「012」スーパーでイチャラブと
歩いて五分ほどでスーパーにたどり着く。高級住宅街が近くにあるということで心なしか利用客もリッチな感じだ。外国の家族がボンレスハムを片手に談笑してる。
げ、あっちではサングラスかけた美人のお姉さんが英語で書かれたオシャレなオリーブオイル持ってる!
家の近所にあるスーパーなんか腹巻したおっさんが下駄履いて焼酎買ってるのに。
かごを手にした俺は経済格差を嘆きつつ、野菜売り場に向かおうとしたが、
「先輩、先輩っ。どこ行くんですか。カップラーメン置き場は向こうだし」
「は? カップラーメン? もうちょっと凝ったもの食べようぜ」
「えー、まさか自分たちで作んの? いやいや、ないっしょ。あたし料理なんて炒飯しか作れないし」
「炒飯作れれば十分じゃないか?」
「……冷凍の」
亜里沙が若干恥ずかしそうにぽつりとつぶやく。
冷凍炒飯って電子レンジでチンすればいいだけだろ。
「それ作ったって言えないよな」
「……仕方ない。今日は俺が作るよ。とりあえず野菜炒めでいいか?」
「は? 先輩が?」
めちゃくちゃ疑ってる。
「自炊してたんだからそれくらいはできるって」
……多分。
だって、野菜炒めるだけなんだから簡単だろ。
「先輩、なんか料理できないあたしのこと馬鹿にしてない?」
「被害妄想だろ」
「先輩のくせに生意気だし」
亜里沙が体を密着させてぐいぐいと押しつけて邪魔してくる。……女子の香りが……く! 駄目だろ! これ!
男子高校生には刺激が強すぎる。
というか、注目されてるっぽい。
「見て。あれ」
「初々しいカップルねー」
「若い頃を思い出すわー」
マダムたちが俺たちを見てニヨニヨしてる。いや、カップルじゃないから。
「そ、そこまで言うなら先輩に任せますし!」
亜里沙は顔をゆでだこみたいに真っ赤にしつつまくしたてて足早に俺からは離れていく。それを見てマダム連中はあらあらみたいな顔をしていた。
気恥ずかしくなった俺も軽く頭を下げてその場から立ち去った。
「面白い!」
「続きが気になる!」
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