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第百四話  夢見る乙女  ― 戦士と少女編 4 ―



「……無事か」


 明け方、山あいを越えた街道の端に、見覚えのある荷馬車を見つける。馬はすでに解放され、近くの木の下で体を休めている。あれだけの距離を走り続け、よく死ななかったモノだと感心する。


 野営地から連れて来た馬どもは、あの距離でもうへばっているというのに。エイミーは馬の目利きも出来るようだ。逆にそっちの道の方が才能があるのかもしれない。馬車使いの能力はあるが、フリーでやるには商売の才能がなさすぎる。


 街道から外れた場所は短い草の生えた平原で、通りからは丸見えだ。しかし周囲にも同じような野営中の団体は多く、ここが比較的安全な区域であると察する。


 すでにこの辺りはアフェトン領なのだが、国家間の取り決めにより不正出国者(イグザール)の追跡と捕獲だけは認められている。ただしそれは相手国の街に入るまでの間だ。他国の街に入った瞬間、それは亡命扱いとなり、追う側からは一切手出しが出来なくなる。


 アフェトン領で一番近い街はトロンだ。

 この街道の先にあるが、あまり大きくはない。長閑な牧草地帯が広がる村レベルの規模らしい。それでも街は街。相手側の街で戦闘行為をすれば、それは戦争へと繋がっていく。ただでさえ獣人は人族を嫌っているし、そのきっかけを求めている節もある。ソフィーの家族を見つけるという目的がなければ、あまり近寄りたくない国だ。


 だが、すでに雲行きは怪しいかもしれない。

 ベナトゥレス王国の陥落はすでに隣国へと伝わっているはず。それに便乗した王国の国境での虐殺行為。下手をすれば俺たちは人族というだけで、アフェトン国側に捕えられるかもしれない。


「追手がすげ替わるだけか」


 適当に馬たちを荷馬車へとつなぎ止める。

 荷台には泥のように眠るふたりの女。えらく無防備だなと思いつつ、荷台に手をかけると防犯用のトラップが発動する。ピリッと指先に刺激が走り、そこから血が流れた。


 ちゃんと防衛も考えていたようだ。

 エイミーの馬車使いとしての能力は見事なモノだ。昨夜の襲撃でソフィーを彼女に任せたのは間違いではなかった。それだけに彼女の残念な部分が惜しくもある。


「起きろ。出発するぞ」

「ひゃうっ!? あ! アハトさん!」


「防犯用のトラップは見事だが、威力が弱すぎる。強引に入られたら終わりだ。それに二度目がない――」

「ん……」


 エイミーのトラップは二度目の防衛がない。

 感知式で、一度敵を察知すると雷属性のダメージを与える。だが、彼女の優しさゆえか設定ダメージが小さい。こうして他の野営集団がいるからと、多少安心している部分があるのはわかるが、その集団も油断してはならないことを教える。その最中に物音でソフィーが目覚めたようだ。


「ア、アハトさん! あなた……!!」


 起きて早々俺に詰め寄るソフィー。

 きっと昨日の俺を非難するつもりだろう。そんな彼女を無視し、エイミーに出発の指示を出す。


「わあ! こんな良い馬をもらっていいんですか!?」

「あの馬に比べるとまだまだだが、少しは負担が減るだろう」


「ありがとうございます!」


 五頭の馬に歓喜するエイミー。

 彼女は荷馬車から飛び降り、馬たちに駆け寄っていく。そして小さなナイフを取り出すと、いきなり自分の手のひらを切り、呪文を唱え出した。


「馬車使いエイミーの名において、お前たちに命ず。この世界の道はすべてお前たちの前に広がっている。我を信じ、我を助け、その恩恵として我のチカラを受け、我の僕となれ。恐れるべからず。我とお前たちは共に生きる友である。アニアクチュア・ベテルボルナ・ヌーレイ・ドナガ!!」

