三話 入学式当日2
家をでて暫くしてからちょっと思ったことがある。
兄様に関われない=兄様ルートの進行度が詳しく分からない=死。
わぁこわぁい。
わぁこわぁいじゃないんだよなぁ!!?命が懸かってんだけどなぁ!?
おかしいでしょ。
ありえないしワロエナイ。
じゃあどうしろと?
主人公に関わる一択で。
いやいや、主人公に関わったら殺されるんだって。この選択肢は無しだ!
・・・嫌だなぁ。
皆さん絶対知らないから言っておきますけどね?
主人公、超純粋で超鈍感なんですよ。
そしてタラシ。天然タラシ。
色々な攻略対象者という名のイケメンから狙われちゃう超モテモテな方なのですよ。
あ、でもね?
そこはやっぱりアンチ王道転校生みたいなもんだからさーあ?
攻略対象者にしか好かれません。
あとちょっと宇宙人。
悪い人ではないんだけど超ウザイ☆
いや、ホント、勘弁して。
僕ってばどうすれば良いのさ。
怖いなぁ。恐いなぁ!
そういえばこれ、王道だけど、無理やり王道にした感じなんだよなぁ・・・。
主人公車に轢かれて遅れて入学してくんの。
車に轢かれるとかどんな設定だよ。
頭の中で葛藤・・・というか、現実逃避と言わんばかりの奇声をあげている間に、いつの間にか校門前にいました。
どうしよう。
うん、どうしよう。
あ、一応言っとくけど、前回と全然テンションが違うのは単なる現実逃避だから、気にしないで。
現実逃避するな?
仕方ないじゃん。
僕は今色々な現実からスグに逃げたしたいんだッ!
「おぉーい!そこの!お前一年かー!?」
校舎の前に立っている青年が声をあげる。
ん?僕の他に誰かいるのかなぁ。
しかし見渡しても誰もいない。
「お前だから!キョロキョロしてないで早くこっちこい!」
なんだ僕か。
少しだけ早歩きで青年の元にいくと、目を見開かれた。
「お前・・・何かオタッキーだな。いや、ガリ勉って言うべきか?」
ちょっ!心外だなぁ・・・。言わないけど。
「心外って顔すんなよ。悪かったな。」
謝られてもねぇ・・・。
一応わざとそう見えるように変化してるからねぇ。
「いえ、すみません。どうかお気になさらず。」
だってさぁ。
アルビノってそりゃあもう目立つ訳ですよ。
乙ゲーだから色々な髪色の人はそりゃあいるけど。
やっぱアルビノは目立つんだよ。
因みに因みに、僕が今どんな格好をしているかというと!
肩口までのびきって前髪もまぁまぁ長い黒髪と、黒渕眼鏡をかけてる少々オタッキーな見た目をしております。
いや、オタッキーというよりかは根暗かな?
黒渕っちゃあ黒渕だけど丸っぽいのじゃなくて日常生活で良く見るようなやつだし。
でも、肌白いし若干細すぎるしで明らかに病弱君です。
まあ、本当に病弱は病弱だから何とも言えないんだけど。
あ、そうそう。
力使うの面倒だから変化はしてないよ。
する意味もないし。
白髪は黒髪のウィッグで、赤目は黒のカラコンで隠してる
(`・ω・)dグッ
前回言い忘れてたけど、聖泉学園は私服と制服兼用だから、何かしらの行事でない限り、私服で当校する予定。
まあ、見た目に会わせてというか、結構ダボついた感じの服なんだけど。
ていうか、生徒会役員だよこの人。
名前は確か剣崎充だったかな。
生徒会では・・・会計だったかな?多分。
「他の方々はまだいらっしゃらないんですか?」
「あぁ、一年は知らねぇけど他はもう少ししたら来ると思うぞ。」
うーん、どんな人達なんだろうなぁ。
多分だけど、前世の僕が見たら卒倒する人達だと思うんだよね。
あとはあれだ。
妄想対象。
前世の僕は腐女子だったからねぇ。
三次元の人で妄想することはなかったけど、アニメキャラとかでは妄想しまくりだったからねぇ。
ていうか僕も妄想対象だったからさ。
あー、そうそう。
僕も一応腐男子だからね。
妄想だってそりゃあ、しちゃうよね。
「おぉーい!そこの二人!来栖光弥って奴見なかったかー!?」
校舎の方からスーツを着た教師らしき人が駆けてきた。
あー、えっとー、生徒会顧問だったかなぁ。
まあ、攻略対象者じゃないから別にいっか。
いやよくないけど、まあ、今は保留で。
あー、でもなぁ。
ゲームの二期が出るみたいな話もあったからなぁ。
二期ではもしかしたらってこともあるしなぁ。
「あ、えっと、来栖光弥は僕です。」
「お前か。ちょっと職員室まで来てもらえるか?お前の父親だって言う奴から電話が来てるんだ。」
父親・・・?
ってことはお父様か?
