「018」風呂場と
「大丈夫だって。湯気であんまり見てないって」
「嘘」
「ほんとだ!」
一部しか見えなかった。
「そう」
ほっとした雰囲気が伝わってくる。
ふっ、ちょろいもんだ。
「ゆう」
「な、なんだよ」
いきなり緊迫した声を出すからびっくりした。
「ゆうは、女の子の裸に興味あるの?」
あるよ。とは言えないだろ。
「ひ、人並みには」
「……ゆうがどうしてもって言うなら、ちょっとくらいならいい」
「な、なにが?」
唇が渇く。
「その、エッチな写真送ってあげようか?」
「マジで!?」
「で、でも、ちょっとだけ。それにどうしても欲しいっていうならだけど」
「どうしても」
「早いんだけど」
仕方ないことなんだ。男の子に生まれた以上、女の子になんでもすると言われてしまったらエッチなことを考えてしまうもんなんだ。
「ゆうが他の女の子の裸とか興味持って犯罪犯したら大変だから。お姉ちゃんとして仕方なく送るの」
「ああ、わかってるよ」
と言いつつも、頬が緩むのが止まらない。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
真央のやつ、何する気だ?
「カメラが安定しない……っ」
カシャカシャとカメラ音が数回鳴る。どんだけ撮ってんだよ。
「お、送るよ」
ラ・インに通知が来た。
画面を開くと真央の顔と胸の谷間が前面に押し出された写真が送られてきた。
んんんんっ……!? こ、これは真央にしては大胆だ! さっきのビデオ通話に比べるとエロさは減ったけど!
再びラ・インが鳴った。
ん? また送られたのか?
写真を開くと真央のお腹と下乳だけの画像だった。
マジかよ。徐々に大胆になっていくんだけど。
「ゆう! 間違って失敗したやつも送っちゃった! け、消しなさい!」
真央は珍しく大きな声を出す。
「ああ、もちろんだ」
消すわけないだろ。
「絶対に消して。そうじゃないとお姉ちゃん怒るからね」
ちゃんと写真消してねとしつこいくらい何度も確認される。
「わ、わかったって」
「で、ゆう」
「なんだよ」
「元気、出た?」
どきりとした。俺が料理で失敗して落ち込んでいることに気づいてたらしい。慣れないラ・インを使ってまで写真送ったのも俺を元気づけるためか。……いいやつだな。姉を自称するだけのことはある。
「出た」
「……そ、そう」
ホッとしたような真央の声。……心配かけたみたいだ。思えば俺の心配をしてくれるのは真央だけになってしまった。これ以上心配かけたくないから家を追い出されたことは黙ってないと。
「今日、料理したけど全然ダメだったんだ」
「それで元気がなかったのね。そうかもね。いきなり料理は無理だと思う」
「意外と難しいんだな。料理って」
なんなくこなせる真央を改めて尊敬した。
「真央はやっぱりすごいな」
「そんなことないから」
と、言いつつもちょっと嬉しそうだ。
「私も最初は全然ダメだった。でも、お母さんに習って少しずつ覚えていったの」
「そういえば、最初はきゅうりとか上手く切れてなくて繋がってたもんな」
「……忘れなさい」
電話の向こうから恥ずかしがる姿が思い浮かぶ。
「真央」
「なに?」
「いつも料理ありがとうな」
これだけは言っておかないといけないと思っていた。
「そう」
交わす言葉は短い。だが、百の言葉を紡ぐより心に響いた。
……やべ、素直に礼を言ったら恥ずかしくなってきた!
「あ、そ、早雲に呼ばれた! 悪いけど切るな」
「また明日ね。おやすみ、ゆう」
「ああ、おやすみ」
電話を切ると料理の失敗で沈んだ気持ちが消えていた。
真央には感謝しかない。
だが、同時に寂しさも残った。
今までは触れる距離にいたのになぁ。
学校では会えるがそれでも今は傍にいない。こんなの長い幼馴染生活で初めてだ。
初めての生活、初めての距離感。これから先の不安は残るが、真央が家族でいてくれるなら怖くはない。
「面白い!」
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