「――!」


 唱え終えたエイミーと馬たちが光に包まれる。

 手から血を滲ませた時点で、契約の類だとわかったが、馬にもステータス画面があるのだと、このとき初めて知った。それが各馬に浮かび上がり、発光する彼女がナイフで傷付けた自分の手のひらをそれに当てていく。血を媒体とする契約風景を見ると、奴隷ディーラーたちの【奴隷契約】を思い出す。


 この世界はとにかく血を流すことが好きだな。


 そう感じたとき、馬たちがそれぞれ(いなな)きだす。そしてそのひと鳴きと同時に光がパッと散った。



 契約は完了したようだ。



 光り輝く馬たちは平常に戻ったが、その代わり、あれだけ疲れていた馬たちに、生気がみなぎっていた。馬車使いと契約すると、奴らの体力が底上げされるのだろうか。そうだとすればなんとも便利なスキルだ。


「ふう。久しぶりにこんなにもたくさんの馬たちと【人馬契約】を結びました」


 持っていた布切れで、手のひらの傷を押さえるエイミーが言った。馬たちに寄り添われる彼女。何頭かに髪の毛をくわえられているところを見ると、全頭が彼女にひれ伏したようだ。いや、ひれ伏してはいないか。


「俺が知っている御者ギルドの連中は、そんな契約はしていなかったが」

「はい。別に絶対契約しないとイケない決まりはないんです。基本ギルドに所属しているときは、お客さまが用意した荷馬車か、ギルドの荷馬車しか使えないので。契約しなくとも、パッシブスキルの恩恵は、手綱を握れば馬たちも受けますし、今の若いフリーの御者たちはこの【人馬契約】自体あまり知りません。まあこれは、私の一族のこだわりですかねー」


「こだわり?」

「はあ。実は私の一族は代々馬に舐められやすいというか、同等だと思われちゃうんです。だから、契約しないと、ちゃんと言うことを聞いてくれないというか……あはは」


 納得した。先ほど馬たちがエイミーに戯れていたのは、その部分が強いためか。契約してもそんな風だと、しない場合は仕事にならないのだろう。


「でも代わりに良いこともあるんですよ。絆の深まりが早くなったり、スキルやパッシブの効果が倍になったりと、お得な部分が多いんです」


 馬たちの回復の早さは、そこに関係するようだ。たしかに【激走】の効果も他の御者より速かった。馬車使いのくせに馬に舐められる体質とは皮肉なモノだが、得る恩恵の質を考えると、エイミーのこだわりは特に悪いことではない。


「エイミーさんもご苦労なさっているのですね。私たち一族も似たような境遇なので、共感いたしますわ」

「「似たような境遇?」」


 俺たちの会話を側で聞いていたソフィーが突然口を挟む。その言葉のなかに引っかかるモノがあったため、俺とエイミーが反応した。ソフィーは少し困った風な表情で、その引っかかる部分を明かす。


「どうしてそうなるのか不思議なんですけれど、私たち一族は昔からいろいろと、大きな事件などに巻き込まれてしまうのです。それと、ほんの些細な厄介ごとも日常的に」

「「はあ!?」」


 軽く打ち明けるソフィーに俺たちは絶望する。それもそのはず、今までに思い当たる節はいくらでもあったからだ。砦を通過するときの偶然とは思えないあの事故や、あれだけ念入りに追っ手を巻いたにも関わらず、簡単に敵と遭遇したこと。なにより彼女の家族が拉致されたのも、その一族の呪われた体質ゆえではないのか。


 一瞬、目の前が暗くなる。

 俺はソフィーの境遇を、少なくとも自分の責任と感じたからこそ、彼女の従者になったのだ。だが、何もしなくても彼女たち自ら不幸を呼び寄せるのなら、俺が決断した意味とはいったい……。


「……かと言って、今更どうしようもない……か」

「そ、そうですね……ははは」


「ん?」


 俺とエイミーが同調する。

 すでに賽は投げられたのだ。もう後戻りは出来ない。俺たちは立派なお尋ね者になってしまった。そんな絶望感に気落ちする俺たちを、不思議そうな顔で見つめるソフィー。無自覚とはこれほどまでに罪深きものなのか。


