シリアスさん死亡のお知らせ
第一話:そして世界は。
「これが核爆弾の起爆スイッチの入ったカバンになります。」
ロズワード将軍は緊張しながらも丁重に説明をした。
無理もない。彼の目の前にいるのは大統領だがらだ。
当選して間もない、新任の大統領。
この国の誰もが敬意を抱く存在、
そしてこの国のトップ。
無論、軍に対しても最高意思決定者であり、彼の上司である。
「このカバンは、大統領以外に開かないようにするため、
静脈認証を設定する必要があります。
ここに手をかざしてください。」
「うむ。」
大統領は言われたとおりに認証装置に手をかざす。
ピッという音共に青いランプが点燈する。
クリア。
認証完了。
「これで、認証完了となります。
試しに手をかざしてカバンが開くか確認してください。」
「こうかね?」
カバンの読取装置に手をかざす大統領。
ロックが外れ、カバンが開く。起爆スイッチがそこから顔を出す。
「ところで、ロズワード君。」
「何でしょうか、大統領。」
「モノは試しと言う言葉がある。
やらなかった後悔よりも、やってしまった後悔を選ぶ男なのだよ、私は。
ポチッとな。」
「だ、大統領ォォォッ!?」
...一発の核ミサイルから始まり、世界は戦火に包まれた。
その発端は、今となっては分からない。
高度な政治的判断か、ぬきさしならぬ国際情勢があったと言われている。
ともかく、戦火は瞬く間に広がり、すべての国を巻き込み、滅ぼし、
高度に築き上げられた文明は音を立てて崩壊した。
それから、長い年月が過ぎた。
残ったのは荒れ果てた街と、放射能で汚染された大地。
そして放射能により変異した生き物達。
国と言う概念はすでになく、人々は寄り添って過ごす街単位で独自に自治を行っていた。
街が異なれば、ルールも異なる。
そして、街を出れば荒野という無法地帯が広がっていた。