閑話 女神たちのテルメ その一 【祝1,000PV感謝】
2024.2
すべてのシーンにおいて加筆・修正しました。
「ちょお! ちょお! ちょおおお!!」
あかんて!
あいつ、転生してもうたやんけ。
ちょい待て言うとんのに、なんで行くねんて!
ワシの言うこと聞けや!
偶然――ちゅうか、完璧にワシのミスで、こっちの世界に呼び込んでしもうた、あの日本とか言う異世界のガキ。
ちょっと、あいつの記憶を覗いて、このけったいなしゃべり方する、あいつのいっちゃん苦手なBBAをマネてみたんやけど、いやもう見事に失敗してもたわ。
え? なんかワシ間違うとる?
いい感じであいつビビらせたんちゃうの。
やのに失敗やなんて、なんか誰かズルしとうへんか。
ついでにワシのミスもバレてもうたし、最悪やん。
まあ? 許してくれたんは――ちょい嬉しいけど。
いや、それが間違いやったんや。
もーあかん。ワシまた降格や。
まさか、あいつに渡したダーツが、あんなとこ刺さるとか知らんやん。
変な情出さんと、そのままあっちの世界に、送りこんだったら良かったねん。
いやいや。
今、思ても信じられへんし。
普通ないで? あんなアンラッキーとか。
ホンマ、なんやねん、あいつ。
変なとこで、余計な運とか出すなや!
いま、ホンマにワシのせいちゃうで?
あれはあいつが悪いんや。
別にワシがあいつの世界に、漆黒の闇出してもうたからとちゃうからな?
――
――
いや、ごめん、あれが原因やわ。
ちょい、嘘ついた。
でも、しゃーないやん。
世界神さまが、急にあんなん、ワシに担当させるからやで?
そうやん、世界神さまのせいにしとこ。
て感じに、ワシがいつもみたいに、他人に責任なすりつけようとしとった時。
この真っ白い部屋に、突然扉が出て来たと思たら、その扉が音もなく開いて、ワシよりちょっとスタイルの良え女が入って来よった。
「なあに、ノア。あんた、またこの部屋で悪さしてたの?」
見るからに、わて美人でっせーってな態度で、ワシをイジる女。
こいつは別の世界――まあ、他にもいろんな世界あるねんけど、そこの担当女神の、ホロっちゅう、腐れ縁のダチや。
そいつがワシの顔見るなり、悪さとか言いよったし。
絶対、あとでシバいちゃる。
まあ、なんちゅうーても、こいつ、ワシのことをやたらと面倒見たがる、ちょっとうっとおしい奴なんやけど、そないに悪い奴やないことは認める。
そんな女神ホロが、ワシのところに来たってことは、例のあれか。
てか、ホンマ、めんどいわあ。
「ほら。みんなもう集まってるから。あんたも早く来なさいな」
呆れ気味の女神ホロは、そう言うて、いきなしワシの手を無理やり引っ張りよった。
てか、お前、ごっつ力強いから、めっちゃ痛いねんて!
それ女神の握力やなくて、破壊神とかやん!
この前もワシの腕、バキバキに折ったやろうが、ちょお加減せえや!
ちゅーか、無視すんなや!
痛っ! いや、痛いって! ごめ! てか聞けや!!