 エイミーと共に無言のまま、出発の準備にかかる。

 俺は荷馬車の点検を、彼女は馬の追加連結と追従する馬の選別を始める。これまで警備兵を乗せるだけだった馬が、いきなり荷馬車を引くのは大丈夫なのかと思ったが、それもスキルで調教出来るとのこと。なんとも馬車使いは神からいろいろと優遇されている。


「あっ! あの……アハトさん!」


 点検の途中に、ソフィーが俺を呼ぶ。

 おおかた先ほど無視した件だと思い、小言を言われる前に俺なりの意見を述べる。


「……なんだ。昨日のことなら謝るつもりはないぞ。諦めてくれ」

「なっ……! き、昨日のことはもう諦めました! こうして無事でしたし……あなたにはあなたのやり方があるんでしょうから……って、そうじゃなく!」


「……?」


 昨日の件ではないらしい。

 その口調だと少しは俺の苦労もわかってもらえたのか。だが、ソフィーはまだ言い淀んでいる。また別の文句か。勘弁してくれ。


 車輪軸を点検しながら、ソフィーの言葉を待つ。なかなか続きを言わない彼女が気になり、俺はつい肩越しに振り向いてしまう。


「……どうした? 何か言いたかったんじゃないのか」

「やっとこちらを向いてくれましたね。そうでないと意味がありませんから」


「?」

「お帰りなさい」


「……」

「お帰りと言われたら、ちゃんと返事をするのが普通です」


「……ただいま」

「よろしい」


「……」


 それで満足したのか、俺から離れエイミーの下へ行くソフィー。永らく記憶から消えていたその言葉に、自分で発しながらも妙な新鮮さを感じる。


 別に悪くはないが、なぜ今なのだ。

 俺を嫌っているのにも関わらず、そんな言葉を望むソフィーの真意が理解出来ない。


 だが、それについて考える間もなく、エイミーから出発の準備が整った報告を受ける。俺はいつものように思考を切り替え、御者台へと向かった。



 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※



 平原を出発してからひたすら街道を走る。

 時間は過ぎ、今はもう陽が真上まで登っていた。


 今のところ追手の気配はない。

 もう諦めてくれるのならそれでもいいが、そう甘くはないだろう。奴らにとってもクビがかかっているのだ。ましてや自分たちが追放し、奴隷にした男が再び姿を現し、あろうことか部隊全員の揃う目の前で不正出国したのだから、威信もなにもあったものではない。さぞかし俺を恨んでいるだろ。奴らは必ず俺を追って来る。そう確信していた。


「トロンまではあとどれくらいだ」

「えっと、もうあと一日ですかね。このまま何もなければ、明日の夜には着くと思います」


「何もなければ……ですか」


 俺とエイミーの会話に、ソフィーが不安を漏らす。

 彼女にとっても、常に誰かによって追われてるという状況は初めてのことだろう。俺でさえこんな予定ではなかったのだから。一度逃げてしまった以上、俺たちは罪人だ。それに警備兵を殺した。最悪顔のバレていない彼女たちを逃し、俺だけが捕まるという手もあるが、そうなると誰が彼女の両親を探すのだということになる。


 一瞬、あの奴隷ディーラーの少年の顔が浮かぶ。

 しかし、すぐに頭から消し去ることにした。


 最初はあの貴族に彼が頼まれていたことを俺が受け継いだのだ。それを今更彼に託すなど出来るわけもない。せめて両親、もしくはどこかへ消えた姉だけでも、俺の手で見つけ出してやりたい。それまでは俺が捕まるわけにはいかないのだ。


