【第2話(全10回)】地球外から
ドアの外にしゃがみ込む、謎の訪問者。
メグモが、背後の玄関口から、柔曽の肩越しにのぞき込んでいる。
「これ、地球上の生物じゃないよ」
メグモが言い切った。
柔曽が振り返り、
「何だって! じゃあ、宇宙人……」
「……だと思う。骨格が、地球上のあらゆる生物の系統と、全く一致してないの」
メグモは、立体映像にすぎない。しかし、高性能な人工知能であり、見た物を、膨大なデータ群と瞬時に照合できるのだ。
そのメグモが言うのだから、正確な分析であろう。
「きっ、危険性は……?」
柔曽は、自分の声が震えていることに気づいた。無理もない。こんな体験は、六十年以上の人生で初めてだ。
「とりあえずは平気そう。鋭い牙とかもないし、毒も持ってないみたいよ。体温も高過ぎず、低過ぎず、触っても大丈夫」
「そうか。直ちには危害を与えるものではない、と見ていいのかな。――というより、明らかに苦しんでるよな?」
訪問者の全身は、魚に似た銀色のウロコで覆われている。二本脚だが、立ち上がれず、あえいでいる。
ドーム状の顔には、とがった口があり、ゼエゼエと息を吐いていた。
メグモもうなずいて、
「うん、それは確かっぽい」
「――よし、運び込もう。手当てしてやろう」
柔曽の決断は早かった。
何せ、自分は引退した医師で、ここは元診療所。知識も設備も、一応はそろっているのだ。