第7話 ひぃぃぃぃぃぃいいいいい!
偉そうな態度をとる甲冑に遭遇した夜は終わり、朝が来た。なんだか上手く寝付くことができなかった。目をこすって、顔を洗いに行く。二人を起こすのは朝ご飯を作り終わってからでいいだろう。心配していたメリーだが、和花にしがみつくようにして深い眠りについていた。すでに和花は、メリーにとっての安眠抱き枕になっているようだ。
冷たい水で頭を覚まして、鏡を見る。どう見ても大人に見えない顔が映っていた。
何度見ても変わらない顔から目を逸らして、私はキッチンに立つ。今日はパンでも焼こう。確か以前の海尋家パーティで貰ったジャムが残っていたはず。うん、メニューは決定だ。パンだけというのもアレなので、冷蔵庫にある野菜を刻んでコンソメスープも作ろう。年末に風邪を引いてしまってはめでたい正月を迎えることができない。同居人の健康管理もまた、楽しいものである。
一通りの料理を終えて、私は二人を起こしにかかる。ぐっすり眠っているところを起こすのはいささか心苦しいが、私の部屋は六畳間。布団を片さなければ、折り畳み式テーブルを設置することもままならない。
「和花、朝飯だぞ」
とりあえず難敵メリーは度外視するとして、和花に勝負を挑む。将を射んと欲するなら、まず馬を射るのがセオリーというものだ。馬というか、枕だが。
しかし、ここで計算違いが起きる。
普段ならすんなり起きるはずの和花が目覚めない。体をゆすってみても、
「ぐう……すむ……んむぁう」
と謎の言葉を発しながら顔をしかめるばかりで、黒い瞳が見えることはない。昨日メリーと部屋に帰ってきたときには寝ていたので、十分に睡眠はとれていると思うのだが。私が眠っているときに、夜更かしでもしていたのだろうか。
「ん?」私は和花とメリーの頭の間になにかを見つける。
二人の頭が乗っているので、その詳細は分かりかねる。どうやら薄い冊子のようだ。赤い紙に黒い字で〝アルバ〟と書いてあるのが見える。
「……もしかして求人雑誌か?」
双葉荘の近くにあるコンビニの店頭で、毎週無料配布している求人雑誌に酷似していた。いや、酷似というより、これは殆ど確定ではないだろうか。和花とメリーには、この部屋の合鍵を渡しているので、双葉荘から自由に外出ができるようになっている。どちらかが、働こうと考えて、コンビニまで取りに行ったのだろうか。
まあ、それはいずれ分かるだろう。根掘り葉掘りきくべきではない。彼女たちには、彼女たちの生活があってしかるべきだ。これはとても好ましい兆候と言えよう。娘の成長を間近で感じたような気がして、私の心の温度が、ほんわりと上昇した。
そんなふうに、朝早くから穏やかな気持ちで過ごしていると、突然に相手が行動に出てきた。朝食が終わり、片づけをしていた時だ。決心を宿らせた、黒い大きな瞳の持ち主、
「働きたいのです」
水で泡の付いた皿をすすいでいる私の横で、洗い終わった食器を布巾で拭いている和花からの言葉だった。私は蛇口の水を止める。ラスト一枚だった皿を和花に手渡す。彼女は淀みなくそれを拭き始める。
「どしたいきなり」
私はちゃっちゃとシンクの上で手を振り、水を払い落とし、そばにいたメリーからタオルを受け取った。なるほど、どうやら求職していたのは和花だったようだ。
「ええとですね。昨日、姫宮さんから聞いたのですが、わたしほどの年齢なら働くことができると。それなら、お兄様に御家賃などを払うこともできるのではないかと思いまして」
和花の見た目年齢は、多く見積もって高校生といったところ。
たしかにアルバイトのひとつやふたつ、やっていてもおかしくはない。
「んー、べつに家賃なんていらないんだけど……和花は働いてみたいの?」
