1話
夜もすがら。
闊歩するのは人か。それとも魍魎か。
黄昏と共に現れ、暁と共に消える。
―
『おはようからこんばんはまでは、暁。こんばんはからおはようまでは、夜多乃鴉の仕事だ』
お偉いさんの話はいつも長い。
昔話に花を咲かせるのはお家でやって欲しいものだ。
欠伸を一つすると後から小突かれる。
「バカ、集中しろ」
「へいへい」
背筋を伸ばし、お偉いさんの顔を見る。
お偉いさんは笑っていた。
―
『ということで配属先の選択をしてもらう。好きな方を選んでくれて構わない』
「虚はどっちにするの?」
虚「どっちでもいいだろ、初はどっちにするんだ」
初「私は暁かな。朝の方が楽だし」
虚「なら俺も暁にすっかな。起こしてもらえるだろうし」
―
『10人中7人は暁、3人は夜多乃鴉。暁志望のものは隣の部屋に移動しろ』
雑踏が消え、残った3人。
虚「なぁ…なんでお前いるんだ?」
初「はっ!虚の考えなんてわかりきっているからね!どうせ私の反対を行こうと思って夜多に行こうとしたけどそれなら暁にすれば良くね?って思うだろうから夜多にしようってしたんでしょ?」
虚「人の頭を読む能力でも持ってんのかよ。大体一言一句間違いねぇよ」
初「どうせ一緒になることも織り込み済みでしょ」
虚「最初から言っただろ。起こしてもらうためだ」
初「女子は男子寮には入れないよ」
虚「…マジ?」
初「マジ」
―
初「ねぇ、彼の子ずっと空を見ているけど何してるのかな」
虚「何もしてないだろ」
「ね、何してるんだろうね」
虚「急に後ろに立つのやめてもらえませんか」