1 サービス終了のお知らせ
「この度、『ファンタジーテイル』は、誠に勝手ながら2025年10月31日(金)17:00をもちまして、サービスを終了させていただくこととなりました。」
ついにこの日が来てしまった。
いつかくるだろうと思ってビクビクしながらプレイしていたが、いざ目の当たりにするとこんなに放心してしまうものなのか。
俺がファンタジーテイルと出会ったのは20年前の中学生の時。
CMを見た友達と一緒にプレイしたのが始まりだった。
友達は早々に引退してしまったが、俺は何とか今まで細々とプレイしていた。
他のゲームをプレイしたり、受験で休止したりもしたが、やり続けていた理由として、ゲーム内フレンドの存在が大きい。
彼らとチャットするためにインしていたと言っても過言ではない。
ニュースを読み終えた俺は早速ゲームを起動した。
「やまさん!!ニュース見た!?」
起動するなりフレンドの粉雪からチャットがきた。
「見た見た、とうとう来たかって感じ」
「ねー、やっぱ過疎には勝てんわなぁ」
粉雪とは中学生の時からのフレンドで、唯一オフ会もしたことがある。
お互い年齢も近く、すぐに意気投合し、現在に至るまでゲーム内で近況を報告するのが日課となっていた。
「ギルドのみんなと別ゲーに移住する?」
「あとで聞いてみるわ。まだ二ヶ月近くあるしな」
「それもそだな。頼んだぞ団長!」
俺はギルドの団長である。
ギルド名は「やまだん」。
俺のプレイヤーネーム「やまだのおろち」から由来している。
本名の山田から取った安直な名前だが、案外気に入っている。
結局この日はギルドメンバー数人と寂しさを分かち合ってからログアウトした。
まさかこのあとゲームに転生するとは思いもよらずに。