家賃などのお金の心配は全くいらない。私の貯蓄があれば死ぬまで働かずに双葉荘に住める。つい昨日、引っ越しが頭によぎったので一生住むなんてことはないと思うが。
「はい。まだまだ知らないことが多いので、労働というものを体験してみたいのです」
拭き終った皿を食器置き場にしまった和花が笑う。
和花が自らの知識欲を満たしたいのならば、反対する理由はない。が、その体験をするには大きな壁がある。それは彼女の身元が不明であること、そして面接で変なことを言ってしまわないかということ。なにかの拍子で彼女が人形とばれたらやっかいだ。
メリーが和花の持つ布巾を受け取り、洗濯物を入れているカゴに転移させ、
「私たちには社会的存在証明がないから、アルバイトするの、難しいかもしれないわね。私も昔、よく行くゲーセンで働こうとしたのだけれど、やんわり門前払いされてしまったの。こっちは悔しい思いをしてるっていうのに、相手方は生温かい視線を向けてきたから、不気味でしょうがなかったわよ。あの笑顔が忘れられないわ」
メリーの話にこくこくと小さなうなずきを返す和花。
「それは不気味ですね……百物語の中のひとつとして語っても遜色ないと思います」
メリーの外見年齢がどう見積もっても小学校高学年レベルだということに尽きる話だと思うのだが……。こと現代の話となると、オカルト娘たちは知識というか認識がずれている。そもそも人形と人間という生まれの違いも、価値観や判断基準に差異を生んでいるのかもしれない。私は年月と共に外見が変わっていく人間共通の現象、肉体的成長という過程を経て大人になった。しかし彼女たちの肉体は成長しない。作り変えない限り形も変わらないし、身長が伸びることもない。育つとしたら、中身。つまり心だろう。
彼女たちの精神年齢は、あるところでは人間の女子よりも上だと思う時もあるし、あるところでは外見相応の反応を見せるときがある。これは、彼女たちの姿が年を経ても変わらないゆえの現象なのだろうか。成長の認識が可視化されないというのは、私が思うよりも異質で、また、人間とは違う心の形成を促しているのかもしれない。
「どうしたんです、難しそうなことを考えているお顔をしていますけど」
和花が私の顔をしげしげと見ていることに、声をかけられて初めて気が付いた。
「ああいや、キミらって何歳なんだろうなーって、ふとね」
「あらやだ、紳士ポイント減点ね。淑女に年齢は尋ねるものではないわよ。そういう慣習が社会にはあるのではなくて?」
メリーはあきれてものが言えないという顔をしている。
「そりゃあるから黙って考えてたんだって。メリーは確実に俺より年下だとして」
「んなぁっ、人を外見で判断するんじゃないわよ! あなたよりは年上よ……きっと」
自信満々に答えた顔つきが時と共にしぼんでいった。
「希望的観測は聞いてませーん。それに若く見られてんだからいいだろ、淑女的には」
それもそうね、とメリーは笑った。くいくいと、後ろから服を引っ張られる。
「わたしは、いくつだと思いますか?」
興味津々な目で見てくる和花。難しい。物事を飲み込む早さ、打てば響くオカルト知識、そして私の長年の悩みを受け止めてくれた包容力。私と同年代か、少し上くらいだろうか。
「ううーん……年上、かなぁ。和花ってしっかりしてるし」
にんまりと、和花の口に笑みが浮かぶ。
「うふふ、それはわかりませんけれど、お兄様より年上なのは正解です。正確な年齢はさすがに伏せますが、生誕してからの時間は大学生のお兄様よりもずっと長いですよ」
すると、彼女は二十年前からこの世界で生きていたということだ。
「そっか、人生の先輩なんだな」
