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閑話    女神たちのテルメ その三 【祝10,000PV感謝】



「うむ。堪能した」


 恍惚な表情で湯に浸かる世界神さま。

 ぷかぷかと湯船に浮かぶおっぱいから、珠のように弾けた水滴が肌を滑り落ちていく。そんなツルツルなん、アンタか新車のフロントガラスくらいやで。ほんのり上気した顔は、さぞかしお楽しみでしたんでしょうなあ。


 洗い場では未だに立ち上がれん女神たちが、舌出してのびとるし。あの人数の女神を果てさせるってアンタ化け物か。てか、世界神さま。洗い場でのお楽しみあとに火照った身体を、さらに熱い湯で火照らす必要はないんちゃうか?


 明らかにワシ目当てで湯船に戻ってきたであろう世界神さまは、端の方で縮こまっとるワシの隣にわざわざ浸かりに来よった。いやワシ、どノーマールやて言うてるやん。かれこれ五千年ほど前からワシのこと狙ってるのは知っとったけど、嫌なもんは嫌やし。ワシは男がええねん。


「――!」


 あれ? なんで今、あのガキの顔が浮かぶねん。

 ちゃうちゃうちゃう! ワシはべ、別にあいつのことなんか何も思てへんしっ! たまたま久しぶりに見た男がアレやっちゅーだけで、別に好きとかそういうんやないからな。男神らの顔なんてもう何億年も見てへんから、顔なんか忘れてもたわ。せ、せやから、思い出せる男の顔がアレやったってことや。別に普通やん。へ、平常運転ってやつや。



 あいつ……元気にしとるんかな。



 って、うおーい! ワシっ! おいワシっ!

 なんで今、ちょい黄昏れたねんっ!

 ちゃうやろ! ワシ!

 あいつは人間! ワシは神!

 見た目はおんなじでも、相容れぬ存在同士や!

 ちょっと優しい笑顔見せたからって、ワシがホレたなんて思うなよ? ワシはそんなチョロい女やないねん。お堅~い女なんや! 鰹節くらいカチンカチンやねんからなっ!


「お前はさっきから何をソワソワしているのだ」

「えっ?」


 あかん。

 世界神さまが隣におるの、すっかり忘れとった。

 これも全部あいつのせいや。ホンマ最悪やわ。

 いつか、あいつに文句、言いに行かなあかん。

 絶対や。今、決めたった。


「な、なんでもないです」

「そうか。それなら良いが、ノア」


「は、はいっ」

「お前、何か私に隠していることはないか」


 ぎゃああああ。

 バ、バレた? バレたもたんか?

 ワシ、そんな顔に出てたんか?

 降格か? ワシまた落とされるんか?

 イヤや。そんなんイヤやあああ。


 湯船が波立つくらいにワシが震えとると、世界神さまにそっと肩を抱き寄せられた。あかん。食われるっ! そう思た瞬間、彼女がワシの耳でそっとささやいた。


「私は別にお前を嫌っているわけではない。ただ、お前が私に優しくないのでな。つい、いろいろと意地悪をしたくなるのだ」

「は、はあ……」


 よ、良かった。バレてへん。

 てか、世界神さま、どさくさに紛れて、ワシのおっぱい揉むのやめてや。ワシはそっと彼女の手を退けて、距離を保つことにした。いや、そんな悲しい顔されても。


「ただ、下級神へと落としたのは例外だ。あれは仕方のないことだったのでな」

「……」


 ふと、あのときのことが頭を過った。

 勇者や他の仲間たち。魔神。嫌な思い出。

 世界神さまの判断に間違いなんてあらへん。

 悪いのはワシ。あの時の弱かったワシ。


「ところで、ちょっと聞きたいのだが……」

「はあ。なんでしょうか」


 落ち込むワシに問いかける世界神さま。

 つい、普通に返事を返してもたワシ。


「先日、私が日本に行ったときに通ったゲートなんだが、ノア。お前そこに何かやらかさなかったか?」

「……え?」


 ワシの時間が止まった。

 バレてたやん。

 湯船にボタボタとこぼれる大量の冷や汗。

 あかん。ワシ今度こそあかんて。

 もう隠し通せんと覚悟を決めたとき、


「世界神さまあ~こんなとこに、いらっしゃったんですかあ~」

「――!?」


 急に聞こえた女神の甘だるい声。

 目の前に立っとるのは、ホロの妹神(まいしん)、ヒレとハレ。

 姉神(ししん)たちはまだダウンしとるけど、若いこいつらは回復も早いみたいや。ワシと世界神さまを見つけたこいつらは、空気も読まずに凸ってきよった。普段ならうっとおしいこいつらの行動も、絶体絶命やった今は女神に見える。いや、女神やけども。


