8月20日19時
「あつい~、茹だる…。」
「松んちエアコンの効き悪すぎ…。」
風もない暑い夏。夕方といえど、コンクリートで造られたアパートは昼間に溜め込んだ太陽熱を夜にこれでもかというように発散始める。
自宅のエアコンか壊れたと言って松のアパートに転がり込んだのは小中と同じクラスで親友とも呼べるような友人である棚田直実だ。
「無いよりましでしょう?てか、ナオがいるから余計に効きが悪いんじゃん~。」
「私のエアコン死亡中。
おなかすいたー、夕飯何?」
「なんも考えてない。熱いから火使いたくない。」
「パパっと出来るもの冷蔵庫に無いの?」
「冷奴しかない。」
「冷奴嫌い、辛いものがいい。」
「わがまま。」
よっこらしょ、とおばさんじみた声と同時にひょい、と起き上がり、冷蔵庫の確認に行った。
「あー、いいものあるある。」
豆腐を一丁深めの皿にそのまま落す。その上にキムチと汁をかけて、さらに市販のステーキソースを大さじ一杯入れ、レンジで二分加熱する。
すると、
「ナオ~、即席麻婆豆腐出来たよー。」
「やったねーーー!
……。これ、どうやって食べるの?」
「スプーンで豆腐の原形がとどまるようにキムチと混ぜて食べればいいよ」
「ふーん。
あ、旨い。」
「でしょ~。ポイントはステーキソースに山椒が入ってるタイプ使うことなんだよね。
そうすると大概麻婆豆腐と同じような内容になるからさ。
あと、豆腐も絹とか使って、3パック入ってるやつあるでしょ。一丁150g位がちょうどいいと思う。」
「ふーん、レンジだけだし、洗い物無くて楽だね。」
「まーね。」
「デザートは?」
「そんなもの家にない。
スーパーで何か買ってきたら?」
「コンビニじゃなくてスーパーって言う辺りあんたらしいよね。」
「スーパー安いもん。」
「女子力て言うよりオカン力だよね。」