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【第3話(全10回)】宇宙人患者

 柔曽じゅうぞは、一旦、家に入って、医療用の手袋をはめてきた。口にはマスクも装着。

 次に、勇気を出して、謎の宇宙生物を抱え上げる。

 魚のような胴体に、ドーム状の頭部。腕と脚は、人間並みに長い。足と首の辺りへ、慎重に両手を差し入れる。

「!」

 重くはなかった。初老の柔曽にも、容易に持ち上げられた。

 生物の体格は、人間の児童ほどだ。だが、体重は、むしろそれより軽い。

 生物は、暴れなかった。やはり、あえいでいる様子だ。どこかを負傷しているのか。

 全身のウロコは濡れており、手袋を通して、その水気みずけと、ぬめりが伝わってきた。


 そのまま室内に戻り、ドアを閉め、廊下を歩く。かたわらのメグモが、

「大丈夫、柔曽? 私に実体があれば、手伝えるのだけど」

 結んだ黒髪と、白ワンピースのすそを揺らして、心配そうにたずねてくる。

「ん。何とかなりそうだ。手術室に運ぶから、作業中は、メグモは廊下で待っててくれ」

「はい」

 メグモは立ち止まって、素直にうなずいた。


 細かな作業に集中する時には、メグモを別室にとどめることが多い。

 立体映像であるメグモには、柔曽の医療行為を物理的に手伝うことは出来ない。そもそも、道具を持つことすら不可能だからだ。

 逆に、気が散るおそれもある。


 さて、宇宙生物を診察台に寝かせると、柔曽は体内を撮影した。

 結果、どうやら、腹の左側を傷つけているらしいことが分かった。外傷はなかったが、内臓をひどくいためている様子である。

(相手は地球外の生き物だ。軽率な判断は、よくないだろうけど。しかし、どうやら瀕死の状態だ。今すぐ、治療をしないと、手遅れになりかねん……)

 ここは、元・医師の経験と勘に頼るしかなかった。

 銀色のウロコに覆われた生物に、柔曽は麻酔をかけた。それから、一大決心をして、未知の手術を開始した。

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