表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

【第8話(全10回)】新メグモ・検査結果

 突然、一度にいろいろなことが起こり過ぎて、柔曽じゅうぞは大いに混乱したものの、とりあえず、メグモを家の中へ運び入れた。

 雨で濡れたからか、メグモの肌は冷たい。外見、服装は、かつて立体映像だった頃と同じ。足はサンダル履き。

 メグモの身長は、柔曽よりやや小柄。重さは、多分、同じ体格の少女と余り変わらないであろう。


 以前、この洋館は診療所であったので、電動ストレッチャーも備えている。それも使って、メグモの体を移動させ、奥の診察台に寝かせた。

 いまだ、メグモは全く動かないし、呼吸も鼓動もない。さりとて、「死んでいる」という感じでもない。

 ということは――。

「……やはり、これは、一種のロボットなのだろうな」

 柔曽は、そのように結論づけた。


 あの宇宙人が、メグモの電子データを母星へ持ち帰り、ロボットの体を作って、くっつけてくれたのではないか。

 理由としては、傷を手当てしたお礼だと解釈すれば、一応、つじつまは合う。

 ただ、仮にそうだとしても。

「いきなり故障して、動かなくなっては困るじゃないか。どういうことだ」

 柔曽は、つぶやいて苦笑する。

(……まあ、もう少し調べてみるしかあるまい)

 元・医師として、柔曽は冷静さも持ち合わせている。

「ごめんよ、メグモ。失礼して、構造を見させてもらうよ」

 謝ってから、柔曽は、メグモのワンピースのボタンを外し、脱がせていく。


 中は、白い下着であった。

 立体映像だった頃のメグモにも、「設定」として、下着は着させていた。その時のデザインが、忠実に再現されていて、柔曽は、何だか気まずいような、恥ずかしいような感じで、顔が熱くなった。

 レースに縁取ふちどられた、女の子っぽいショーツとブラジャーである。手触りは、綿めんとシルクの中間くらい。ワンピース同様、雨のため、湿っていた。

 ためらいつつも、下着も取り除く。

 診察台に、あお向けのメグモの裸身。柔曽は、注意深く観察する。


 胸のふくらみ、腰つきの丸みなど、女性らしい体型は、ちゃんと作られていた。肉体には弾力もある。でも、胸のてっぺんや、脚の付け根には何もなく、つるりとしていた。等身大の、ソフトなマネキン人形といった感じ。

 手足の関節には、かすかに、すき間から機械部品みたいな物がのぞけている。やはり、これはロボットに違いない。


 続いて、柔曽は、メグモの体内をスキャンしてみた。

 高性能なデジタル体内透視装置を使って、体の中をモニターしたのである。

 すると……。

「ゲーッ! なっ、なんじゃこれは!」

 柔曽は、びっくりして、床に座り込んでしまった。

 メグモの体内には、頭部、胴体、腕、つま先に至るまで、歯車がギッシリと敷き詰められていたのだ。歯車は大小さまざまで、指先に入っている物は、ミリサイズ未満だ。

 このロボットは、組んだ歯車だけで作られた、精巧な器械人形だったわけである。

 言うまでもなく、こんな物が、今の人類の文明で作れるはずはない。

 やはり、これは、例の魚に似た宇宙人たちが作ったのであろう。


 しかし。

「……じゃあ、どうやって動かすんだ? モーターも、電池も、一切ないみたいだし」

 幾ら調べても、メグモの体内には、何万か、それ以上の歯車しか見当たらないのだ。

 さっき会いに来た時は、確かに歩いていたし、しゃべっていたのに。

 どこかに、エネルギー源や、動力の中枢が、あるはずなのだが……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