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冬の向日葵  作者: トモ
1/1

01

朝から茹だるような暑さだが、今日から夏休みだ。

夏休みといえば、始まりの日から張り切って、知り合いのお店でアルバイトする事が、決まっているのだ。

10時までには到着しないといけない、後5分で到着しないと、、、、、。

「おははぁぁようはぁございます。」

やっと到着した、無事間に合ったようだ。

「初めまして、今日からお世話になります房子です、どうぞ宜しくお願いします。」

「あら、久しぶりね、こんなに綺麗になってびっくりしたわ。」

「おばさんも相変わらずお綺麗で。」

「まぁ挨拶はこのぐらいにして仕事の内容を教えていきましょうか。」

「宜しくお願いします。」

「まずは、、、、、、、。など撫で、今度はこっちのこれを、、、、、。」

こんな感じで朝が始まった。

「いらっしゃいませー。」

ここからはもう怒涛の人のなみだ。

「レバニラ定食ちょうだい。」

「はいレバニラ定食ですね、レバニラ一丁。」

「湊さんとこの子じゃないか今日からなの?」

「はい、宜しくお願いします。」

「可愛いねー!おじさん毎日来ちゃう!!」

ここは力仕事の客が多い定食屋だ、お昼時には一気に人が集まってくる。

会話もおぼつかないがそれでもみんな話しかけてくれる、なんだか楽しくなっちゃう。

そんな感じで仕事も終わりに近づいてきた時だ、

そういえばさっきから店の奥の方に男の子がいてこちらの様子を一生懸命伺っているようだった。

「お疲れ様ー、一息入れようか。」

「僕もいいかな。」

「おお修じゃねーか、今までどこ行ってたんだ。」

「しばらく厨房にいたよ気づかなかった?」

「おっ!そうだったっけぇ〜」

と言いながら健三さんがお茶の時間に入ってきた。

「それより湊さんとこの子どうよ」

「どうよって、よく動いてくれて明るくていい子みたいな気がするけど。」

「そうなんだよ、いい子なんだ!おじちゃんがもう10年若かったら嫁に欲しいところだね。」

健三さんはそう言いながら、私は聞いていて恥ずかしくなり。

「おじさん大袈裟すぎる。」

そう照れ隠しするのでした。

「そうそう、紹介が遅れたね、こちら修くんこの店の一人息子だよ。」

「初めまして。」

「こちらは湊さん家の娘さんの房子さん。」

「初めまして。」

なんか緊張するなぁー、初めて会うからかなぁー、うんそうだ初めてだからそうなんだ。

「あたし今日が初めてなんだ、なんか上手く働けてたかな、、、。」

「えっそそすか、良いいい感じだったと思いますよ。」

なんか焦ってしまうなんだこの感じは、、、、、。

「房子さんてゆうんだうん、僕は修。」

「きいた、宜しくお願いしますね。」

修くんかぁ〜あたしより年下よねぇ。

「いつもここにいるの?」

「たまたま」

「そうなんだ、じゃ今度いつ会えるかわからないんだね。」

「わかったらどうなの?」

「えっ?」

「今度会えるのいつなのか分かったらどうなの!」

「いや、その、、、、うん。」

「遊べる?」

「、、、、、うん、、、、、、、、、たぶん」

「じゃ、今度バイト終わりで遊ぼうよ」

「分かった、、、、、、、良いよ。」

「じゃまたあしたね。」

「じゃあ」

えーほんとに本当にあたしデートの約束しちゃった。。。。。

明日かぁーどうしよう、、、、、。

「ただいまー。」

「おかえり、どうだった幸田さん家。」

「うん、楽しかったよ色々。」

「なんかさいっぱい食べる人が多くて見てて爽快だったり、話し方が面白かったり、色々あってうん。」

「明日も楽しみ、でさ、明日今日よりは少し遅く帰るかもだけど大丈夫かな?」

「良いけど、なんかあった?」

「なんもないけど、友達ができそうなんだ。」

「そうか、それなら良いいよ、遊んでおいで。」

「ありがと。」

明日楽しみなのとちょっとだけ不安なのとなんか複雑な気持ちの中眠りについた。

「おはよう」

「今日もバイトだね、行ってらっしゃい。」

台所から母が話しかけてくる。

「行ってきます、楽しい1日になるよう頑張ってきます。」

私は朝食を食べて急いで準備を済ませ、焦りながら家を出た。

なんだかくすぐったい気持ちの中、考え事をするのを逸らすように、いつの間にか一生懸命走っていた。

やはり早めに到着してしまった、、、、、。

何して時間を潰そうかなぁ、それとももう入ってしまおうか?

