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「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞  応募作品

「鏡よ、鏡。この世で最も美しいのは?」『それはかぐや姫です』「誰よ」『今は月にいます』「何でよ」

作者: マガミアキ

 魔法の鏡が告げた、妃より美しいという存在――かぐや姫。

 誰であれ、自分より美しい存在など認めない。


 殺さなければ。

 妃は昏く決意する。


 だが――。

 相手は月にいるらしい。どうやってあんな場所へ行けばいいのだろう?


 その時から、妃の挑戦と挫折、そして努力と鍛錬の日々が始まったのだった。

 


『こちらSWスノウホワイト――。RHIレッドホットアイアン、聞こえますか』

 妃は閉じていた目蓋を上げた。

『こちらSW――。おかあ様、聞こえますか』


「……聞こえているわ。少し昔のことを思い出していただけよ」

 視界に広がるのは、漆黒のビロードに宝石をばらまいたかのようにきらめく宇宙の星々だ。


 妃は今、天空を進む船RHIに乗り、宇宙空間にいた。

 地上管制から船へ音声を飛ばしてきているのは、彼女の娘だ。


『予定通り、RHIはこれから地球の周回軌道を離れ、月へと向かいます。準備はよろしいですか?』


「ありがとう、姫。あなたと七人の技術者ドワーフ達のお陰で、ようやくここまで来れたわ」

 窓の外を見つめながら、妃は言った。


『いいえ。失敗の連続にも諦めず、厳しい訓練にも耐え続けた。全てはおかあ様の強い意志と、努力の賜物です。娘として、尊敬いたします』

 生意気なことを言うようになった――妃は苦笑する。


『月でかぐや姫に会えたら、どうするのですか?』

「初めは毒リンゴを喰らわせて殺してあげようかと考えていたの。わたしより美しい者なんて認められないもの」

『まあ……』


「けれど今となっては、そんなことはもうどうでもいい。せっかくだから礼を言うことにするわ。かぐや姫という憎むべき存在が、ずっとわたしの支えになっていたの。わたしをこの宇宙まで連れて来てくれてありがとう、とね」


『……きっと歓迎してくれます。地球からの初めてのお客様なのですから。周回軌道離脱シークエンスに入ります。RHI、ゴッドスピード』

 通信が一時途切れた。

 妃は隣のシートに固定してある魔法の鏡に問いかける。


「鏡よ、鏡。この世で最も美しいのは?」

『それは――』


 鏡が告げた。

『お妃様、あなたです』


「おやおや、かぐや姫は死んだのかしら」

『今のお妃様の美しさは、かぐや姫をも凌いでいるかと』

「ふ――今さら何を言い出すのかと思えば。お前には目の前の景色が見えないの?」


 視界の中でひときわ大きく、青く輝いている星――。

『なるほど、訂正いたします。この世で最も美しいのは、我らの故郷――』

 続く言葉を予想して、妃は小さく笑みを浮かべた。


『地球です』

なろうラジオ大賞3 応募作品です。

・1,000文字以下

・テーマ:鏡


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― 新着の感想 ―
[一言] とっても面白かったです♡ まさか宇宙に飛び出すとは!
2022/03/27 13:43 退会済み
管理
[良い点] お妃様がかっこよくて好きです! アイデアが光っていて、よく知っている物語の登場人物が宇宙に飛び出していく壮大さがとっても面白かったです! タイトルからはまさか努力と鍛錬と爽やかさまで感じる…
[一言] これ、鏡の国の赤とか白の女王って鏡が答えたら、鏡の中まで行こうとするんだろうか
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