 そんなことを考えながら、じっと一点を見つめていると、彼女たちが遠慮がちに声をかけてきた。


「あの。私のせいでいろいろと……」

「えっと、すみません。私が砦で見つかったりしなければ……」


「……いや、そんなことを思ってはいない。単に俺の気合いの問題だ」


 余計な心配をかけたようだ。

 俺は彼女たち謝罪を否定し、自分の気持ちの問題だと説明する。俺がしっかりしないと路頭に迷うのは彼女たちだ。これからは妙な弱音を表に出さないようにしないとな。


『えっと、なんか妙に優しくないですか。アハトさん』

『はい。あんなに気を遣う人だとは……以前はもっと粗野で乱暴な雰囲気が……』


 聞こえているぞ、ガキ共。

 コソコソと聞こえないように話しているつもりだろうが、全部まる聞こえだ。やはり慣れない気遣いを見せたのは間違いだった。これまでどおり俺は俺のままでいく。


「もう雑談は終わりだ。いつ奴らが追って来るかもしれん。ソフィーもしゃべる暇があるならうしろをちゃんと見張っていろ」


「変わってませんでしたね」

「あはは。そう……みたいですね」


 俺たちを乗せた荷馬車は、そのまま丸一日をかけてトロンの近くまで進んだ。



 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※



「あっという間でしたね」


 今日はなにかとソフィーがよく俺に話しかける日だ。俺は無言でうなずき返し、自分のやるべきことにかかり始める。


 今は街道から大きく外れた森のなかで野営の準備をしている。すでに陽は落ち、ここで野営が出来ているのは、今日一日、俺たちは奴らと出くわさなかったということだ。


 トロンに近付くにつれ、人族との遭遇は少なくなった。それはここが獣人の国であることを意味し、なおかつ俺たちが余所者である認識を強めることでもある。すれ違う獣人たちの視線は冷たく、それは俺たちが人族であることを、強く非難しているようでもあった。


 人族であることを隠した方が都合が良い。

 それが今日の旅の終わりに感じたことだ。追手は倒せばどうにかなる。もう五人も百人も同じだろう。だが、獣人国でソフィーの両親や娘の行方を捜索するには支障が出る。どれくらい時間がかかるかわからない以上、もめ事なく長期で滞在するにはそこが重要だ。なんとかならないかと思っていると、エイミーも俺に声をかけてきた。


「えっと、アハトさん」

「なんだ」


「やはりこのまま行くと、獣人の方々と揉めそうな気がするんですが」


 エイミーも同じことを考えていたらしい。

 フリーの御者としてさまざまな国を渡り歩く彼女であれば、ここ最近の人族と獣人族が抱えている問題も知っている。そのうえで今日一日、往来する獣人族の旅人や行商人の雰囲気を見れば、嫌でも気づくはずだ。俺たちがどんどん危険な地域に足を踏み入れていることを。


「教えて下さい。あなた方はこれほどの危険を冒してまで、この国で何を――」

「少し前のことだ――」


 俺はエイミーの言葉を遮った。

 彼女の要望はわかる。ここまで危険な綱渡りを共にした以上、すでに彼女も部外者ではない。ペイルバインでは、ソフィーの両親を獣人国で探すという説明をしただけだ。だがそれ以上の理由を、彼女は知る権利がある。


 俺たちが奴隷だったこと。

 その理由が人族が国境付近で亜人や獣人を虐殺、捕縛したことが発端だということ。ある少年によって奇跡的に奴隷から解放され、ソフィーの両親を探す旅に出ることになったこと。そして彼女の家族を拉致したのが、これから向かうアフェトンの重臣、ブルトン伯爵だということ。


 すべてをエイミーに話した。

 じっと黙って聞く彼女がどのような判断を下すのかはわからない。下手をすれば契約を解除し、この場から俺たちを置いて消える可能性も覚悟の上だった。俺たちがただの人探しではなく、獣人国の重要人物のところへ乗り込むというのだ。そんな馬鹿げた行為に付き合う義務は彼女にはない。騙されたと怒るのが普通だろう。


 途中から俺たちのようすに気付いたソフィーもこちらにやって来た。無断ですべてを話す俺を非難するのかと思えばそうでもなく、じっと俺の話を聞くエイミーを、心配そうな顔で見つめているだけだった。