結局、女神ホロのアホが、ワシをこの部屋から、無理やり連れて行きよった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おーやっと来たか。お前たち、遅いぞ!」
湯けむりのなか、豪快な態度で手え振る女神。
こいつも別の世界の担当しとる、ヘラって女神や。
ワシより胸も尻もデカい上に、態度もデカい。
うわ、ヘラの他に4人も女神、集まっとるし、なんやねん今日。
岩の上で寝そべっとる奴や、ぷかぷか湯船に浮かんでる奴。
各々、丸出しで好き勝手にくつろいどる。
「ホンマ、お前ら、テルメ好っきゃな……」
思わず、皮肉言うてもた。
ええねん。こいつら下手したら、丸一日でも風呂浸かっとる、アホばっかやし。
暇さえあれば、すぐワシまで湯に浸からせようとすっからな。
手ぇシワシワになるっちゅーねん。
ここは女神たちが、ようつるんで入る、テルメっちゅー温泉郷や。
別にワシもそないに、風呂嫌いちゅうわけやないけど、こいつらほどやない。
いやもう、かれこれ5億年くらい? テルメにハマっとるんとちゃうかな、こいつら。
「おい、なんだ、ノア下級神。その話し方、どこで覚えて来たんだ?」
あちゃあ、しもた。
今までとちゃうしゃべり方になっとるの、すっかり忘れとったわ。
こんなん、ワシをイジりたい女神ヘラからしたら、めっちゃおいしいネタやんけ。
湯船から潮吹いたみたいに、豪快に立っちょる女神ヘラ。
いや、そんな目の前で立ったら、お前の自慢のおっぱいやらなんやら、丸見えやん。
女のワシでも、恥ずかしくなるっちゅーねん。
あと、こいつワザとワシのこと、下級神て呼びよるねん。
ワシかてつい最近まで、上級女神やっとったやろが!
しゃあないやろ、あんなミスしてもうたんやし。
あれやったら、お前らでも降格させられるっちゅーねん!
ホンマ業わくでこいつ。
「あーちょっとな」
「フン。相変わらず無口な奴だ」
まあ、いつもやけど、ワシすぐ調子乗って、いらんことしゃべってまうから、極力さっきの部屋以外では、しゃべらんようにしとる。遮断されとって、なに話しても大丈夫なんやけど、ここで話したことは、ぜーんぶ世界神さまに筒抜けになってまう。
あの部屋だけは、この神の世界――神界と遮断されとって、なに話しても大丈夫なんやけど、ここで話したことは、ぜーんぶ世界神さまに筒抜けになってます。
ワシ、これ以上、降格したないからな。
やから、ここではずっと無口で通しとる。
「あら。白の部屋からここまで、静かだと思ったら、そんな話し方に変わってたのね」
隣で湯船に浸かっとる、女神ホロまで食いついてきよるし。
いや、これ見よがしに、ワシの真横で、おっぱい、ぷるんぷるん揺らすなて。
ホラ見てみ、お前の揺れと女神ヘラの揺れで、テルメ内に変な共振、起きとるやないか。
たまにそれで、別の世界いくつも壊しとるんやし、ええ加減にしとけって。
女神ホロも女神ヘラといっしょで、いろいろデカい。
ワシも自慢やないけど、スタイルには、まあまあ自信あるんやで?
そやけどこいつら、さらにその上を行きよるからタチ悪い。
まあ、ずっとテルメに入り浸ってんのも、他の女神にそこ自慢したいだけなんやろうけど。
元々、女神っちゅー奴らは、そういう美意識過剰な連中ばっかやし、仕方ないっちゅーたら、仕方ないんやけど、ちったあ、仕事せえっちゅーねん。
あ、ワシはノーカンで頼むわ。下級神やし。
「白の部屋? またノア下級神が、なにか問題でも起こしたか」
うぉい! 女神ヘラ!
お前、エスパーか!?
いや、こいつ女神やった。
鋭いとこ突きよんな、こいつ。
なんでわかんねんて。
あかんて。
こいつら、あれバレたら、すぐ世界神さまにチクりよるわ。
絶対バレるわけにいかん。
口、チャックや、チャック。
「なんでもないわ。ワシはいつも良い子ちゃんや」
「フン。あんな問題を起こしながら、よく言えたものだな」
まーた、昔のことを掘り返しやがって。
女神ヘラはことあるごとに、ワシの古傷をイジってくる。
そのミスでワシ降格させられてもうたし、もう放っといてくれ。
これ以上降格したら、ワシ人間からやり直しやんけ。
「その話はもうええねん」
これ以上、近くにいたらボロが出る。
ワシは黙ったまま、隣の風呂に移った。
――
――
いや、なんでついて来るねん、お前ら!
