こたつと甘酒と、君の手
12月31日・夜 黒川の部屋
こたつの中でぬくぬくと足を伸ばし、黒川は煎餅を齧りながら、だらだらと年末特番を眺めていた。
隣では因幡が横になり、みかんの皮を器用に剥きながら、どこかぼんやりと画面を見ている。
「……なぁ」
「ん?」
「二年まいりでも、行ってみる?」
唐突に因幡がつぶやいた言葉に、黒川は一瞬きょとんとする。だが、すぐに頬を緩めて頷いた。
「……いいっすよ。せっかくだし」
外は凍えるような寒さだったが、ふたりはダウンを羽織り、近所の神社へと並んで歩いた。年越し直前の参拝者で、境内はそれなりに賑わっていたが、決して騒がしくはない。
白い息を吐きながら境内へ入ったその瞬間、ふと因幡が黒川の手をそっと取った。
それは、“はぐれないように”という建前のようで、ただ彼の体温を感じていたいだけのようでもあった。
黒川はそれに驚きながらも、何も言わず、繋がれた手をぎゅっと握り返す。
順番を待ち、ふたり並んで柏手を打つ。
目を閉じ、それぞれが願うことは口にはしない。
ただ、こっそり祈るのは――「相手が笑っていられる一年でありますように」。
「……何、願ったんすか」
「内緒。そっちは?」
「……俺も、秘密っすよ」
肩をすくめ合い、ふっと笑い合うふたり。
参道脇で振る舞われていた甘酒を受け取ると、湯気の立つ紙カップを手に、並んで腰かけた。
口に含んだ甘酒は、ほのかに温かくて、ちょっとだけ正月らしい味がした。
「今年も……よろしくな」
「……うん。こちらこそ、よろしくです」
凍える夜空の下、澄んだ空気に言葉を浮かべるように、そっと誓いを交わす。
きらきらと星が瞬くその下で、ふたりの始まりが、またひとつ重なった。




