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「021」初めての亜里沙と

 夢を見た。初めて亜里沙に会った日のことを。


 それは二週間前に遡る。


 俺は二年生になったばかりで、亜里沙は入学してすぐの頃だ。


 俺は喫茶店のバイトを終えて適当に桜が舞う街路(がいろ)を歩いていると、金髪のギャルが女の子を泣かせていた。……女の子というより三歳くらいだから幼女だな。


「あああああああああああぁぁ!」


 この世の終わりみたいな幼女の泣き声だ。どんなことしたらこんなに泣くんだよ。お菓子を目の前で食われてもこんなに悲しまないだろ。


 ……警察呼んだほうがいいか?


「マジで落ち着いてって。泣いてもママは来ないし。ほら、警察行こってば」


 ギャルが幼女の手を引こうとするがイヤイヤと首を振る。


「あああああああああああああああああぁぁぁ!」


 再び泣き叫ぶ。


 もはや怪獣みたいだ。幼女怪獣リトルフラワー。ガチャにいそうな名前だ。多分、SSR。幼女系はレア度が高いんだよな。くそ、いつもは天井くるまで最高レア来ないのに!


「ぎゃおおおおおおん! ぎゃおおおおお!」


 って、まだ泣いてるよ。


「えぇー、どうすんのさ。あたしのほうが泣きたいし」


 見たところいじめてるわけではなく、迷子を助けようとしてるようだ。……よかった。事案じゃなかった。


「あー、ちょっといいか?」


 俺が声をかけるとギャルがじろりと睨みつけてきた。なんでこんなに敵意むき出しなんだよ。俺が幼女を泣かせたわけじゃないだろ。


「なに?」


「子供に対してそんなに威圧的になったらだめだ」


「はぁ? 別に威圧してないし。普通に聞いてんじゃん」


「子供には子供の目線にならないと駄目だ」


 俺はしゃがんで幼女と目を合わせる。


「どうしたんだい?」


 極力優しく問いかける。ついでに笑顔も忘れずに。これが幼い妹との間で身に着けた対人スキルだ。


「あああああああぁぁぁぁぁ!」


 ……なんで泣くの?


「あはは、泣いてるし! あははは、恰好つけといてさぁ!」


 逆にこっちは笑ってるよ。


 普通こんな知らない人の失敗を腹を抱えて笑う? なんてむかつくやつだ。悔しくなってきた。


 こうなったら最後の手段だ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 つい先日、真央と駄菓子屋に行ったとき懐かしくてつい駄菓子を買いすぎてしまった。そのときの残りがバッグに入ってたはずだ。


 あ、あった。


「じゃーん。これなんだ?」


「あー! おかしだぁ!」


 ぱぁっと女の子に笑顔が戻る。やはり駄菓子は子供にとって最強の秘密兵器だ。


「ほら、これあげるから元気出してくれ」


「うん!」


 俺から駄菓子を受け取るとニコニコと食べ始める。


「おいしい!」


「口元にチョコついてるぞ。ほら、取ってやる」


 ハンカチなんて気の利いたもんを持っていない。しかし、こんなのは妹で慣れている。俺は幼女の頬についてるチョコを指で軽く(ぬぐ)ってやる。


「ありがと!」


 素直にお礼を言う幼女。なかなか教育が行き届いてるじゃないか。


「へぇーやるじゃん」


 感心したようにギャルが声をかけてくる。


「で、あたしに用なんでしょ。早く言ってよ。どうせサインだろうけどさ」


「は? なんで俺がお前のサイン欲しがるんだ?」


 知らないやつのサインなんて欲しがるやついるのか? それともこのギャル、芸能人だったりするのか?


 ギャルの顔を観察(かんさつ)する。


 確かに可愛い。アイドルといってもおかしくないけど、でもテレビで見たことないな。


「あー、わかった。ゆーちゅばだろ?」


 いるんだよな。こういう自分が芸能人だと思い込んでる勘違い系のゆーちゅば。どうせ登録数は100くらいだろ。


「は? マジであたしのこと知らないの? だったらなんで声かけてきたのさ」


「お前に声かけたわけじゃないって。その子に声をかけたんだよ」


 俺は未だにお菓子に夢中な幼女を指さす。


「あとは俺が警察に連れて行くから帰っていいよ」


 ギャルを追い払うようにしっしっと手で払う。


 正直、あまり好きじゃない女子だ。


 見た目は俺の嫌いなチャラ男をはべらせるギャルっぽいというのもある。


「マジでキョーミとかないんだ」


「当たり前だろ」


 冷たく言い放つ。やべっ、ちょっと言い過ぎた。


 そう思ったが、なぜかギャルは目は輝かせていた。


「やば、なんだろ。ちょっと新鮮。子供が心配で声かけたってのもきゅんときた」


 ……変なやつ。


 普通は(うと)まれたら離れていくんだけど。


「ね、ね? もしかしたら女子にキョーミない系? ホモとか?」


「女子のほうが好きに決まってるだろ!」


 とんでもない誤解だ。


「ほも?」


 お菓子みたいなニュアンスで幼女が首を傾げる。ほら、変な言葉覚えちゃっただろ。


「ふーん、ほんとかなぁ?」


「ほんとだって」


「どれどれー、ていっ」


 突然、ギャルが俺の腕を引っ張り。体の中心に挟む。上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)は胸に挟まれて手の甲はふとももに触れた。


「ほうわぁ!」


 な、なんて柔らかさだ! これ脳がとけるやつだ!


「『ほうわぁ!』だって! あはははは! 女子にキョーミありまくりじゃん! エッチだー」


 く、くそ、完全にからかわれてる。


「面白い!」


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