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100/202

#100 2人目の裏切り者が現れた件

 「グゴォ...。」

倒れるアリシアに1体のタイタンが手を伸ばす。

「うっ...。」

彼女は目視するも、体は動かない。しかも、段々と視界がぼやけてきて、意識だって朦朧とし始めている。

「(天才である私も流石にここでお仕舞いね。せめて最後に皆へお別れを言いたかったわ。)」

なんて、らしくない悲観に陥っていると...。

 「エリザ!俺が行く!」

1人の男が飛び上がった。エリザと呼ばれた女は

「えぇ、任せたわ。」

とかれを見送る。

 スススススゥゥゥッッッ!男は秒間十回近くと言う周期で腹式呼吸を行う。普通なら心肺がかなり苦しくなるはずだが、彼の鍛え上げられた心臓と肺胞にそんな概念は毛ほどしかない。これこそ絶対腹式呼吸と呼ばれる呼吸法。短期間で体内に大量の酸素を取り入れ筋組織を活性化、故に人並み外れた身体能力を付与する。

 「双剣奥義・体。捌ノ剣『大海嘯だいかいしょう』っ!」

「双剣奥義・体」とは先の絶対腹式呼吸を利かせて繰り出されるトリッキーな双剣奥義の名、「捌ノ剣『大海嘯』」とは無数に斬撃を連ねられる技である。

「はぁっ!」

まずはアリシアを狙う右手を落とし、

「おらぁぁぁッッっ!」

降り立ち次は両足を落とし、

「はっ!」

と大きく後方回転。そのまま逆さになって、首をちょんぱ。

 その内にエリザがアリシアを救う。

「魔力を完全に使い果たしちゃってるわね...。」

なんて呟きながら肩に背負い、男とセレスを探す。既に察しているかもしれぬが、この娘はエリザベス、傍の男はエーベル。彼女の兄姉である。


 そして、俺たちは彼らが走ってくる様子をセレスと共に見るのである。

 「すみませーん!その子はうちのメンバーでーす!」

と俺が叫ぶと、女性の方が気付き男性も共にこちらに降りてくる。

「姉さん、兄さん。どうしてここに?」

セレスが聞くと、姉さんと言われた女の人は

「あっちの巨人片付け終わったからあなたを探しにきただけよ。」

と返す。

 それから、唐突にセレス主催に自己紹介が始まる。

「この人が私のお姉さん、エリザベス・フォン・アーバスノットよ。」

「以後見知りおきを。皆からはエリザと呼ばれています。」

と女性、改めエリザベスさん。

「そしてこっちがお兄さんのエーベル・フォン・アーバスノット。」

「君たちがセレスを助けてくれたのか。ありがたい。」

と男性、改めエーベルさん。加えて、お察しも良い。

 「俺は新嶋悠人と言います。そちらのメンバーはアリシア・ローズ・グリモワールです。」

「ルーナ・リンネル・エイプリルでぇす。」

「ルチア・オアシス・マリアンヌです。」

「雅百合華と申しますの。以後お見知り置きを。」

受けて、俺たちも名乗る。アリシアの名前を言ったとき驚かれていらしたが、無理はない。

 それから、俺たちはクエストも兼ねてと町中のタイタンたちを次々と潰していくことにする。とは言え、6、7割はセレス、エリザさん、エーベルさんが双剣奥義の「シン」だとか「ギ」だとか「タイ」だとかで倒してしまってその手柄の一部を分けていただく形となるのだが。

 

 それが終われば既に夜は更け始めている。

 「さようならー!」

と別れを告げるとその際、

「その子、魔力を完全に使い果たしてしまったようよ。魔力が少しでも残っていればすぐ元に戻るんだけど、使い果たしてしまったら回復に1日はかかるはず。帰るなら次の日にするといいわ。」

との助言。俺は

「ありがとうございます。」

と今度こそ彼女らとは別れる。


 こうして、俺たちは近くで野宿をすることとなる。

 「雅、確かミドルウルフの肉って残ってたよな?」

テントを張りながら俺が雅に聞く。すると、

「えぇ、たくさんはありませんが1人3切れ程は。」

との返し。俺はテントを張り終え、

「そうか...。なら...『マジッククリエイション』、ボード・アンド・キッチンナイフ!」

とまな板、包丁を生成。それを見て、ルナが

「アリシアだぁ。」

と言うので、

「やめなさい。」

と笑顔で言ってから残っていた肉の塊2つをそれぞれ6等分にした。アリシアに関してはどうしょうもないので、ルチア自前の非常食であるブロック(低カロリー)をジェル状にして飲ませた。

 「やっぱ、美味い。」

食べれば口に広がる記憶に新しい旨味と脂身。

「ハム、ハム、ハム、ハム、ハムッ!」

「ハム...んん~~~!」

「ハム...ンム、ンム...。」

相変わらず、ルナはガツガツ食べるし、ルチアは幸せそうに食べるし、雅はお上品に食べるしそれぞれに個性があり、いとをかしとまで思える程であった。

 が、その風情は束の間に豹変する。

 「エレメント・オブ・ライトニング!」

少し遠くで覚えのある声と詠唱が聞こえた。

「来るぞっ!」

俺が肉を放って皆に伝えた頃にはもう遅い。雷を帯びた矢、と言うかこれまた覚えのある槍が目の前まで来ている。

「くそっ!」

俺は脇へ飛び込むとともに、咄嗟の判断でアリシアに抱きついて共に転がる。もちろん、これは仲間を守るための不可抗力であって下心があってとことじゃない、と言えば尚更怪しまれるだろうか。

 ドガァァァッッッ!後ろでは凄まじい音。俺はアリシアは離し、振り替えってみるとそこには真っ黒なサークル。薪や肉はもはや灰。しかもその中央にはアスカロンが刺さっていた。

「えつ...。」

俺が困惑していると、

「っ...!?」

雅が何か気付いたようで飛び出す。

 ギゴォォォッッッン!その刹那、金属と金属が衝突する重い音。見ると、雅がミノタウロスが持っていた奴みたいな巨大な斧と剣を交えている。

「くっ...。あなたは...!」

「フン...。はっ!!!」

「きゃぁぁぁっっっ!うぅっ...!?」

だが、流石の雅も圧倒的質量の物体を剣で押さえ抜くことは出来ない。斧の使い手が力を込めれば雅は吹っ飛ばされ、後方の木に叩きつけられる。

「雅っ!」

と叫んで余所見をしたその瞬間。

 奇襲者は飛び上がり、上から剣を一振り。

「『ディスポーズ』っ!」

そこをルナが防御に入る。普段なら何を受けても傷が付かないか、もしくは浅く済むのだが、

「痛ぁいっ!」

という声と共に、血がこっちに飛び散った。見ると、彼女の掌から血がドクドクと流れている。

 「ルナっ!くっ、ルチア回復を頼む!」

「わかりました。少し時間がかかるので、それまでは守ってくださいね。」

俺が言うと、ルチアは言いつつ回復を即開始する。

「あぁ、任しとけ。」

言われて俺は鞘から剣を抜き、今降り立った奇襲者の方を見てみると...。

 「エ、エミールっ!?」

そこには血の滴る魔剣グラムを携えたエミールその人がいた。これは言い逃れ出来ない裏切りだ。そもそも、リヴィエラに行った時のあの伏線がバレバレ過ぎたのだ。この様子たとミノタウロスの封印を解いたのもこの男だろう。今なら俺はそう断言できる。

 て言うか、裏切り者が2人も潜んでたってのはますます某巨人系漫画に近付いてるんですが?あれは3人いたもんね!

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