17 【メインストーリー第3章】増殖武器を破壊する簡単なお仕事
部屋に入ると、アウルムの剣が陳列されていた。
「こんなにいっぱいあると、最強の武器もチープに見えるな」
「せっかく実装されたのに、使われずに壊されるなんてかわいそうですわね」
増殖バグさえなければ今頃最強の武器として、もてはやされていただろうに。
「さ、それじゃ始めましょ」
フェレスがアウルムの剣からマナを吸収していく。
「終わったものから壊していっていいから」
「じゃ早速ハンマーで砕いてみるか」
ハンマーを振りかぶってアウルムの剣を叩いた。
ちょっとヒビが入った。
「これは…長丁場になりそうですわね」
さすがに一振りでは壊れなかったか。
何度か叩いてようやく砕け散った。
ざっと 10 秒ほどだろうか。
「このペースだと 1 日と 4 時間ね」
「それって休憩時間入ってる?」
「入ってないわ」
「鬼か!」
ひたすらアウルムの剣を叩いていく。
転生前はデスクワークだったため、こんな重労働をするのは初めてだ。
力仕事をしている人々への感謝の気持ちが込み上げてきた。
2 時間ほど経っただろうか。
フェレスは既にマナを吸収し終えて、ルーナ姫とお茶会を楽しんでいる。
「俺も何か食べていいか?」
「しょうがないわね。好きなの選びなさい」
「フェレス様のお菓子、絶品ですわよ♡」
甘いものが身体に染み渡る。
さぁもうひと踏ん張りするか。
半日ほど経ったところで、身体が限界を迎えてしまった。
ルーナ姫とフェレスは寄り添ってうたた寝している。
1 つのハンマーしかくれなかった GM、10,000 本の増殖された武器、疲れ切った身体。
いろんなことが積もりに積もって、感情が爆発してしまった。
「もう何なんだよ~~~!!」
その時、ハンマーが光り輝き、次々とアウルムの剣が壊れ始めた。
「どうしたんですの!?」
光に気づき、ルーナ姫とフェレスが飛び起きる。
「いきなりハンマーが光って…」
「覚醒したのかもね」
「覚醒? どういうことだ?」
「さぁ。でも全部壊れてよかったじゃない」
「それもそうですわ♡ 冒険者様、お疲れさまでした」
よく分からないが、なんとかミッションをクリアしたようだ。
GMのところへ報告に行こう。