雪の夜、愛を知る
冬の夜、静かに雪が降っている。
カーテンの隙間から漏れる外の光が、畳の部屋の空気を淡く照らしていた。
布団の上に、湯上がりのふたりが向かい合って座っている。
まだ少し湿った律の髪から、柚子の香りがやわらかく漂っていた。
「……寒くないか?」
柚瑠が、優しく律の肩を引き寄せる。
バスタオルを外し、薄手のブランケットをふたりでくるむ。
肌が触れ合うたび、空気が静かに揺れた。
「……だいじょうぶです、柚瑠さん……」
律はそう答えながらも、声がわずかに震えていた。
頬は赤く、恥ずかしさと高鳴りが混ざっている。
その様子に、柚瑠が小さく笑う。
「そんな顔して……ほんと可愛いな、律」
ふっと近づいた唇が、律の頬に触れた。
柔らかく、温かく、甘い。
顎をなぞり、首筋にそっと口づけると、律の体がびくりと震える。
「……っ、ん……」
「怖い?」
「……怖くは、ないです……。俺も、こうしたかったから……」
その言葉のあと、律は小さく息を吸い、瞳を伏せた。
胸の奥に長く積もっていた想いが、音を立ててほどけていくようだった。
「……じゃあ、教えて。律の気持ち、ちゃんと聞かせて」
柚瑠が囁くと、律はそっと目を上げた。
緑の瞳が揺れ、ためらいながらも、真っ直ぐに彼を見つめる。
「……柚瑠……好き、です……」
その一言で、柚瑠の表情が変わった。
抑えていた感情がほどけたように、彼は律を抱き寄せ、静かに布団の上へ押し倒した。
「……今の、もう一回言ってみて」
「……柚瑠、……好き……」
唇が重なり、深い息が混ざる。
雪の静けさに包まれて、世界から音が消えていく。
重なる体温、揺れる吐息。
ふたりの間にある境界線が、ゆっくりと溶けていった。
どちらからともなく手が動き、頬を撫で、指が髪を梳く。
遠くで風が障子を鳴らす。
布団の中、重なった影がひとつになって揺れた。
やがて、律が小さく息を詰まらせながら、震える声で呼ぶ。
「……柚瑠……もう、離れないで……」
「離れないよ。どんなに季節が変わっても」
外の雪は、いつの間にか音もなく積もっていた。
ふたりの温もりだけが、白い夜をやさしく染めていた。




