【第4話(全10回)】異星人と一泊
難手術を、見切り発車で強行してしまったが、何とか進めることが出来た。
医師を引退後も、柔曽は、医療機材の手入れや、自主的な学習を続けてきたからであろう。ほぼ、現役の頃に近いレベルの手術を行えたと言っていい。
さっきメグモが述べていたとおり、この宇宙人の体のつくりは、非常に独特ではあった。
とはいえ、傷ついていた箇所は、腹部の片側だ。ゆえに、もう片側を参考にすれば、元通りに縫合し、修復することには成功した。
人間用の麻酔が、ちゃんと効いたのもよかった。
治療が終わったら、ベッドに寝かせ、点滴などを施した。点滴の中身は、この生物の細胞、血液を分析し、合いそうな栄養剤を調合した。
見れば見るほど、不思議な生命体である。
手足の雰囲気は人間のようで、胴体は魚で、ドーム状の頭、三つ目。
先ほどまで苦しそうであったが、今は、落ち着いた寝息をたてている。何とか、最悪の事態は脱したのではないか。
ベッドの近くのソファーに、柔曽とメグモが、やや離れて座っている。
二人で、宇宙人を見守っているのだ。もう、すっかり真夜中であった。
「どこの星から来たんだろうね」
ぽつりと、メグモがつぶやいた。
「さあな。太陽系では、なさそうだけど。こんなのが住んでいたら、とっくに観測されてただろうし」
「なるほどねー。となると、遠い銀河系の彼方、なんてね」
ワンピースの膝にほおづえをついて、メグモが夢見る目つきをした。
メグモの大きな瞳と、視線が合う。妙にホッとする柔曽であった。難手術で緊張し、気が張り詰めていたのだろう。
「そうだな。何光年も離れた星かも。それほど遠くから地球まで来られるなら、きっと、とんでもない高度な文明だよな」
そんな、たわいもない会話をしているうちに、いつの間にか、柔曽はソファーでうつらうつらと眠りに落ちていた。疲れが出たに違いない。
ところが、明け方になって、柔曽は、メグモの声に起こされた。
メグモは機械であるため、たとえスリープモードに入っても、完全には眠らない。ずっと宇宙人を見ていたのだ。
「柔曽、起きて! 宇宙人が目を覚ましたみたい!」
「何!」
ソファーに座って眠っていた柔曽も、それを聞いて、飛び起きる。