「そう……でしたか」


 俺の話を聞き終えたエイミーは一点を見つめそう言った。そしてワナワナと体を震わせる。


「俺たちを非難する権利はお前にある。厄介事に巻き込んだのだからな」

「ごめんなさい。エイミーさん……」


 当然エイミーは俺たちを罵倒すると思っていた。

 だが、彼女は無言のまま怒りに震えていたかと思うと、見つめていた視線の先を突然、夜空へと向けて叫んだ。


「お父さん、お母さん! やりました! エイミーは今、血沸き、肉躍る冒険をしております!! あなた方の夢であった、退屈な往復だけの毎日からの脱却! 娘である私が成し遂げました!!」

「「……」」


 拳をあげて叫ぶエイミーに俺たちは唖然とする。

 怒るどころではなく、逆に喜んでさえいる彼女の心境が理解出来ない。下手すれば死ぬことだってあるのだ。そんな彼女に、俺と同様に驚くソフィーが声をかける。


「あ、あのエイミーさん。怒ってらっしゃるのでは……」

「なにをおっしゃいますか、ソフィーさん! 私は今、猛烈な感動に酔いしれております! それもあのペイルバインの酒場で酔っていたこととは、比べ物にならないくらいにっ!! 世界の権力者たち、それぞれの思惑と陰謀。それにあがなう弱者たちの生死をかけた冒険。立ちはだかる強敵との戦い。いつしか恋に落ちる仲間たち。ここぞというときの勇気。まだ見ぬ両親との再会は、それこそ切なる希望。成し遂げるための団結! 私たち家族の念願だった大冒険を前にしてこの私が怒る? そんなわけありませんっ!! 最高に幸せでありますっ!!」


「……フッ」


 意外にもエイミーは夢見る乙女だったようだ。

 英雄を夢見る少年のように、今の現状を前向きにとらえる彼女に思わず苦笑する。まだ十代の頃、自分の冒険に対する夢を、毎晩楽しそうに語っていた妻のソニアが、彼女と同じ気質の持ち主だっただけに、妙な親近感を持ってしまう。


「アハトさん! それならそうと早めにおっしゃってくれれば、私ももっと心構えが出来ていたのにっ!」


 そう言ってエイミーは、懐から二つの指輪を取り出し、俺やソフィーに投げ渡す。


「なんだこれは」

「以前言いましたよね。私の家族はいろいろと危ない橋を渡るお客さま向けに、代々馬車使いを営む一族だと。まあ、実際にはそんな特別なこと、めったに起きませんでしたが、それでもそれなりの用意はしております」


 その用意がこの指輪と言うのか。

 見たところ、ただのガラクタにしか見えないその指輪を、俺はじっと見つめる。


「この指輪はそのひとつ、【化身の指輪】です。念じれば、見た目をどんな人物にだって変えられる魔導具です」

「「魔道具!?」」


 そんな貴重な魔道具を渡された俺たちが、思わず彼女に聞き返す。すると、ニヤリと笑ったエイミーが、もうひとつの指輪を取り出し、自分の指にはめる。


「「あっ!!」」


 俺たちは叫んだ。

 エイミーが指輪をはめたとたん、みるみるうちにあの黒狼族の姿へと変化したのだ。その姿はとても偽物には思えないほどに精巧に出来ており、尻尾や耳は実際に動いている。彼女の言った通り、この指輪は本物の魔道具だった。


「す、すごい……この尻尾、モフモフです……」

「ふふん。そーでしょう、そーでしょう! 私と契約したあなた方は幸運です! これさえあればどんな国にだって侵入出来ますし、にっくき敵を暗殺することだって可能です!!」


「いや、暗殺までは考えてないが……とにかくすごいな」


 どんどん過激な発言になるエイミー。

 少し不安な部分もあるが、彼女を仲間にしたことは、俺たちにとって幸運であることは確かだった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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