ワシがひとり静かに、さっきの反省しよかと思ってんのに、なんやねん。
さっきの風呂に入っとった奴らが、全員ワシのとこへ来よった。
そのまま女神ホロが、ワシの背中にぴたーっとくっついてきて、うっといから文句言うた。
「だって、あんたの肌にくっつくと、気持ち良いし」
「いや、ホロ近いって! 先っちょ背中に当たっとるしっ!」
「はあー最高ー」
「聞けや!!」
こいつどんだけ自由神やねん。
女神のくせに他人の話、一切聞かへん。
まあ、女神はもともとこんなんばっかやった。
こいつだけが、特別ってわけでもない。
まあ、いっちゃん聞かん奴やけど。
「そういや、この神界から、男神がいなくなり、ずいぶんと久しいな。せっかくの美体が泣くってものだ」
なんか、また女神ヘラが、昔話とかしだしたで。
こいつ、年中、懐古厨やな。
もうあれから、どんだけ、年月経っとるっちゅうねん。
見た目が若こうても、おんなじ話ばっかするところは、やっぱ年寄り臭い。
その話、もう何万回聞いたか忘れたわ。
そないに男神が恋しいんやったら、そいつらを追い出した、世界神さまに直接文句言えっちゅーねん。
まあ、確かに昔はこの神界にも、男神と女神が一緒に住んどった時期はあった。
当時の世界神がまあ、そらあー男尊女卑が、きっついオッサンやった。
ホンマにセクハラや暴言吐いたりする、うっとい奴やったわ。
んで、それにぶちギレたんが、今の世界神さまや。
当時の世界神さまや、男神やらと大喧嘩おこしよった。
しまいには、この神界から男神全員、追い出してもたっちゅうわけ。
今代の世界神さまは、ワシらとおんなじ女神や。
ここだけの話、全男神リストラは、ちぃとやり過ぎや。
そりゃ気持ちは、わからんでもないけど。
エロい奴、めっちゃ多かったし。
せやから、今もこうやって女神ヘラを始め、男神とイチャイチャしてた連中は、世界神さまのことを間接的に非難しよる。
女神は男神がおらんと、張り合いないさかいな。
なにごとも、バランスっちゅーもんが大事や。
そう言えば、あの転生したガキ。
ワシの初恋の男神にちょっと似とったな。
まあ、今は転生して、顔も変わっとるやろうけど。
てか、そんなん、別にどうでもええわ。
「そう言えば、さっきノアの居た部屋に入ったら、ちょっと人族の匂いがしたけど」
え?
いや、女神ホロさん、ちょっと早過ぎひんか。
ワシそんな匂い知らんで?
いや、あいつが男やから、すぐわかったとか?
あ、そうやこいつ、神一倍、鼻がええんで有名やった。
終わった。
ワシ終わってもた。
「ノア下級神。やはりお前、ナニかやらかしたな」
ホラ見てみぃ!
女神ヘラまで、喰いついて来よったやんけ!
うわ! 他の女神まで寄って来よった!
お前らこっち来んなて!
あとでちゃんと名前紹介したるから!
「ほら、正直に話しなさいよ。何があったの?」
「知らん……」
あかん。
女神の前では、嘘つけんのやった。
無理やん、ワシ。
もう、あいつのせいや。
ホンマ業わくで、あのガキ。
ワシの周りに寄ってたかる女神連中。
いや、ワザと顔に、胸当てに来よるやろ、お前ら!
ぷるんぷるん、うっといねん!
あくまで黙秘なワシ。
そん時、テルメの入り口がガラガラと音立てて、開きよった。
女神らもそっちに気付いて、キャアキャアやかましい。
こんだけこいつらが騒いどる理由は――
「「せ、世界神さまあ!!」」
嗚呼、もうあかんわ。
世界神さま、来てもたし、ワシ終わった――
――って、ワシのピンチ、次回に続くんかいっ!
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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