「えっと・・・分かりました。」
「おう。剣崎、コイツちょっと借りるな。他の奴には適当に言っといてくれ。」
「了解しました。」
そう言うと顧問が歩きだしたので後ろをついていく。
にしても、学校に電話をかけるとはどういうことだ?
まあ、つけば分かるかな。
今分からないことを気にしても仕様がないし。
あー、でも面倒だなぁーー、お父様かぁー。
「失礼します。来栖光弥つれてきました。」
「あぁ、藤堂先生ありがとうございます。・・・君が光弥くんだね?」
「えっと、はい。そうです。」
うわー、めっちゃ先生達に見られてるー。
視線が痛いです。
身体に穴が空きそうです。
「・・・はい。はい。えぇ、来栖くん到着しました。はい。・・・ではかわりますね。来栖くん、どうぞ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
お父様と電話をしていただろう先生から受話器を手渡される。
はぁ・・・面倒臭い。
「・・・もしもし。お父様でしょうか。」
『あぁ。久しぶりだな。葵。いや、今は光弥だったか?』
「・・・・・本当に、お父様なのですね。」
昔から変わらない低く掠れた声。
昔は暖かいと感じた筈の、嘲笑するようなとても冷めた声。
『鴛原のやつに捨てられたそうじゃないか。』
「・・・。何の、用ですか。」
『はっ。思い出したくないって訳か。まあいい、用はお前の名字と名前の事だよ。』
「名字と名前、ですか?」
今さら名字と名前の事を話してどうするつもりだ?
まさか、これって僕の名字と名前が潮海朝緋に変わる時の話か?
『お前が来栖という名字を使っているだけで吐き気がするんだよ。お前の名字はアイツの旧姓の潮海にさせてもらう。名前は鴛原の奴も嫌がるだろうからな。アイツが考えていた朝緋だ。』
「そうですか。にしても、アイツとは・・・?まさか、お母様の事を言っているのですか?」
『当たり前だろう。』
コイツ、お母様の事をアイツって言いやがった。
ふざけるな。
お母様を愛していた筈じゃないか。
それなのにアイツだと?
「ふざけないでください。お母様の事をアイツ呼ばわりしないでいただきたい。」
怒りで声が震える。
受話器の向こうにいる人物は本当に父親なのか?
声が似ているだけの、赤の他人じゃないのか?
ふざけるな、ふざけるな。
『何をキレているんだ?あんな能力者、アイツで充分だろう。』
「!!・・・気づいて、いらしたのですか?」
『ほう・・・お前は知っていたのか。私が知ったのはつい最近だよ。まあ、そんなことはどうでもいい。私は私の家系に能力者の子供がいるのが嫌なんだ。』
あぁ、だから僕は潮海朝緋になるのか。
なるほどな。
自分の名字と名前の謎がやっと解けたよ。
そういう・・・ことなのか。
結局捨てられたってことだ。
「貴方の家系なんてこちらから願い下げです。」
『なら好都合だ。役所の変更は済ませてある。学園での変更はお前が変更の申請をしろ。』
「分かりました。最後に一つ、頼みがあります。」
『・・・何だ。』
「兄様に迷惑をかけないでください。」
『はっ、なんだそんなことで良いのか?どこまでも家族思いな奴だ。・・・いいだろう。お前の兄様とやらに危害は加えない。』
「ありがとうございます。では。」
・・・ははっ、マジかー・・・。結局、こうなんのかい。名前まで変えられると思わなかったけど、金に物言わせて変えさせたんだろうなぁ。まあ、どうせ捨てられたんだし、丁度良かったのかもなぁ。
いっそ思いきってイメチェンしてみるのも良いかもしれない。
一人称を俺とかにして。
・・・やめよう!無理!確実にボロが出る!
「来栖、大丈夫か?」
藤堂と呼ばれた生徒会顧問の先生が心配そうに声をかけてくれる。
この人はいい人そうだ。
「大丈夫です。あと、僕はもう来栖光弥じゃありません。」
「?」
「母さんが僕に新しい名前をくれました。潮海朝緋。僕の名前は、潮海朝緋です。」
「・・・そうか。名前の変更はこっちでやっておく。リハーサルの前に時間をとらせて悪かったな。リハーサルはアリーナでやってるから、行ってこい。」
「はい。ありがとうございます。」
先生に礼を言って職員室から廊下に出た。
先生が上手く察してくれるいい人で良かったな・・・名前覚えてないけど←
にしても、兄様の時と比べてショックは全然なかった。
きっと、僕にとって兄様のほうが大事だからなんだろうな。
にしても名前変わり過ぎだ。
一日だよね?
一日でこんなに名前変わる物なの?
いや、うん。
ありえない。
まず名前が変わることじたい中々ない。
いや、寧ろそんな良くあっても困るけど。
僕の存在価値だとか、存在理由ってなんなんだろうな。
誰も僕を必要としてないじゃないか。
何なんだよ。
こんな世界に転生して新しい人生を歩んでも結局だめじゃないか。
「って、こんなこと考えても仕方ないか。はぁ・・・さっさとアリーナに行こう。」
もう、考えるのも面倒だ。