そうこう考えているところに健三さんが入ってきた。

「おはようございます。」

「おっ!おはよう、今日は早いね。」

「なんか走ってきちゃって、急ぎすぎました。」

「まぁ早いことはいいことだ、中に入ろうか。」

そう言いながらつたつたと、一緒に中に入って行った。

厨房に入り奥の方へ進みタイムカードを押した。

そして仕事の準備を始める、掃除からまずやってしまおう。

掃除機をかけ、モップをかけていく、そして拭き掃除を手際良く済ませたら、今度は洗い場の洗い物だ。

なかなかに時間がかかり、気がつけばもう10時30分になっていた。

少しお茶の時間を入れて11時からの開店だ、なんだかちょっと緊張してきた。

健三さんの方も仕込みが終わったようだ、お茶に加わってきた。

「昨日は初めてで疲れたんじゃないかい、まぁ今日も昨日みたいな感じで頑張ってもらえると助かるな。」

「はい、一生懸命努めさせていただきます。」

「房子ちゃんは言葉遣いがとても丁寧だね。」

おばさんがそう話しかけてきた。

「そういえば巫女さんのバイトもしてたんだっけ。」

「はい、たまにいく程度ですが週に何度か通わせていただいています。」

「うちと合わせてじゃ大変じゃないかい?」

「でも、お金が必要なのでこのぐらいは頑張れます、頑張ります!」

そんな話をしていると今日もお客さんが入ってきた。

「焼き魚定食お願い!」

「はい!いらっしゃいませ〜。」

こんな感じで仕事が始まった、また楽しい1日の始まりだ。

気がつくともう2時前になっていた。

「いやぁ〜なんか昨日よりも多かったねぇ〜」

おばさんが話しながら近づいてきた。

「今日はもう上がっていいからね、洗い場の方人が間に合ってるから!」

そう言いながら手際良く片付けを終わらせていく流石だ。

「じゃあ、私は終わらせていただきますね。」

「はい、お疲れ様〜」

「お疲れ様でした〜。」

帰り支度を済ませると、外の方で修くんが待っていた。

「お疲れ様〜」

「あっ、どうも。」

「どっかで話でもしようか、近所の喫茶店でもいいかな?」

「あっ、はい。」

「じゃいこっか」

それから近所の喫茶店まで二人で歩いた。

「カランコロン」

「いらっしゃいませ空いてる席へどーぞ」

奥の席へ進んでいく。

「じゃあ、改めて初めまして、修といいます、宜しくお願いします。」

「初めまして、房子といいます、宜しくお願いします。」

「なんか緊張しますね、僕から誘っておいてなんですが。」

「はぁ」

私の勘違いでドキドキしていたら恥ずかしいのでこう返してみた。

「なんで突然お誘いしてきたんですか?」

「あなたとお話がしたかったんだ、昨日のお店で見かけた時にそう思ったんだ。」

なんか積極的な人だなぁ、

「はぁ、どうしてそう思ったの?」

「一目惚れってやつかもしれない。」

急にそう言われて頭の中が固まってしまった。

「そ、そう、なん、だ、、、、。」

「うん、今言っとかなきゃ絶対後悔すると思ったんだ、だから言った。」

なんてストレートにものを言う人なんだあはあ恥ずかしい、、、、、。

「なんて答えていいのかよくわからない、、、、、。」

「僕と付き合ってください、僕にお付き合いください!」

「はぁ、、、はい、、。」

なんかものすごい押しに押された勢いで答えてしまった、、、。

この日からオサムさんとの交際が始まった。

その3年後に、調理師学校を卒業したオサムさんが飲食店の経営を始めた。

それから4年経って結婚することが決まり、その1年後には赤ちゃんができた。

もう直ぐ臨月だ、お腹もだいぶ大きくなっている、中から蹴られる感覚が日毎大きくなりもう直ぐ赤ちゃんと出会える実感を噛み締めながら過ごしている。

どんな子が生まれてくるのか、楽しみでしょうがないと、修さんも誕生を待ち侘びている、幸せに満ちているのだ。

それから3日後、急に破水が始まった、まだ予定日の1ヶ月前だ、生まれてしまったその子は一回息が止まってしまったらしい。

それに未熟児で、保育器の中で1ヶ月は過ごさなくてはならない。

修さんはお祈りばかりを繰り返している。

こうして出産を終えた私は1ヶ月後赤ちゃんと一緒に退院することになった。

今考えると不思議なのだが、この子はあまり泣かない子だった、お腹が空いている時も、おむつの時も。

私は修さんが経営している飲食店の手伝いが忙しく、子供をあんまり見てやることができなかった。

実家の母たちに任せたのだ。

そうこう3年もの間あまり子供にも会わずにただただ忙しい日々を送っていた、お店の方もなんとか軌道に乗り子育てもそろそろできる余裕もできてきた。

実家に久しぶりに迎えにいくと桜は澄ました様子でこちらに歩み寄ってきた。

やっぱり長いこと実家に預けていたから私のことは覚えていないのね、、、、そう思わせるくらいに桜はすんとしていた。

毎日一緒に過ごすようになって2ヶ月ほど経った、未だ桜はすんとしたまま私から見ると可愛げというものがない。

しかし我が子だ、可愛い可愛い、そう自分に言い聞かせないといけないほどに、私の心は冷めていた。

二人目ができた、まだ1月だがちゃんとお腹の中にいる。

今度こそは一から私の手で育てて、愛情をたっぷり注いでやるのだ、そう心に誓っている。

修さんは桜が一命を取り留めたということもあって目の中に入れても痛くないというほどに桜のことをとても可愛がっている。

そんなところもあって少し私は桜に対する嫉妬心もあったのだろう、、、ますます可愛く思えなくなっているのだった。表面上の母親としては100点を挙げられるほどの接し方はしているが内面では私の中では、もう親子という感覚は冷え切っていた、、、、。

