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プロローグ

まずは経緯をお伝えしましょうか。

最近よくある乙女ゲーム転生ってやつみたいです。

ゲームの名前は『僕が愛する君へ。』です。BLゲームです。

手紙ですかっ!?僕が愛する君へって手紙ですか!?ラブレターですかっ!?

いえ、まあ、作者様のネーミングセンス的にこうなってしまったんでしょうけど。

転生に気づいたのは一歳の時でした。

早すぎませんか?もーちょっと平凡ライフをおくらせてくださいよ。

記憶を一歳で取り戻したこともあって、前世の様々な知識が役にたち、私は周りから天才として育てられて、今や高校一年生になろうとしています。

本当は、天才なのではなく秀才なのですけどね。

まあ、とおっても出来の良い子として育ったので、天才と呼ばれるのは仕方ないのかとも思いますが、おかげで色んな人から恨まれるのですよ。

お義母様やお義兄様、ついには血縁であるお父様にでさえ、恨まれました。

お義母様もお義兄様も、お母様が亡くなってしまった後にお父様が連れていらっしゃったのですが、どうにも私のことは気に入らなかったようで、よく嫌がらせをしてきました。

しかし、何でもないようにケロッとしている私を見て、きっと不満に思ったのでしょう。

お義母様は、私の目の前でわざと階段から落ちて、それを見ていたはずなのに、お義兄様は私に罪を被せるために、お父様に助けを呼びました。

お父様は、お義母様をひどく愛しておられるようでした。

すぐに私の犯行だと、勘違いしました。

お義母様が、嘘をついているとも知らずに。

お父様方は、すぐに私を売りました。

真っ暗な車の中で、私は男装をさせられて、売られました。

それは、車を運転してくださっている召し使いの方からの、配慮によるものでした。

男性として招き入れてもらった方が、少しは融通がきくだろうとのことでした。

召し使いの方が、心配をしてくださっていることは、本当に嬉しく思いました。

しかし、売られたことのショックとトラウマで、暗闇でパニックを起こすようになりました。


売られた先は、兄様と、兄様の家族のところでした。

兄様と私は同い年でしたが、兄様は4月産まれ、私は3月生まれなので、可愛い弟だと言って暖かく迎え入れてくださいました。

光弥(みつや)という名を下さいました。

家が変わったことで、通う学校も変わりました。

私は兄様と、私立の、小中一貫校の小学部に通うことになりました。

兄様の父様は、お父様よりも経済力のある、裕福な方で、多額のお金がかかることも気にせずに、通わせてくださいました。

・・・学校が変わっても、私は天才と唱われました。

兄様も、その事を嬉しく思ってくださいました。

ですがやはり、恨みの眼差しで見られました。

いじめも、起こりました。

ですが、不思議と辛くはありませんでした。

いくら天才であろうと秀才であろうと、兄様方に不釣り合いなのは分かっていたからだと思います。

兄様は、私よりも完璧でした。

何でもできて、誰にでも愛想のいい、誇りに思える兄でした。

私がどんなに恨まれていようとも、兄様の家族は私の味方でいてくださいました。

その事が嬉しくて、私は、この人達には絶対に心配をかけてはいけないと、いじめのことも、恨みの眼差しで見られていることも、全て隠して、笑顔でいました。

本当に、幸せな時間が流れていきました。

しかし、兄様と私が中等部2年生になった頃、唯一の味方である兄様の家族は、兄様と私を残して亡くなってしまいました。

私は、恩はあったものの、あまり思い出がなかったので、大した反応を示すことが出来なかったのですが、兄様は酷く悲しんでおられました。

数日間は、目も当てられない程でした。

そのときの兄様が私は嫌で、悲しませまいと、兄様を励まそうと、沢山努力して兄様を笑顔にしようとしました。

しかし、それがいけなかったのでしょう。

兄様は急に、

