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102/202

#102 2本の魔剣の伝承が興味深過ぎた件

 ギィィィッッッン!エミールの魔剣と熊谷さんの魔剣が激突し、濁った音が辺りに響く。

 「っ...!」

「エミール、今すぐ彼らに刃を向けるのを止めるのじゃ。」

「笑わせるな、爺さん。俺は魔王軍幹部の一角なのだぞ?脅威を殺すのは不思議なことではなかろう?」

彼らはそんなやり取りをしながら、ギンッ、ギンッ、ギィィィッッッン!と幾度も魔剣を交える。


 その間、エミールがあちらに気を取られているからか黒の針の締め付けは弱くなる。

「ふぬっ...、ぬっ。はぁっ!はぁっ!はぁぁぁっっっ!」

その機に雅は体を捻り、反り、揺らしして拘束をほどき、次に俺たちの黒い針を魔剣で切る、切る、切る。


 「はぁっ!ほぅっ!」

「らぁっ!やぁっ!」

ギュインッ、ギュインッ、ギュイィィィン!と、向こうでは剣を交えては退き、交えては退きの激闘がまだ続く。アリシアはまだ眠っているし、俺たちにはどちらがエミールでどちらが熊谷さんかを目で追えないしでただ見ていることしかできなかった。

「す、凄まじい速さ...ですわ。わたくしにもお2人の剣筋が上手く見えませんの。」

雅でさえこれである。

 だが、年の差というのが段々と顕著になり始めた。

「うっ...くっ...ほっ!」

「どうした、爺さん!先程までの威勢はどうしたっ!?守ってばかりではいずれ死ぬぞ!」

ガギンッ、ギュギン、ギュインッ!さっきまではエミールと見分けの付かなかった熊谷さんの顔は既にはっきり見え、常の防御の構えをしているのも何とか分かる。

「やはり、若さというのには負けるものだのう?」

「当たり前のことだ。言うまでもないり」

 ギンッ、ギンッ、ギンッ!熊谷さんはまだエミールの斬撃を防ぎ続ける。亀の甲より年の功とはよく言うが、熊谷さんは年の功が少々重ね過ぎたようである。剣技で勝れど持久はより劣る。

 ギュギィィィィィッッッッッン!そして、エミールの次の一振りでレーヴァテインが熊谷さんの手元が離れ、勢い余って自らは仰向けで地面に倒れる。

「終わりだ、爺さんっ!」

ブゥゥゥゥゥッッッッッンッ!瞬間、エミールは容赦なく魔剣を振りかぶり、熊谷さんの首を狙う。だがしかし。

 ピタ...。剣が首を浅く傷付けた所でエミールの手が止まった。

「っ!?」

何事がと思ってみてみると、レーヴァテインが地面に突き刺さっておりパァァァッッッ!と光を発していた。よく見ると熊谷さんが直接刃を握り、血を滴らせているのがわかる。


 「この...光、は...!!!」

エミールが言うと、

「そうじゃ、神子の光。お主のそのグラムは邪神の闇に染まるのじゃろう?このレーヴァテインはその反対じゃ。」

と熊谷さんは答える。つまり、これがレーヴァテインとグラムが「対極」である所以。では、「同質」とは何か?それはすぐにわかった。

 「どうやら、魔剣には『罪』の呪いが施されているようじゃ。普通ならそれは1本の魔剣に1つか2つ。じゃが、この2本はほんの手違いで全ての『罪』の呪いを被ってしまった。」

おそらくそれが「同質」と言われる所以。これでエミールと決闘したあの日、ルナが言ったことをやっと理解した。そして、話は続く。

 「そこでこの2本の魔剣はどういうわけかそれぞれ異なる性質を見せるようになるのじゃ。レーヴァテインは呪いをより大きな神聖に内包し、グラムはその呪いを増幅した。それはもう覆せん。」

なるほど、それでその2本は「同質」と「対極」を持ち合わせているわけだ。アッ、この設定、深いっ!ッッボボボボボボボボッ!ボゥホゥ!なんて、メタい冗談はよしとしてこの話には俺もかなり興味をそそられた。

「まさか魔剣にそんな伝承まであったなんて...。」

故に、思わずそんな声が漏れる。


 「じゃがのぅ、エミール。お主がその呪いに支配される必要など何処にも無い。『罪』を受け入れ己の神聖に内包するのじゃ。」

ピカァァァッッッ!それはまるで神子からの教えであるかのようで、まるで「罪」を受け入れる寛容さを示しているかのよう。どうやら、神性があるらしいレーヴァテインはより強く輝き辺りを包み込んだ。

 「そう、だ...。俺は魔王を...魔王を倒すためにこの世界へ...。ぐっ...!?」

説かれたエミールは何かを思い出したように呟き、まだ動こうとしる手の首を強く握り無理矢理、グラムを離した。その瞬間、グラムを染めていた漆黒は消え元の状態に還る。

 それから、彼はその手を熊谷さんに差し伸べ、

「爺さん、俺が...間違っていた。爺さんの言った通り、そのグラムの呪いとやらに操られていたようだ。」

と言う。対する熊谷さんは血だらけの右手で剣を鞘に納め、

「そうじゃな。」

と左手でその手を掴み起き上がった。

 こうして、エミールは改心し俺たちの魔王退治に協力してくれることとなる。東の空には真っ赤な太陽が顔を出している。日の出である。


 ガクッ!そんな感動的描写もとあるアクシデントの前には風の前の塵と同じ。

「もう...動けん...。」

そう残して脱力する熊谷さんに、俺とエミールは笑いをこらえる他仕方がなかった。多分、他の2人も同じことだろう。

 本当にこの人はいつでもブレない。アリシアのように。

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