表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
官能霊媒師は朗読で祓う  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/21

その声に、理も揺らぐ

控え室のソファで脚を組んで座る因幡歩人は、スーツの上に羽織ったロングカーディガンをゆったりとたなびかせながら、スマホで原稿チェックをしている。

その脇では黒川才斗が緊張のあまり、水のボトルを何度も手に取っては置いている。


「……先生、本当に、出るんですね、テレビ」


「出ないって言ったら、“朗読除霊師の素顔に迫る!”とか勝手に特集組まれるって言われてな?」


因幡はスマホを置いて、にやりと笑った。


「だったら堂々と顔出してやるよ。ついでに、ほら。これ見てくれ」


と、取り出したのは自著の新刊、『濡れる吐息と、終電のキス』の見本誌。


「せっかくだし宣伝もしちゃおうかなーって思って」


「……この期に及んで、ちゃっかりしてるってレベルじゃありませんよ……!」


「俺が何者かをちゃんと世に知らしめるには、これが一番手っ取り早いだろ? 霊も祓えて、エロも書ける二刀流――かっこいいじゃん?」


「むしろエロが本職なの、忘れないでください!」


スタッフが呼びに来ると、因幡は文庫本を胸ポケットにしまい、スタジオへ向かって堂々と歩いていく。


---


一方そのころ 高守柚瑠の自宅・テレビ前


テレビに映る因幡の姿を、高守柚瑠はソファの上で正座しながら、信じられないものを見るように凝視していた。


> 「“朗読除霊”がネットで大注目!霊を祓う方法がまさかの……『官能小説』!? 本日は、この異端の除霊師・因幡歩人さんにスタジオでお話を伺います!」




「な、なんであんなに堂々としてるんだ……!? それにあの本……!」


カメラの前で、因幡は淡々と語る。


> 「霊ってのは、未練とか欲とか、そういうのに引っ張られてるわけで。“官能”ってのは、それを動かす感情のひとつでもある。まぁ、俺の朗読が刺さるのは、そういう理屈……だと“あとから”気づいたけどね」




> 「ちなみに最新作の『濡れる吐息と、終電のキス』、本日発売です。ぜひ書店で……」




「……宣伝までしやがった!!」


高守は膝を抱えて頭を抱えた。


「僕の方が術式の正統性では上なはずなのに……!なんで、あんな“色っぽい読み聞かせ”みたいなことで!」


そこへ律が、カップに紅茶を入れて現れる。


「柚瑠さん。実力があるからこそ焦るのは分かるけど……大丈夫。柚瑠さんの除霊は、ちゃんと“心を祓う”力がありますよ」


「律……」


「それに、因幡さんのあれ、思ったより真面目ですよ。ちゃんと意味があるからバズってる。……でも、負けたくないなら、もっと自分の“得意”を見せていきましょ?」


「……僕の得意、か」


高守はゆっくり立ち上がり、テレビの中の因幡を真っ直ぐに見つめた。


「だったら……僕だって、負けない。“正統派”の霊媒師として、僕なりの方法で戦う……!」


律はそんな高守の横顔をうっとりした表情で見つめる。


「……はい。そういう顔、素敵です、柚瑠さん」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