甘さ控えめのチョコケーキ
夕食を終え、湯飲みに手を添えた柚瑠がふっと息を吐く。テーブル越しの律は、そわそわと落ち着きなく手元の箱を見つめていた。
「……あの、柚瑠さん」
「あ?」
呼ばれて顔を上げた柚瑠に、律は小さく息を飲んでから、小箱を差し出した。ピシッとしたリボンが結ばれた、それはどう見ても──
「これ……その、バレンタインの、ケーキで……。昨日、黒川くんと一緒に作ったんですけど……柚瑠さんに渡したくて」
「へえ」
柚瑠は箱を受け取ると、しばらくまじまじと見つめる。包みの端が少し歪んでいて、器用とは言えない律の手作業が想像できた。
「手作りか。凝ってるじゃん、律」
「そ、そんな、凝ってるってほどじゃ……。でも、その……ちゃんと味見もしてて、甘さ控えめにしたんです。柚瑠さん、あんまり甘すぎるのは苦手って言ってたので……」
耳まで赤くなりながら早口になる律に、柚瑠は肩を揺らして笑う。
「……よく見てんな。俺の好みまで覚えてるなんて、えらいえらい」
「べ、別に、覚えてたってわけじゃなくて……!」
「そっか」
にこりと微笑む柚瑠は、どこか穏やかで、少しだけからかい混じり。それでも、箱を大切そうに手元に置く仕草には、どこか照れたような柔らかさがあった。
「ありがとな、律。後でゆっくり食うよ。……お前の気持ちごと、味わわせてもらうから」
その一言に、律の顔がぱっと赤く染まり、声もなく口をパクパクさせる。
「な、なんでそういうこと、さらっと言うんですか……!」
「本気で言ってるだけだぞ?」
そう言って笑う柚瑠に、律はますます顔を赤らめながら、俯いたまま「……どうぞ、好きなだけ食べてください」と、小さな声で呟いた。