私がそういうと、和花はむむむ、と眉間に皺をよせ、前髪に隠れるおでこにひとさし指を当てながら唸った。
「……お姉さんって呼んでもいいんですよ? わたしのこと」
ゾクリ、と体をなにかが貫いていく感覚。和花は妖艶な微笑みをたたえている。現時点の兄妹のような関係が一瞬で逆転してしまったような情景に、私は動揺を隠せない。声にもつややかな色気が宿っていた。しゃかりきに働いているサラリーマンを一秒で骨抜きにして、堕落させてしまいそうだ。
「ふふ。どうでしょう、年上のお姉さんを演じてみたのですけれど」
途端にパッと表情をくずし、声色も元に戻し、綺麗サッパリあっけらかんと和花が尋ねてきたので、私はガクリと肩を落とした。どうやら才媛は、演技派女優でもあったらしい。
「いやぁ……頼りない駄犬を飼いならす魔性の姉貴って感じだった。いやまて、だいぶ本題から逸れちまったな。どうすっかなぁ……ツテって言っていいかわからんが、アテはあるぜ。働き口のさ」
「本当ですか! いったいどのようなお仕事なのでしょうか?」
「うーん、系列としちゃ……癒し系、かな。リラクゼーションというか。日々の生活に疲れてしまった人がちょっとだけ現実を忘れられる仕事だよ。うん……和花なら大丈夫。たしか店長、和花くらいの子が働けるようなお店もやっていたと思うし。俺の紹介なら、きっと、面接も免除になるんじゃないかな」
「瑠璃……あなたの言葉だけ聞いていると、とってもいかがわしいわよ、変態」
メリーの目つきは路上に落ちたゴミでも見ているかのように冷ややかだ。これには反論せざるを得ない。それに私は変態ではなくて、あくまで紳士を志望したい。
「変態なのはキミの思考回路だっつの! ったく。俺が働いてたとこ、もう忘れたのかよ。工藤さんにまでバラしたの、忘れてないんだからな。耳年増おませさんめ」
頬を真っ赤に染めてメリーが震えている。図星なんだろうか。
「みっ、耳年増か、ませてるのか罵倒はどちらかにしなさいよね! ま、まぁ、和花さんなら向いていそうね。癒しの波動が常に出ている気がするもの」
「だろ、仕事も和花ならすぐ覚えるだろうし、適職かもな」
私が持っている就職のツテ、それは。
「あのな和花、俺が昔働いてた、執事喫茶の店長が経営してるメイド喫茶があるんだけど。そこならきっと働けると思う」
昔馴染みの色物喫茶店である。マスターの喫茶店が王道ならば、こちらは限りなくニッチ。だがしかし、世間一般に浸透しているメイド喫茶のイメージとは程遠いことを、先に述べておくべきだろうか。無邪気に笑う和花に、無駄な期待を持たせるのは酷な気がしてきた。
「めいど……西洋の女中さんですね。やります、やらせていただけるのなら、やります!」
そんな私の葛藤も知らず、和花は私の提案を受け入れた。
*
実にいい返事でメイド喫茶バイトを志願した和花を引き連れ、私は元職場の従業員入り口前に立っていた。店長に電話でアポを取ったら、少々の沈黙の後、「すぐにこい」とのことだったので早速やってきたというわけだ。
私の元職場、『執事喫茶・アンダンテ』はこの田舎町が都会に対抗するために開店された、地元民の希望のような店舗である。都会に行きたくても、電車賃をかけるのが嫌という倹約家な女学生たちが常に来店しているため、大学のカフェテリアよりも断然賑わっている。店名は、店長が音楽好きなために、音楽用語からとっている。実際に店内が歩くような早さなのかは……ノーコメントでお願いしたい。
数年ぶりの職場訪問にすこしばかり緊張する。だが、言いだしっぺが止まるわけにいかん。
「こんにちはー」
私は灰色のドアを開ける。懐かしく、冷たい金属製のドアの軋む音が聞こえた。
