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官能霊媒師は朗読で祓う  作者: あしゅ太郎


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夜の工場と、記憶を抱く霊たち

夜、人気のない工場地帯。

因幡と黒川は、晩飯を買いに立ち寄ったコンビニの帰り道、すぐ隣の研究施設で「パンッ」という乾いた銃声を聞いた。


「……今の、銃?」

「どう考えても。黒川、通報は任せる」


すぐに因幡は現場に駆け出す。黒川がスマホを手に警察へ連絡する声の後ろで、因幡はフェンス越しに、倒れた人影と逃げ出す男の姿を目撃した。


数日後──


殺されたのはその研究所の職員と、侵入した2人組のうちの一人。

警察の捜査で明らかになったのは、2人の侵入者は内部に関係のある人物だったこと、そして口論の末、片方がもう一人を射殺したという事実だった。

彼らの目的は、研究所が極秘に進めていたプロジェクトデータの窃取。

そのデータには、「死者の記憶と人格を霊的に抽出し、デジタルデータとして保存する」という前代未聞の実験記録が収められていた。


後日、警察は逃走していたもう一人の犯人を逮捕し、プロジェクトデータが保存されていたチップも無事回収されたという。

真相が明らかになるにつれ、この事件が人の死と魂、そして科学の倫理にまで踏み込んだ、危険な領域に触れていたことが浮き彫りになっていった。


---


深夜の工場跡にて(因幡・黒川・律・柚瑠)



数日後の深夜。事件現場は封鎖が解除され、ひっそりと静まり返っていた。

因幡たちは夜の工場にこっそりと入る。目的はただひとつ──悪霊化を防ぐための魂の鎮静。


「霊が二つ……どちらも強い執着を残してる。片方は、死んだ研究員。もう片方は撃ち殺された犯人の男」

因幡が淡々と説明する中、空気がじんわり冷たくなる。


「……来てる。黒川、離れるな」

「わかってますよ、先生」


霊たちは、目には見えないが確かにそこにいた。叫ぶような感情がぶつかってくる。

因幡が手を差し出し、霊との波長を合わせる。断片的な記憶が彼に流れ込む。


──“記憶を残したい。生きた証を”──

──“裏切られた。奪われた”──


「このままじゃ、どちらも悪霊になる」


「……俺がやる」

一歩前に出たのは柚瑠だった。

柔らかな灯のような言霊を口にしながら、柚瑠は印を結び、正統派の鎮魂術式を展開する。

因幡や黒川とはまた違う、清らかで澄んだ空気が漂いはじめた。


やがて、目に見えない“重さ”がふっと消える。


「……成仏した、みたいですね」

律がそっと口にした。どこか安堵した表情で。


「でも、このデータがもし他にも流出してたら……また似たような霊が出るかもな」

黒川がぼそりとつぶやく。


因幡は黙って夜空を見上げた。

この世に留まりすぎた記憶が、再び誰かの手で蘇る時、

それが救いになるのか、呪いになるのか──。



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