ここまで7皿。回転寿司にて。
ここまで7皿。回転寿司にて。
「お手拭き2つ。湯飲み2つ。お箸2つ。お醤油。わさび。ガリっと」
「えらいご機嫌だね」
「だって、はま寿司が好きなんだもん。お高い回転寿司ならここよりも1.5倍以上はお金がかかるよ。それならここでお腹いっぱい食べたほうがいい。おいしいし、コスパもいいし!はま寿司最強よ!」
「ふーん」
「さ、お食べ」
彼女がタッチパネルを操作した。
1皿目
・彼 サーモン
・彼女 まぐろ漬
「やっぱ、おいしい!」
彼女は心からそう言っている。
「でさ、夏休みどーする」
外はすっかり盛夏だ。油蝉の鳴き始めで耳につく。これからもっとうるさくなるだろう。日は天高く眩しい。
はま寿司はエアコンで冷えていて外の暑さ忘れさせてくれる。快適だ。お寿司もすすむ。
「お互いの休みを合わせてからだね」
サーモンにわさびをのせて、醤油は多めにつけて彼は食べながら、
「どこか行きたい?」
と聞いた。
「どこがいいかな」
積極的に行きたいところは、彼女にはないみたいだった。
「ハワイとかって言いたいけど、そこまではね・・」
「そうだね。じゃあ、沖縄?」
良い案を見つけたというふうに彼は言った。
「いいね。あたしの水着姿も見れるし!」
「・・・・・休みの日程が決まったら教えて」
「うん」
「ビール忘れてた・・・」
彼女はタッチパネルで注文した、。
2皿目
瓶ビール
3皿目
・彼 鯛
・彼女 鮪
「一貫ずつ分けて食べよー」
「でさ、スマホでアンケートに答えたのよ。そしたら、ポイントを結構もらった」
「どんなアンケート?」
「つきあっている人について教えてくださいというアンケート。たとえば、やさしいとかお金持ちみたいな。あたしはあなたのこと、やさしいひとって月並みだけど答えといたわ。頼りになる、かっこいい。あたしと違って物静とか。職業は公務員。年収は?500くらい。盛っておいたよ♪」
頼りにしているのは僕のほうだ・・・。僕はひとりでは大事なことを何も決められない性格だ。
「あ、ちゃんとわかっているから。あなたは本当はあたしを頼ってくれてるって。それはうれしいの」
複雑な気分だけど、本当のことだからしかたない。
「それから、Hは月何回ってあったけど、毎週って答えといた!」
「・・・・・」
「最後はね。彼と結婚したいですか?」
「もちろん、YESよ」
「なるほどね。で、ポイントはどれだけもらったの?」
「1,000」
4皿目がベルトに乗ってやってきた。
・彼 サーモントロ
・彼女 たまご
ここでたまごか。
そして、この話の行先はどこなんだろうか・・・と、彼は思っている。
「じゃさ、もしもあなたがおなじアンケートに回答するとしたら、なんてする?」
「彼女の性格は?」
「僕と違って明るい」
「それから?」
「スタイルがいい・・・背は小さくて髪は長い。ちょこちょこしている」
「ありがとう♪」
「職業は?」
「英語の講師」
「年収は?」
「450くらいだったかな」
「Hは月何回?」
「えーと、月2回くらいかな?どうだっけ?」
「そんなの正直に答える必要ないし!」
「つぎね、いい?これが大事よ?」
「彼女と結婚したいですか?」
「もちろんさ」
「いつくらいに?」
「それは・・・わかんない。けど結婚はしたいと思ってるよ」
「微妙な回答ね。ま、よしとしましょう。あ、つぎのが来た」
5皿目
・彼 赤貝。
・彼女 石垣鯛。
「コリコリしておいしいよ」
「赤貝は、ちゃんと赤貝してる」
「ちゃんとって?」
続いて、6皿目
・彼 イカ
・彼女 たこ
「あたしたち付き合って何年目?」
「3年目」
「正解」
「さっきのアンケートの続き?」
「そうよ」
「はじめてのデートは?」
「いつもの居酒屋。今も月一は行っている」
「正解」
「あたしの趣味は?」
「マラソン」
「正解。あなたの趣味もマラソン、あたしたちはマラソンサークルで知り合った」
タイムは、彼女の方がはるかにいい。
「あたしの誕生日は?」
「8月。8月18日」
「何年かも言って」
「H10.8.18」
「あたしの年齢は?」
「28」
「あなたの生年月日は、H.7.6.8あなたの年齢は31」
「あなたの貯金は、500。あたしは600」
「では、これが最後です。もう一度聞きますが。あたしと結婚する気持ちは?」
「いつとはわからないけど、あるよ」
「まぁ、ひとりでは大事なことが決められないあなたらしいわ。じゃ、あたしが決めてあげる」
「じゃあ、聞き方を変えるね。ふたりの結婚を妨げるものは?」
「ないな」
彼女の勢いはとまらない。でもたこが口からなくならない。
「あたしは、いますぐにでもしたい」
「導かれる結論は?」
「結婚する・・・だね」
「それなら、いまここでプロポーズして」
「ここでって、ここ回転寿司だよ」
「いいの♪返って思い出に残るから」
「・・・・・」
「あ、立って言って。あたしも立つから」
「えっ!、・・・わかったよ」
ふたりで立ち上がった。店内は「?の雰囲気」となっていた。
「みなさん、わたくしは今から彼女にプロポーズします。立会人になってください」
どこにそれだけの声を出せる力が彼にあったのかと、彼女は驚いた。
ふたりは店中の注目を浴びた。
「ミドリさん、僕と結婚してください。幸せにします」
「はい、ノボルさん。謹んでお受けします」
店内はざわめきから、静寂に変わっていた。そして大拍手が湧きあがった。かわいい子供の声もする。
ミドリは不思議そうに立っている。
ノボルが座ろうとしない。
そして、持ってきたポーチから何か取り出した。
「はい」
彼の右手には指輪があった。ミドリの左手をそっと持ち、その薬指に指輪をゆっくり着けた。
満員のお客からの割れんばかりの拍手がなりやまなかった。
「おめでとう!」
と、あまりの喝采に聞こえづらいが、たしかにその声が聞こえている。
「おめでとう」って。
7皿目
そしてふたりの前に7皿目のショートケーキが流れてきて止まった。
「もうお腹いっぱいよぉ」




