鏡餅、地球、ゴミ箱
「地球滅亡しないかな」
「安定の突然中二病発言ですね凪くん」
むしろ悪の組織なセリフだと思う。
1月7日、お正月も終わり、冬休みに遊び倒したあたしと凪に残った物。
「だって地球滅びたら宿題の提出なくなるじゃん?」
そう、年末にたっぷりと出された冬休みの宿題。
「ついでに確認テストもなくなるし、一石二鳥★」
と、凪はドヤ顔である。
「はい、わかったわかった」
それを流して淡々とワークを仕上げていく。
「…陽菜も答え写してるだけのくせに」
「え、凪、頭に鏡餅落としてほしいの?縁起がいいね★」
「ごめんなさいちゃんとやります」
そういって凪も大人しく作業を再開した。
******
「…あれ、おかしいなー…」
10分ほど経っただろうか、1つ目のワークを終わらせた凪が、鞄をゴソゴソと漁っている。
「なにしてんの?」
丁度あたしも区切りがついたので、振りかえって凪にたずねる。
「答えのプリントがないんだよねー…」
残り時間が24時間を切っているあたし達にとって、答えはいわば生命線。そのプリントがないことは(いろんな意味で)死を意味する。
「間違えてゴミ箱に捨てたとかベタなことしてない?」
半分あきれながらゴミ箱を指差す。
すると凪はそのゴミ箱を覗きこむ。
「うーん、地球しかないや」
「ちょっと待て何て言った」
きっとまた凪の中二病発言、だと思う。
「ほら、地球」
ほい、と凪がゴミ箱のなかを見せる。
「…え」
中には…小宇宙が広がって…そのなかに地球が…
「凪くん、そのゴミ箱どうしたのかな?」
「え?このまえアウトレットショップで買ったんだけど?」
「今すぐ返品しよう、今すぐ」
******
「で、ほんとにないの?」
謎のゴミ箱騒動のあと、部屋の隅々まで探したが、結局見つからなかった。
「どうしよう、終わんない」
といいつつも、凪の顔には焦りは感じられない。
「凪、諦めただろ」
「うん★」
清々しいほどの笑顔で答える凪。
そこへ、
─ガチャッ
「凪兄、これ玄関に落ちてた」
神が降臨した。
「夕ちゃん久しぶりー」
「あ、陽菜ちゃん!こんにちはー」
凪の妹、夕ちゃんである。
「で、何が落ちてたって?」
アンチリアル妹の凪がぶっきらぼうに答える。
「化学の答え、要らないならいいけど」
「ごめんなさいありがとうございます」
超低姿勢で受け取る凪。
こうして解答紛失騒動は夕ちゃんの一瞬の活躍で終わった。
─そして次の日、凪と陽菜が無事に宿題を出せたかは…それぞれのご想像にお任せする。