「もうやめてくれ!!何故そんなに前向きになれるんだ!?何故そんな必死に努力ができるんだ!?」

と、私に怒鳴りました。

私の前向きで、必死な成長ぶりに兄様は劣等感に苛まれ、私を恨むようになりました。

兄様は、私がどんなに努力しても、私に笑いかけてはくださいませんでした・・・。

再び家族に恨まれた私はもう、誰かの為に笑顔でいることをやめました。


・・・こほん。でですね?話しは変わりますが、私、『僕が愛する君へ。』プレイしてたんですよ。

そりゃあもう気づいた時驚きましたとも。えぇ。

一歳の頃に気づいた時は、あー、そういえば、やってたなぁ程度のことだったのですが、私は馬鹿でした。

兄様に会ったとき、思い出しました。

兄様の名前が、攻略対象者の名前であり、私の名が、悪役の名であることを・・・。

何故、私の名を、今まで気にしなかったのだと、後になって思いました。

きっと原因は、私の家族にあるんだと思います。

日々の生活に忙しく、兄様に会うまでここが乙女ゲームの世界だということを、すっかり忘れてしまっていました。

兄様の設定にはこう書いてありました。


鴛原誠哉(おしはらせいや)

弟、朝緋意外の家族を亡くし、心に傷を負った好青年だが、弟の完璧ぶりに、嫉妬心を抱いている。

女性が苦手。


そして私はこう。


潮海朝緋(しおみあさひ)

来栖家を追い出され鴛原家に拾われたが、新しく出来た家族が死のうともどうでもいいと思っている冷徹な少年。


何か、大雑把ですよね。

先入観を無くすためにこうしているようなのらしいですが、にしても大雑把。

適当に設定したのではないかと疑いたくなります。

まあ、設定が大雑把だとか、そんな事は良いんです。

私の設定だけが、食い違っているのです。

鴛原家に引き取られた別の人物、という可能性はありましたが、今の今までそんな人は来なかったのでおそらく私のことでしょう。

さて、戻りますが、まず名字と名前が何故か違います。

あと、私は、別に兄様の家族が亡くなってしまった時、悲しくなかった訳ではありませんから、冷徹なんかじゃありません。

兄様からみたら、そう見えたかもしれませんが・・・。

あと、私は少年や、弟になっていますね。

理由は男装ではないのですけれど、そのことは次回分かると思いますので保留で。

あ、兄様の女性恐怖症については調べてあります。

女性に言い寄られている時に僅かに引き気味なのです。

・・・そう、考えてみると、案外間違った設定ではないのでしょうか?

私は、着々と悪役の道を歩んでいるのでしょうか?

まあ、そんな事は別にどうでもいいのです。

問題は、兄様のルートの最後にあるのです。

兄様のルートで私は・・・

────どう転んでも確実に死んでしまうのです────

ハッピーエンドでは主人公が私を殺し、バッドエンドでは兄様が私を殺して自殺し、兄様ルートを中途半端に進めた状態でいくと、階段で突き飛ばされて死亡してしまう。

皆で仲良く終わるエンドでは、悪役全員が自殺してしまう。

ならば自殺しなければいいのですが、なにしろ、皆で仲良く終わるエンドがこのゲームで一番難しいのです。

全員の好感度を、主人公が30%ぴったりでとめておかなくてはいけないのです。

そんな芸当、現実で出来る人なんているわけないですから、そのエンドは諦めるしかありません。

幸い、私はあらゆる武術に優れていますから、そう簡単に死ぬことはないと思っているのですが・・・。

私の咄嗟の判断力で、対処できるかどうか・・・。

駄目です。全くいい案が見つかりません。

もう、ふて寝します。

まだお昼ですが、仕方ないのです。

ゲームの舞台である学園に入学するのは明日だと言うのに、全くいい案が浮かばないから仕方ないのです。

夕食頃にはちゃんと起きられるでしょうから、気にしないのです。


私は自室のベッドに寝転がり、布団にくるまって静かに瞼を閉じた。

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