9ヶ月後私の元にまた新しい命がやって来た。

今度こそは失敗のない愛情の注ぎ方をしよう、もう私の中で桜のことは失敗という言葉の中に収まるほどの小さな存在になっていたのだ。

誕生したのは可愛い女の子だった、周りからはまた女の子かと言われながら、私の中では初めての女の子の赤ちゃんのように感じていた。

「おねいちゃん、いぅしょにあそぼ」

ひながそう言って桜に遊びを誘っている。

「うん」

そうは言っても反応が薄すぎてひなが引いているのがわかる。

「ママ、、、ママ、、ママ。」

ひながそう言って私の方によって来た。

毎回こんな調子だ、いい加減少し頭に来てしまう、同じ我が子なのにこんな感情を持つなんて母親失格だと言い聞かせながらひなをなだめる。

「授業参観が今度ある」

桜がそう言ってきた、私としては少し後ずさってしまうことだった。

なぜかこの頃もう我が子と心から思えるのは雛だけになってしまっていたのだ。

なぜかわからないがひなが可愛くて可愛くて仕方ないのだ、目の中に入れても痛くないと思えるほどに、離れたくないほどに。

「お母さん、今度桜の授業参観、私の代わりに行ってもらってもいいかしら」

「それはいいけど、どうしてもいけないのかい」

「うん、ごめん、お願いします。」

複雑な気持ちを噛み締めながら電話を切った、また今回も母に頼ってしまった。

「さくらちゃん久しぶり」

「おばあちゃん、来てくれてたんだ」

「そうだよ、よかったかい」

「うん、だってお母さんたちはお仕事で忙しくって誰も来てくれないと思ってたから、嬉しいな。」

「またうちに遊びにおいで」

「おばあちゃん家いってもいいの?」

「おいでおいで」

「お母さんに聞いてから必ず行くね」

こうして参観日は終わっていった。

「今日ねおばあちゃん来てくれてたんだ、お母さんが頼んでくれたんだってありがとう」

「よかったわね、ちゃんと来てくれて」

「今度はお母さんが来て欲しいなぁ絶対に!」

「ごめんねお母さんは仕事が忙しくて寂しい思いをさせてしまってごめんなさい」

こんな感じに切り返して私は本当にダメな母親だわ、、、、。

でももう自分に一杯一杯、、、、辛いのは私も同じなのわかって、、欲しい、、、。

こんな時こそ、ひなちゃんと遊ばなきゃ。

「ママ、ひな字が描けるようになったよ、自分の名前。」

と言いながらひなが幸田雛と書いて見せてくれる、これが私の癒しになっている。

ひなとの時間だけが私の癒しなのだ。

「お手伝いもしなさい」

桜が4年生になったこの年から家の手伝いをするように私は促した。

勉強もするように塾にも入れた、習い事もさせた。

親の心とは思い通りにいかないのが子の心なのか、見事に何も身につかないようだった。

よかったといえばお手伝いぐらいだった、とにかくよく働く本当に小学生なのだろうかと思うほどに。

今年で小学校も終わりだ、なんだか6年間あっという間だった、私は相変わらず仕事に忙しく子供達に構うことなく、桜の6年間は過ぎていった。

桜はいつの頃からか無口になっていた、誰とも話そうとしないのだ、中学に入ってそれがまたさらにひどくなっているようだった。

この頃から桜の心の声は次第に大きくなり、周りにも聞こえ始めるようになっていったのだ、本人だけがその事実を知らずに、、、、。

