8月18日午前9時
「ぬぎゃーーーーー!!!」
休日朝一番の悲鳴でアパートの住民の何人かが目を覚ました。とは言ったものの、時刻は既に9時。夜勤明けの人間ではなく、寝坊組が目を覚ました為、今回は苦情が何処にも行かなかった。
悲鳴を上げた張本人である松は冷蔵庫の前に踞ってショックに震えている。
「ぶ、ブルーベリーが潰れてる!!」
まるでこの世の終わりのようは慄き様に大げさだとこの場に友人が居たら突っこんだだろうが、突っ込み要員はこの場に居ない。
というものの、潰れてしまったものは仕方がない。作ろうと思っていたデザートを急遽変更するはめになった。
「キャベツの近くがいけなかったのかな。
野菜室に入れるときにキャベツ転がって潰しちゃったかな」
ブルーベリーが入った袋を片手にまだ諦めがつかないのかブツブツと呟き続ける。
「はぁーあ、やっちゃったものは仕方ないよね…」
少5分程誰にでもなく呟き続け、満足したらしく諦めがついた。
「熱いし、あれでも作るか。」
そういって棚を漁り、取り出したのは粉寒天だ。
ブルーベリーを欲しいだけボウルに入れ、フォークで粒が残る程度に潰す。
牛乳500mlを用意して、僅かでも常温に近づける為、用意した牛乳は冷蔵庫に仕舞わない。鍋に300mlの水を入れ、粉寒天4グラムを入れてから火を着ける。ゆっくりとかき回し続け、沸騰しはじめたら吹き零れない程度に沸騰状態を1分間続ける。
火を止めて牛乳500mlを素早く鍋の中でかき混ぜながら入れてある程度潰したブルーベリーを入れて撹拌する。
好みの容器に入れてあら熱が取れたら冷蔵庫で冷やし、牛乳寒天の出来上がりだ。
「あー、直ぐに食べたいからあら熱とかもういいや、一つれいとうこに入れちゃえ。」
火のそばで汗をかきベタベタだ。
シャワーに入っている間に出来るように冷蔵庫に傾げないように一つ入れた。
「ふぃー、さっぱりした。」
ペタペタと足音をさせながら冷蔵庫に向かう。
「うんうん、いい感じに冷えてる。」
取り出した牛乳寒天の容器を触ると冷たく冷えているがまだ中心がぬるい。
そんなことを分かっている松は冷蔵庫から更にバニラアイスを取り出した。
「この組み合わせがたまんないのよねー。
砂糖なしで寒天作ったのもこれのためだし。」
イソイソとバニラから棒を抜き取り、ある程度冷えた牛乳寒天と共にボウルに入れ、フォークで混ぜるようにかき回す。
「でーきた!アイス寒天。」
また容器に入れ直すなんて面倒な事はしない。ボウルに入ったまま、スプーンで掬い取る。
「あー、アイスがトロッと程よく溶けてて滑らかで美味しい。寒天のプルっとした食感とブルーベリーの歯応えが楽しいー!」
ブルーベリーを潰してしまったショックは何処へやら、既に機嫌はなおった。