「なんで世界神さまとノアちんが一緒にいるのよぉ!」


 妹神のひとり、雷を司るおっとり女神ヒレが、間延びした声でワシに嫉妬する。いや、ビリビリと雷散らしながらこっち来んなて。さっき電撃をワシの足元に飛ばしたのもこいつや。見た目としゃべりがおっとりしてるだけで、実は腹黒いうえに嫉妬深い女。ワシが世界神さまに気に入られてるのが気に食わんようで、こうやってワシにちょっかいかけて来よる。


「そりゃあノアっちがまたなんかやらかして、世界神さまにお小言もらってるんでしょうが」

「くっ!」


 相対して、的確な状況判断をするのは、炎を司るチャキチャキ女神ハレ。一番末っ子やけど、優秀な女神の彼女は、ワシとも仲が良いが、口は達者。年上のワシを敬うこともせんで、姉のホロと一緒に好き放題に言いよる優等生タイプの女神や。根が正直者なんで、悪気はないんやろうけど、たまに彼女のキツい言葉で夜な夜な枕を濡らすワシ。


 ちなみにこの二人の妹神らは双子で、顔も体もおんなじやから、たまにワシも間違うことがあるくらいソックリや。しかも双子のくせにめっちゃ仲が悪いから、今は世界神さまの手前、仲良うしとるけど、どうせすぐにケンカするやろうとワシは睨んどる。


「ノアちんちょっと、どいてよぉ」

「いたっ!」


 ヒレがワシと世界神さまのあいだにデカいケツを押し込んで来よった。そのケツに弾き飛ばされた拍子に岩肌に頭を打ったワシ。あとで見とれよヒレ。


「あーヒレずるいっ! そこはアタシが座るんだって!」

「あいたっ!」


 ただでさえ狭いところにヒレが割り込んで来て、そこにさらにハレのケツが飛んで来よった。またもワシは端に追いやられて頭を打ってまうし最悪や。こいつらあとでふたりまとめて、ワシの必殺電気あんまを喰らわせたる! 


 ドタバタと暴れ出すヒレとハレ。

 世界神さまも見慣れてる光景やから、呆れて物も言わんし。しまいには隅に逃げとったワシの目の前で取っ組み合いのけんかをし始めてもうた。こらヒレ! わざとワシに電撃飛ばすなっ!


 ヒレの電撃で戦況が厳しくなったハレが、上空に飛び上がると、一気にワシの隣におるヒレ目がけてキックをお見舞いする。すんでのところで避けるヒレ。そやけど湯船のお湯が思いっきりしぶき上げてもうたから、ワシや世界神さまはえらい迷惑や。


「お前たち、いい加減止めないか」

「「ご、ごめんなさーい。世界神さま~ん」」


 とうとう堪忍袋の切れた世界神さまが、ふたりのケンカを仲裁した。あわてて謝罪する双子姉妹。双子やから声もよう揃うとる。いやあ~やっぱ誰かが自分の代わりに怒られてるのんて最高やな。今日は良え夢見れそうや。てか、こいつら怒られて喜んどるし……。


 ようやくゆっくりと湯船に浸かれると思った矢先、ワシの耳になにやら、よからぬ音が聞こえてきよった。なんて表現したらええんやろ……。それはトイレの水が流れたような、洗濯機の排水を流した音のような、そんな水が流れるような音や。ま、まさか――


「ひやああ!!」

「「あーノアが流されてるーっ!!」」


 ワシの悲鳴と双子の妙に嬉しそうな叫び声。

 渦巻く水流に巻き込まれたワシはどんどん中心へと流されて行く。湯船のお湯はあっという間に減り、底に穴が空いてるとしか思えんほどの大量のお湯が中心の方へと吸い込まれてる状況。てか、ワシ漫画みたいに渦に巻き込まれてるやんけっ! そしてぐるぐると流された結果、中心の穴に栓をするようにしてワシがすっぽりとハマってしまったところで。流れはようやく止まった。


「いや、ウソやろ……」


 ワシが栓になったおかげで、お湯の放出が止まったのはええんやけど、最悪な事態になってもた。お湯はほとんど流れ出て、周りの奴らも含め、ワシもすっぽんぽん。そして穴を塞ぐのはワシの片方のおっぱい。いや、抜けへんのやけどこれ。


「わーノアちん、なんかエロ~い!」

「ノアっち、ごめーん! それアタシのせいかなあ。そー言えば、さっきのキック、けっこう床にめり込んだかも~へへへ」


「私は湯冷めするので、先にあがるぞ」


 それぞれが無責任な発言をしとるなか、片ぱいを栓代わりにされたワシ。これどうするねんて。



 えっ! この状態のままで次回に続くん?





 

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。



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