ごちゃごちゃと備品がそこかしこに置かれている廊下を歩き、店長の待つ休憩室へと向かう。従業員とは遭遇しないまま、労働時の憩いの場へと続く扉までたどり着いた。和花はどこかそわそわしている。
「失礼します」
本日二度目の緊張ドア開閉を終えると、
「オメェが失礼するとこ、見てみてぇっちゃ、見てみてぇかもなァ」
外敵を威嚇しているような銀髪のツンツン髪と、会っていなかった期間を感じさせない距離の詰め方。お屋敷というより、カジノの方がしっくりくるセンスのスーツ、ネクタイをしていないせいで胸元がはだけているシャツ、年齢不詳の若々しい風体。
彼こそが店長の越坂部桐彦さんだ。彼はパイプ椅子に足を組んで座り、獣じみた金色の三白眼をこちらに向けている。笑顔の口元からのぞく白い歯、特に犬歯がぎらりと光っている。
狼のようだ。孤独な動物を思わせる瞳の鋭さは変わっていない。
「オォ、そいつが例の娘っ子か。良い面構えじゃんよ。それになんてえの、大正ロマンをビシバシに感じるねェ。着物が似合う大和撫子なんてまだ現代に居たとはよ、驚きだァ」
和花には着物を着てもらっていた。この店長に気に入られるにはインパクトが大事だ。むしろ、インパクトがなければ歯牙にもかけてもらえない。第一関門はどうやら突破したようである。店長が立ち上がり、私のすぐ前までやってきた。
「そんなことを言いつつオレは頭からつま先まで現代人なもんで大正なんて知ったこっちゃねェんだが。ま、そこらは言葉のあやってェことで勘弁してくれってなもんでよ、久しぶりだな色男。死んだかと思ったぜ」
白い歯をむき出しにして笑う店長。実際死のうとしていたことは言わないでおこう。
「なんとか生きてましたよ。繁盛してますか、アンダンテ」
「おぉーよ、繁盛も繁盛。連日お客様が途絶えないってもんだがよ、多すぎるってのも困りもんでよ。今のメンツ、地方出身者が結構いてなァ、年末だから欠員が著しいんだ。そんなときにオメェが来てくれるとは、全く、人事を尽くした甲斐があったってなもんだな。天はオレを見捨てなかったッ」
ガッシ、と両肩をつかまれる。獣のように鋭利な爪は生えていないものの、店長の握力は、執念のようなものが込められているのか、頑なに私を離そうとしない。
「いやー、あのー、店長? 俺じゃなくてですね、そこにいる和花がですね」
「モーッチロン。ノドカにも働いてもらうぜェ。アンダンテじゃなく、リベラメンテでな」
『メイド喫茶・リベラメンテ』とは越坂部さん経営の男性層をターゲットにした店舗のことだ。その音楽用語由来の名の通り、自由な店構えをメインテーマとしている。メイド喫茶の名を冠してはいるが……冠しているだけの日もある。
危険な店ではないということは承知だが、そこまでの過程に危険があるかもしれないし、親心ではないが、バイトを紹介した手前、労働する姿を見届けたい。私は無謀にも、店長に対して弱めの抗議をすることにした
「でもえっと、リベラまで電車で三……四駅くらいあるじゃないですか。この子まだこっちにきて日が浅くて、遠いとこに一人にするのはちょっと……」
「あーんしんしろぉー、イカした執事をひとりつけてやるって。タダでイケメンと同伴だぜ。得したな、お嬢さん(フロイライン)」
和花は店長の威嚇要素がありすぎる凶暴な笑顔にビクッと肩を震わせた。店長はくつくつと笑いを噛み殺していて、それも我慢できなくなったのか口を大きく開いた。
「かああああ、イイネェ! 初心だ。いまいる娘たちとはァ、んー、五味くらいちげぇな。良い人材だぜ。普通は店の色に染めちまう所だが、あの子は天然色のままで良さそうだ」
「いやだからその」
店長は自分だけで話をどんどん進めていく。やばい置いていかれる!
