4 鍛冶屋ガノン
メメント森でのレベル上げも一通り終わり、そろそろ新しい装備を手に入れたくなってきた。
次の街「ウェスペル」にいる鍛冶屋ガノンに製作してもらおう。
ウェスペルは炭鉱の街として栄えており、昔ながらの職人気質な人が多い。
上級職でもウェスペルで装備を製作する人が多いくらい信頼を寄せられている。
ガノンは頑固親父でぶっきらぼうだが、このゲームを20年近くプレイしている俺にとって扱い方は容易いものだ。
各NPCには好感度というものが設定されており、好みのアイテムを大量に渡すことで信頼度が上がるようになっている。
ガノンは雑貨屋にある葉巻、清酒が好物だ。
雑貨屋でアイテムを購入し、鍛冶屋に向かう。
が、ガノンの姿が見当たらない。
こんなことはゲームをプレイしていて一度もなかった。
隣接する民家を覗いてみるとガノンの妻が家を掃除していた。
「すみません、ガノンはどちらに?」
「あらこんにちは。お客さんかしら? あの人イグニス山で山籠もりしてるのよ」
「鍛冶屋は辞めてしまったんですか?」
「サービス終了のニュースが出たじゃない? それで、これからは自分の好きなことやるんだって言って出て行っちゃったの」
なるほど、NPCが皆ルディのように職務を全うするとは限らないのか。
仕方ないので他の鍛冶屋に頼むとするか。
「出会ったばかりの方にこんなこと言うのもなんだけど、あの人の様子を見に行ってくれないかしら?」
『サブクエストが発生しました。』
ん? サブクエスト? サブクエストといえば、クリアすると大量の金貨・経験値が手に入るクエストである。
どの道イグニス山は経由地だし、引き受けるか。
「まぁありがとう。お店の武器、好きなの持っていっていいからね」
せっかくなので錬成中のドラゴンスピアを拝借させてもらおう。
錬成中ではあるもののドラゴンスピアは上級者武器なので戦力になるだろう。
待ってろよ頑固親父。