表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
官能霊媒師は朗読で祓う  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/83

秋風の残響

除霊も終わり、少しだけ遊んだ後。

4人は駅までの道を歩いていたが、律が柚瑠の手を取り、「コンビニ寄ってきます!」と言って強引に連れ出していった。


「あっ、おい律っ……!……ったく……」


残されたのは因幡と黒川のふたり。


夜の風は少し肌寒いが、賑やかな店の明かりと酔客の声に混じって、それぞれの足音が小さく響いていた。


「……なんか、今日は楽しかったな」


黒川がふと呟いた。


「そうだな。にぎやかなのも、悪くない」


因幡は手をポケットに入れたまま、いつもよりゆっくりと歩く。

その歩幅に自然と合わせていた黒川は、ぽつりと問いかけた。


「先生……ああいう霊を前にするとき、何考えてるんですか?」


「“ああいう霊”?」


「……たとえば今日の、心を残して成仏できなかった人たち。好きな人に伝えられなかった想い。……自分がああなったらどうするんだろうって、ちょっと考えちゃって」


因幡は少し立ち止まり、街灯の下で振り返る。

黒川の視線は、夜風に揺れる自分の袖を見つめていた。


──あの日、霊が消える間際に。

彼は、確かに因幡の袖の裾を掴んでいた。


「……お前は、“伝えたい”と思う相手がいるのか?」


「……先生だったら、どう思います?」


その問いは、答えになっていなかったが──

因幡の胸に、何かがじんわりと沈んでいく。


気付かないふりもできた。

けれど、今夜の黒川は少しだけ踏み込んできている。


「俺だったら……もし、誰かを本気で好きになったとして。どうしても叶わないってわかってても……」


一歩、因幡は近づいた。

黒川の黒目がちな瞳がわずかに見開く。


「伝えずに死ぬなんて、絶対イヤだと思う」


ほんの一瞬、沈黙。


「……そっか」


黒川ははにかむように笑った。


「俺も……そうかもしれないです」


──けれど、その“誰か”が誰なのか。

あえて因幡は聞かなかった。


夜の街に、かすかな秋の匂い。

歩き出したふたりの肩が、ほんの数センチ近づいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