なんで毎日学校があるんだろう、行きたくないな、、、。

いっても自分の居場所なんてどこにもなくて、喋れるお友達もいない、仲良いと思っていた子はクラスが違うし、、、。

部活も毎日同じことの繰り返し、息も帰りもいつも一人、ほんとは寂しいのに友達の作り方がわからない、、、、。

周りの人はなぜか私を避けていく、なんで?

「いつも口ばっかりだな」

「毛深いんだよ」

「きら〜い」

声は漏れるだけでなく桜の耳にも届くのだった、何も言われていないのに言われたような感覚が常にあるのだ。

朝は静かなのだが帰宅時刻に近づくにつれその声は大きく強く入ってくるのだった。

桜はそれが普通だと思っていたのだずっとずっと中学を卒業するまでの間ずっと。

そして高校生になった。

新しい環境でとても楽しかった、けれども、なぜ自分がいじめられないのか不思議に思っていた。

みんな私が嫌な人間だって知ってるはずなのになんで虐めないんだろう、、、。

だったらお友達作っちゃおう。

「初めまして私桜です、お友達になってください。」

初めて自分からお友達になって欲しいなんて言葉に出してみた。

「あっ、私みさきですよろしくね。」

この時ほんとの友達が初めてできた気がしていた。

2年生になって修学旅行がもうすぐ迫っていた。

そんな時美咲が高校を辞めると言い始めたのだ、まあ別のグループの子が快く入れてくれたのでその件は落ち着いた。そしてみさきは学校を辞めてしまった。

私は友達というものに縁がないのかもしれないと思っていた。

でもみさきとはずっと仲が良かった、お互いが結婚するまでは、、、、、。

高校生活も終わり就職が決まった、京都の美容室だ、夏の間に決めていたのだ。

なぜかその京都ではリーダーっぽく扱われ、なんでいじめられっ子の私がリーダーなのかよく考えもせず1ヶ月ほど過ごした。

しかしこの頃付き合っていた彼氏が東京にいたため、遠距離に耐えきれなくなった桜はさっさと店を辞めるのだった、自分の将来のことなど何も考えられずに、そして3ヶ月後地元に帰るのだった。

地元に帰った桜は実家の手伝いを始めた、よく働いた、桜本人も実家がとても助かっているだろうと自負していた。

それからまた人伝で美容室に入った、今度は頑張れるかもと思っていたが、また好きな人ができた、社内恋愛禁止の会社だったのだが社内で恋愛してしまったのだ結局会社を辞めることになった。

そしてまた実家に戻った。

高校の時の一つ年下の友達と遊ぶようになった、仲のいい子だった、しかしその子の彼氏と結婚してしまった。

その人の間に子供もできた、男の子だ。

しかし性格の不一致から別れることになってしまった、そしてしばらくしてその彼が死んだ、交通事故だった。

母子家庭になってしまった私は実家にまた戻ってきてしまった、精一杯働くつもりだ。

そんな仲また彼氏ができた、7年付き合った、でも結婚まではいかなかった、そして別れた。

そのあとはちょっといいと思った人とも付き合ってみた、虚しかった。

もう30過ぎだこんなことやめようと思えた。

仕事にも精を出した、一生懸命働いた、自分なりに子供との時間も大切にしていたつもりだ。

そんなこんなであっという間に時間が過ぎた。













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