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第四十六話 明かされたプロジェクト

放課後、部活が始まってすぐ。

調理室ではみんなが慌ただしく調理の準備をしていた。


「安太郎くん、凛々子くん、銀平くんに琴乃さんと澪さん……ちょっと前に来てくれないか?」


鷹爪部長の声は、いつもより低くて妙に重たかった。


僕は慌ててフライパンの火を止めた。

銀平は手を拭きながら無言で立ち上がる。

琴乃と澪も顔を見合わせ、すぐに動いた。

凛々子はエプロンの紐をほどきながら、ぼそっとつぶやく。


「あたしら、なんかやらかした……」


僕たちは無言で部長の横に並んだ。

春巻副部長は分厚いファイルを手にしている。

鷹爪部長がみんなに向かって言った。


「皆さんは、学生食堂が改装中なのは知ってるね」


「せやから、あそこのエビマヨ食べられへんやん。あれ、めっちゃ好きやったのに」


凛々子の言葉に、あちこちから笑いが漏れる。


「改装後には、一階フロアを地域の人にも開放する予定だ。

そこで、毎週一回、料理部がレストランを運営することが決まった」


調理室にざわめきが広がる。


――部長が言っていた『極秘プロジェクト』って、これだったのか。


胸が高鳴るのを感じた。


「その計画を、この五人を中心に進めてもらいたいと思う」


鷹爪部長の言葉に、思わず息を呑む。


調理室のモニターに、大きく『高校生レストラン計画』の文字が浮かび上がった。




***




「この五人は、僕の与えたミッションを見事に達成してくれた。涼音すずねくん、紹介をよろしく」


鷹爪部長の言葉に、春巻副部長が画面を見つめて頷いた。


「わかりました」


モニターに淡く文字が浮かび上がる。


「スイーツ部門リーダー 荒巻銀平」

春巻副部長のアナウンスが響く。


「銀平さんは、創作スイーツで独特の感性を発揮し、新たな風を吹き込みました」


銀平が、照れたように、えへへっと笑う。


画面が切り替わる。

「和食部門リーダー 南禅寺琴乃」


「琴乃さんは、日本料理の伝統を受け継ぎつつ、革新を加えて発展させています」


琴乃さんが、凛としたお辞儀を見せる。


次に映し出されるのは

「接客部門リーダー 土筆澪」


「澪さんは、お客さんの体調や気分に合わせ、最高のおもてなしを提供できる気遣いの人です。それと、出された料理のレシピの記録もお願いします」


澪が、にっこり微笑む。


そして、僕の顔が映る。

「料理長 炊屋安太郎」


「安太郎くんは、学園祭で味と値段の両立に成功しました。さらにフランス料理や中華料理、どんな料理でも素早く完璧に仕上げ、チームを牽引してくれます」


――僕が料理長だって!?


突然の指名に、戸惑いと責任の重みが一気に押し寄せた。


最後に

「総合メニュー監修 六味凛々子」


「凛々子さんは絶対味覚保持者ミラクルテイスターとして、皆の料理を融合させ、さらなる高みへ引き上げてくれます」


春巻副部長が凛々子の方を見て、にやりと笑いながら付け加える。


「ただし、料理はできません」


調理室のみんなの視線が一斉に集まり、笑い声が響く。

凛々子はむっと唇を尖らせ、ふくれっ面を作った。




***




次にモニターに映し出されたのは、改装後の学生食堂の完成イメージだった。

大きなガラス窓からは緑が見え、開放的なカウンター席と木目のテーブルが整然と並んでいる。


「すごい……」

「きれい……一流レストランみたい」


誰からともなくため息が漏れた。


最後に「オープンは次の学園祭」というテロップが流れる。


画面に映る完成図を、僕はじっと見つめた。

どこまでも澄んだ空気が流れ込んでくるようで、思わず息を飲んだ。


部屋が沈黙に包まれたところで、部長が続ける。


「僕たち三年生は、間もなく卒業してしまう。残念だけど、完成に立ち会えない」


凛々子が小さく肩を震わせる。

銀平も琴乃も、言葉を探すように視線だけを動かした。


「今の二年生も、これからは受験や就活で、ますます忙しくなるだろう」


部長はもう一度僕たちを見つめ、静かに言葉を選んだ。


「だから、このプロジェクトは君たち五人を中心とした一年生と、次の新入生に託す。 君たちで美味が丘の料理部を動かし、新しい歴史を紡いでいくんだ」


「がんばって!」

「美味が丘は任せたぞ!」


調理室のみんなが僕たちに拍手を送った。

の言葉は、僕の胸にじんわりと重みを落とした。


――僕たちのバトンは、確かにつながっている


そんな実感が、部屋いっぱいに広がっていった。


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