「019」女子を抱っこと
キッチンでシオンちゃんの動画を見ていると、ビービーと音が鳴った。
食器の洗浄が終了したようだ。食器を片付けてリビングに向かうと、なぜか亜里沙がソファーで寝ていた。
もうこんな時間か。
つーか、これからどうしよう。
やっぱ漫画喫茶しかないかな。
亜里沙が寝こけているソファーの端に座る。
亜里沙は大胆にもおへそを出して寝ていた。亜里沙ってほんとずぼらなんだな。
すぅすぅという寝息に合わせておへそが上下する。シミひとつない綺麗な白い肌、艶やかな唇、そして、シャツを押し上げる大きな胸の膨らみ。
ただ寝てるだけなのに色っぽい。……正直、興奮する。
雑誌なら袋とじレベルの禁足事項だ。
他の男にはこんな姿を見せないでほしい。
そんな身勝手な思いすら生まれてしまう。
って、見すぎだろ。亜里沙が起きたら『変態! ドスケベ!』と罵られること間違いなしだ。
視線を外そうとしたが、『っんぅ』と亜里沙が寒そうに身じろぎした。
いくら春先とはいえ毛布なしで寝るのは寒かったか。ブランケットでもあればいいんだけど。
見渡してもリビングにはなさそうだ。寝室やタンスにあるかもしれないが勝手に探るわけにもいかない。
……ここは起こして自分でなんとかしてもらうのが一番か。
すやすやと寝ている亜里沙を起こすのは忍びないけど。
「おい、亜里沙」
最初は声だけかける。
……返事はない。
よ、よし、軽く肩に触れるぞ。
「あ、亜里沙。お、起きろって」
躊躇しながらも軽く肩を揺らす。肩ほっそ!
「んー?」
亜里沙が僅かに目を開ける。だが、未だに微睡の中にいるようでぼんやりとしている。
「……まだ眠いし」
「ここで寝ると風邪ひくぞ」
「えー」
……いや、えーじゃないんだけど。
「ほら、起きろって」
「やだし」
「だから、ここで寝るなって」
「しつこいし」
亜里沙は瞼をぎゅっと閉じる。完全にここで寝る体勢だな、おい。女の子を起こすなんて密かに憧れていたシチュエーションだったが現実はこうも上手くいかないものなのか。
「でもさ」
「あー、わかったし」
むくりと起き上がる亜里沙。よかった。わかってくれたみたいだ。
「んじゃ先輩、連れて行ってください」
いきなり亜里沙が抱きついてくる。あ、亜里沙の匂いが!
「ちょ、ちょ、ま」
「ほ~らほら。早く早く~」
や、やばいって! これ! 胸の感触や間近で見る亜里沙の顔は破壊力がものすごい!
「やっぱり無理ですか? 先輩には~」
く、くそ! これ以上は俺が耐えられない!
咄嗟に俺は亜里沙の身体に手を回してお姫様抱っこする。
想像以上に軽い体だ。でも、出るところは出ている。
「せ、先輩、ま、マジで?」
亜里沙の戸惑った声が亜里沙に一矢報いた感じで妙に心地いい。
しかし、俺の理性も限界を迎えている。は、早く連れて行かないと!
「これに懲りたらもうからかうのはやめろよ」
俺は極めてクールに言い放つ。
「いや、先輩、めっちゃ顔赤いですけど」
……どうやら体は正直みたいだ。エロい意味じゃなくて。
「し、仕方ないだろ。良い匂いすんだから」
照れて動揺した俺はついセクハラみたいなことを言ってしまう。
「そ、それはどうも」
亜里沙の顔も赤くなった。
というか、良い匂いだけじゃない。
亜里沙の身体に回した手が胸の端に触れている。
ブラジャーの感触と僅かに感じる胸の存在感。
めっちゃ柔らかいんですけど! これあかんやつや! 理性がごーりごり消えていくで!
このまま手を伸ばせば胸をがっしり掴むことができる。
ちょっとこけたふりして触ろうかな。
「……先輩のえっち」
いつの間にか亜里沙にじっと見られていた。下着を見て非難してる眼差しではなく、どちらかといえば俺をからかう良い材料が手に入ったというような眼差しだ。
「う、うるさいな」
ま、また隙を与えてしまった。
ちょっと点数を取り戻したと思ったらすぐ取り返された感じだ。
「先輩ってば、女子抱っこしたことないんですかぁ?」
「……」
あるわけないだろ。
「黙っちゃってぇ。あるわけないのにぃ」
笑いながら亜里沙は再び目を瞑る。
……これ以上馬鹿にされるのはこりごりだ。今だけは不埒なことを考えるのはやめよう。
「で、隣の部屋でいいんだよな」
「そうですけど。なんで知ってるんでか?」
聞こえてたからですとは言えない。
「部屋の構造的にそうかなって思っただけだ」
「そうですか。んじゃ、勝手に入っていいんで」
ちょっと苦しい言い訳だったが、亜里沙は眠いようで深く突っ込まなかった。
リビングを出て亜里沙の部屋のドアを開ける。
「面白い!」
「続きが気になる!」
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