲロゲロ!ゲロゲロ!と言う鳴き声が聞こえてきた。
と、次の瞬間には俺の両横に頼もしいオス蛙が並んでいた。圧倒的なやる気と超絶した緊迫感。それらによら威圧で俺、いや、俺たちはそのメス蛙を追っ払った。
「ありがとう。」
俺は彼らにお礼を言う。
「あたぼうよ!」
とある蛙はそう言った。
「同じアカガエルだからな!」
とある蛙はそう言った。俺は、彼らにもう一度、お礼を言って、別れを告げた。
それからも、俺はそのメス蛙に付きまとわれた。ストーカーってこう言うことなのか?いや、でもそれは男のジョブのはずだぞ?俺はしたことないけど、女かすることでは無いってのは分かる。まぁ、ストーカーの定義に性別などは関係無いけど。おかげ様で俺は毎日、魔力切れ状態だった。ある時は、「バークド」で仲間を呼んで威圧する方法で。ある時は、跳躍しながら逃げる方法で。そして、ある時は、「ハイバーネーション」を使って完全無視すると言う方法で。
それでも、俺はそのメス蛙に付きまとわれ続けた。
「か、完全に魅入られた!」
俺はそう確信した瞬間、背筋が凍るようだった。それは、ゴキブリだったあの時、触角がアシダカ先輩に当たったあの感覚よりも酷い物だった。
「不幸だ...。」
俺は今までに無い程、落ち込んだ。こんなメス蛙に、いや、あんなもん、メスガキだ!メスガキ!メスガキ変態ストーカー野郎だ!アイ・ラブ第3位の痴女を超える勢いだわ、これ!
あぁ、上○さん!同じ不幸な人間として!このくだらない幻想を!この身の毛もよだつ幻想を!どうか!どうか!その右手で...!それか、どっかの最強さん!グロいの我慢するから、血を逆流させてこいつを破裂させてくれぇぇぇぇぇ!俺は心の底からそう願った。




