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「013」野菜炒めと

 一通り買い物を済ませて戻り、キッチンに入る。


 最新設備のIH、フードプロセッサーや高級炊飯器。どれも真新しく使われた形跡がない。

 唯一、電子レンジのみが使い込まれたような年季がある。


 真央がいない俺みたいな使い方だな。


 買ってきた材料はキャベツ、もやしなどの野菜。そして、豚の塊肉? 一通りの調味料。

 うーん、野菜炒めっていうんだから適当に野菜と肉でいいのか?


 湯気が出たフライパンの上に適当に野菜と肉を投入。


 よくわからないけど中華は火力っていうよな。


「カカカカカ!」


 笑いながら強火にする!


 これであっという間に――。


「できたぞ」


 テーブルの上に料理を並べると亜里沙が目を丸くした。


「なにこれ」


「野菜炒め」


「ああははは! いやいやいや、明らかに消し炭じゃーん!」


 そう、火力が強すぎたらしく、肉も野菜も焦げてしまった。


「うるさいな。食べれば美味いかもしれないだろ」


「いや、絶対まずいっしょ」


「ほら、テーブルの上に肘を立てるなって。キチンと座れ。あとご飯食べるときくらいスマホも手放せ」


「あははは、お母さんみたいなこと言ってるし! 先輩マジうける!」


 ツボに入ったらしく亜里沙が腹を押さえて笑う。


「……いいから食え。そんなジャンキーなから揚げよりよっぽど健康的だぞ」


「あー、笑った。はいはーい。じゃあ、いただきます」


 亜里沙が野菜炒めを口につける。


 うーまーいーぞー! と富士山をバックに叫ぶ姿を想像するが、


「まじぃし!」


 亜里沙が眉をひそませる。


「嘘つけ」


「ほんとだって! 肉とか表面は焼けてるけど中身はぜんっぜんだし! にんじんとかめっちゃでかくて食いにくいし!」


 俺も野菜炒めを口にする。


 ……焦げがやばい。


「まー、食うけどさー」


 あっさりと亜里沙は言って、パクパクと食べ続ける。


「悪い」


「いーっていーって!」


 くそ、かなり悔しい。正直料理を舐めてた。適当にフライパンで炒めれば美味い料理になるだろって思ってたのに。美味い料理を作るって難しいんだな。


「まずかったけど、料理ありがとうございます。先輩」


「ああ、うん」


 めっちゃ悔しい。


「先輩、なんでがっかりしてるんですか?」


「別に」


 ぷいっと顔を背けると、亜里沙は何かを閃いたように顔を輝かせた。


「あー、先輩ってば、失敗したからって拗ねてません?」


「そ、そんなことない」


 と言いつつも、図星だった。亜里沙のやつ、かなり察しがいい。他人のことなんか気にしないという素振りをしていても実は他人をよく見ている。


「えー、そうですかー? あーあ、ほんとはすっごく美味しかったのになー」


「マジか!?」


「めっちゃ食いついてくる。先輩、かーわいいっ」


 楽しそうに『あははっ』と口元を手で押さえて笑う亜里沙。……ぐっ。く、くやしい。


「くそっ、また今度作ってやるからな!」


「えー、もういいですよ。冷凍ご飯で十分じゃないですか」


「そんなのばかり食ってたら体壊すだろ」


「だったら先輩も一緒に体壊しますね。だって、これからもここに住むんでしょ?」


「は?」


「だって、その、許嫁、ですよね? あたしたち」


 『許嫁』と言った瞬間、亜里沙はほんのわずかに頬が紅潮する。


「あ、でも、勘違いしないでください。仮ですからね。仮」


 そういやそうだった。


 亜里沙の部屋が衝撃的すぎて忘れていたが、父さんの手紙を鵜呑みにすればこの部屋にいる人物が許嫁ということだ。ここにいるのは亜里沙だけ。つまり亜里沙が許嫁でQEDだ。


 でも、それはあくまでも父さんだけの言い分だ。


 亜里沙やそのご両親ならば許嫁を解消してくれるかもしれない!


「そのことだけど」


 俺は姿勢を正して亜里沙を見る。



「面白い!」



「続きが気になる!」



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