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官能霊媒師は朗読で祓う  作者: あしゅ太郎


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26/83

これからも仲良くしよう会

「というわけで、ここが本日の戦場です!」


律が満面の笑顔で掲げたのは、駅前のカラオケボックスの看板だった。


「……なんだよ戦場って」


眉をひそめる柚瑠の腕を、律がうれしそうに取る。


「だって今日は“これからも仲良くしよう会”ですよ! 柚瑠さんにもお友達ができた記念!」


「お、お前……っ」


「律くん、それそれ。いいテーマだと思うよ」

黒川が苦笑しつつ律にグッジョブポーズを送れば、その横で因幡が口を開いた。


「……ところで、例のカラオケの霊、マジだったのか?」


「ええ、“高得点を出すと女の霊が出る”っていう噂、どうやら本当みたいです」


「なるほど。で、律の計画は“遊びながら仕事もしよう”ってわけね」


因幡はふっと笑いながら、「そういうの嫌いじゃない」と呟いた。


---


ワイワイと選曲しながら、まずは因幡と柚瑠の点数対決。

因幡がバラードで92点、柚瑠が疾走系ロックで94点。


「うそだろ、負けた……」

「やった……!」柚瑠が密かにガッツポーズ。


だがその直後──

スピーカーからジジッとノイズ。

部屋の照明が明滅し、低く女の嗚咽が響く。


「……来たな」


因幡がふっと真顔に戻り、バッグの中から小冊子を取り出す。


律がぽんと手を打つ。「ここからは先生の出番ですね」


「え、今から朗読すんのか?」柚瑠が呆れ顔。


黒川が少しだけ頬を赤らめつつ、「……でも、効果があるのは確かだから」とフォロー。


女の霊の気配がスピーカーの奥から濃くなり、青白い手が覗く。


因幡はマイクを手に取り、声のトーンを落とす。


> 「“熱を帯びた指先が、ゆっくりと彼女の素肌をなぞる。息を呑むたび、ふたりの間の距離が──”」


スピーカーから溢れるように、女の霊が這い出してきた。

その頬に熱を宿し、怯えと渇望が混ざった表情。


> 「“愛している。そう囁いた声が、耳の奥を震わせる。逃げられない。もう、この手を離せない──”」


因幡の声が濃密な空気を作り出す。霊の姿はその甘やかな言葉に魅入られ、次第に形を崩していく。


> 「“たとえ許されぬ恋でも。報われぬ想いでも。私は、あなたを抱いて──”」


女の霊が微かに笑みを浮かべ、すっと空気に溶けるように消えた。


──静寂。


「……ふぅ。まさかまたカラオケルームで官能小説読むことになるとは思わなかった」


因幡が苦笑しつつマイクを置けば、柚瑠が絶句している。


「こ、これを冷静に読むってどうかしてる……」


「でもすごかったッスよ。あんな色っぽい声で読まれたら、霊も未練晴らすってもんです」


律が拍手しながら笑い、黒川は俯きつつ赤面していた。


「……あんなの、毎回聞いてるの、俺だけなんだよな……」


ぽつりと呟いたその言葉を誰かが聞いたかどうかは、定かではない。


---


事件は無事解決。

4人は残り時間をカラオケとお菓子で過ごし、「これからも仲良くしよう会」は賑やかに幕を閉じた。



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