「いまは人手優先かつ、オメェの紹介だろうがよォ、断るリユーが見つからねェ。おーい、ヨシダァ、フロイライン一丁をリベラメンテにエスコートよろしくゥ!」
バン、と大きな音を立てて休憩室のドアが開くと、そこには見目麗しい執事がいた。
どこの組だよ、ここは。越坂部さん、背中に彫り物とかなかったよな、たぶん。
「ただいま参りました越坂部様。ご案内するのは、こちらのお嬢様ですね」
吉田さんの確認に店長は首肯する。店長にうなずきを返した吉田さんが和花を手招きした。
和花は吉田さんを見て、私を見て、店長を見たあと、
「ええっと……お兄様、いってきますね。頑張って御家賃を稼いできます」
「エライッ、素晴らしいッ! ドカンと稼いで来い!」
店長は親指を立てて和花にエールを送った。二カッと笑った口からは尖った犬歯がのぞいている。
「はーい」
パタパタと小さく手を振りながら和花は吉田さんにドナドナされていく。いやだがこの言い回しは間違いだ。売られた子牛は和花ではなく、
「サァテェェ……」
「な、なんでしょうか」
「元売れっ子アイドルの稼ぎっぷりを見せてもらおうかねェエエエエ!?」
「ひぃぃぃぃぃぃいいいいい!」
樹齢三百年の巨木すら薙ぎ倒しかねない、暴風のごとき威圧感の直撃を店長から浴びせられている、私の方だ。狼に睨まれ、鋭い爪で掴まれた鈍重な子牛は、ライオンに追いかけられるインパラと違って逃げる行動すらできず、ただ、肉食獣に捕獲された事実を受け止めることに、労働を果たす覚悟を固めることに躍起になるしかないのである。
「ででででででも、店長、俺の制服、もう前のじゃ入りませんよさすがに」
「そんなんノープロだ」
私の顔の前で人差し指を振り子のようにする店長。ブレムくらい略さずに言えばいいのではないだろうか。
「後藤! 後藤はいるかァ!」パンパン、と店長が両手を叩いて大きな音を出した。
「どうなされましたか」
よく訓練された執事二号、後藤さんがドアを開けてやってきた。対応早っ。
「オゥ、こいつを採寸しろ」
「かしこまりました」
どこからともなくメジャーを取り出した後藤さんが私に接近してくる。いったいどうして健康診断が始まったのか理解しかねていると。店長が携帯をポケットから出してどこかに電話をかけ始めた。
「御手洗かァ? そうだ越坂部だ。わりぃな、いま女っ気のないとこにいるもんでよォ、オレが電話しちまった。ああ。そうだ。いつも通り頼む。もうそろ採寸終わっからよ、データ取れたらメールするな。いつもありがとよ、じゃあな……うし、後藤データよこせ」
「こちらになります」
後藤さんが私の身体データが記された紙片を越坂部さんに渡した。
「どれどれ…………相変わらずホッセェー、ちゃんと肉食ってんのかよ。これならリベラでも通用すんじゃねェの?」
わりと本気っぽい目で越坂部さんがにやにやしている。
「それは勘弁してください……」
「働き様によるなァ……っとよしソーシン。おいルリィ、ちょっとひとっ走り行って来い。そう遠くねぇし、御手洗にも連絡してあるし……それにオメェなら平気だと思うしな」
私がまったく事態を把握できないでいると、越坂部さんが私のデータが書かれた紙の裏になにやら書き込み、それを渡してきた。
「制服を取ってこい。遅刻したらリベラ行きだからよ、気ぃ付けろ。オレとしちゃ、そっちのが稼げっからありがてェ話なもんだが……」
「喜んで取りにいかさせていただきますぅ!」
私は越坂部さん即興の地図を相棒に、冒険の旅に出ることにした。
世界を救うでもない、姫を助けるのでもない。
ただ、自らの女装を回避するためのアドベンチャーだ。
RPGの勇者のお使いイベントは、あんなにも温いというのに! なぜ一般市民である私のお使いは、こんな自分の尊厳みたいな何かがかかっているんだ! 最初の村でラスボスにブチ当たった気分である……。