8月13日夜10時
「やばいやばい、スーパー閉っちゃう!」
ママチャリが少し錆び付いてるみたいで、ギコギコ耳障りだなぁ、そもそも坂下さんが仕事残れって五月蝿いから、こんな時間になっちゃったじゃん!
私の名前は山際 松。
ちょっと古風な名前が良い感じな26歳、ついでに独身。
只今近所のスーパーまで買い物に行くため、ママチャリ漕いでます。先輩の坂下さんがまたうるさくてこんな時間まで残業頑張ってました。
でも、閉まる直前のスーパーって素敵ですよね、なんか良い感じのシールがいっぱい貼ってあってワクワクするし、出費は少なくてすむし。
「滑り込みっ、セエェェーフ!」
時間は21時50でまだ10分時間がある。
冷蔵庫に残っていたものを思い出してスーパー内を物色する。
「じゃがいもあるしー、ニンジンあるしー、あ、たらこが半額!買っとこ。
ゲソもあるー、しかも肝付の三割引だ、買い買いー♪
お、在庫処分でリキュールが二割引になってるー」
ポイポイと篭に食材を放り込む。
「お会計856円になります」
いつもの高校生のアルバイトのおねーさんがニコニコとしていてこっちもつられてニコーとなる。
「はいはい、1001円でお願いします」
そのまま会計してスーパーを後にする。
「ふぃー、ただいまぁ」
ワンKアパートに独り暮らし中で、実家までは車で一時間半。これがなかなかベストな距離だと思う。
ガサガサと買い物袋を机に下ろし、購入した物を先に冷蔵庫に入れ、先にシャワーを浴びる。
すぐにでも寝れる準備をしてから冷蔵庫からイカのゲソを取り出した。
「ムフフー、これこれー。お酒に合うのよー」
フンフンと鼻歌を歌いながら調理に入る。
まず、いかゲソを軽く洗い、触腕の吸盤はよく揉んでとる。
肝を包丁で落し、触腕は四当分にして他の腕は二等分にする。
目と目の少しした辺りを強めに摘まむと嘴がニュッと出てくるのでそれを掴んで抜き取る。目もそっと押し出し、頭を五ミリ程度の厚さに切る。
フライパンにバターを落とし、先に頭を炒めて色が変わったら腕を投入。ササッと炒めたら肝を入れ、解すように炒める。
仕上げに酒、塩、胡椒をお好みで入れて完成。
「リキュール買ったけど、やっぱりこれにはビールだよねー。
いただきまーす」
ゲソを口に放り込むとなんとも言えないバターと海の匂いが口いっぱいに広がる。
飲み込み、口に残るイカの肝独特の濃厚なコクをビールで洗い流す。
「ムッハー、これが休日前の醍醐味でんなー」
まったりと寛ぎながら、明日な何をしようかと思い更ける。
明日は休日。遠出をするのも悪くない。