表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

心春ちゃんとハクの約束

作者: 木蓮

昔々あるところに、心春ちゃんという女の子がいました。

森に囲まれた家に住んでおり、庭には大きな桜の木がありました。


心春ちゃんは、1年に1度咲く桜の木が大好きでした。


……………


はー….

白い息がしていた寒い冬がおわり、暖かい季節がやってきました。


太陽の暖かいぽかぽかした光が照らします。


庭にある大きな桜の木に蕾がでてきました。


「春がやってきたね!」心春ちゃんは心踊らせながら、窓から桜の木をみます。


数日すると、淡いピンクの花びらが蕾を咲かせました。


桜の木を見ながら温かいミルクを飲みます。


ひらひらと散る桜の花びら。


気づくと、桜の花びらがマグカップの中に入っていました。


「綺麗な色!」にっこり笑顔で心春ちゃんはマグカップをのぞきます。


すると陽だまりのような暖かい声が聞こえました。

「心春ちゃん。また今年も会えたね。」


「ハク!元気だった?」

彼はハクという男の子です。


ハクとの出会いは心春ちゃんがまだ小さかった頃でした。


お父さんとお母さんに怒られて、桜の木の下で泣いていました。


えーん….えーん…


「泣いているのかい?」声をかけてくれたのがハクでした。


手を差し伸べてくれたハクの手はとっても大きくて暖かかったなぁ。


それから数日間、ハクと一緒に時間を過ごしました。


「ハク…明日も会える?」約束をしたくて、心春ちゃんは聞きます。


「ごめんね、心春ちゃん。今年はもう会えないんだ。また来年会いにくるよ。」

そういい手を振って去っていきました。


ハクがいなくなったのと同時に、桜の木は葉桜になり、次の季節の準備をし始めました。


夏は緑の葉を生いしげり、秋には葉の色が黄色に色づき….

冬には葉っぱが落ち、冬への準備をします。


季節ごとにいろんな顔がみることができて楽しいけれど、やっぱり春が好き。


暖かい桜の花びらが、庭一面を薄いピンク色にします。


ハクは心春ちゃんの話を聞いてくれました。


自分のこと、家族のこと、将来のこと。


ハクとの時間は心地よく、心が温かくなります。


別れの日がくると、“また来年ね!”と約束をします。


桜の暖かい色をみると、辛いことも、嫌なことも、すべてが忘れられる。



季節は過ぎ、肌寒い季節になりました。


黄色の葉をみて、心春ちゃんは呟きました。


「またハクと来年も会えるって約束できるかな?」


もともと身体が弱い心春ちゃんは、長く生きることができないと言われていました。


ここまで生きていることも、奇跡だと言われました。


きっと桜の木やハクとの時間が、癒してくれたのかもしれない!


小春ちゃんは、今日も窓から桜の木を見つめます。


__________________________________


えーん。えーん。

私の下で、小さな女の子が泣いているのを見つけました。


300年生きてきて、はじめて泣いている子どもを見かけました。


いつも人間は、桜の木を見上げるのに、下を向くのはもったいない。


はじめはそう思い、声をかけました。


女の子の名は心春ちゃんという。


心春ちゃんと話していくうちに、身体が弱いことを聞きました。


人間の寿命は、ほんの少ししか生きることが出来ないのに、

この子の寿命はもっと短いことに悲しくなりました。


そして会う度に、“心春”という名前の通り、陽だまりのような優しい子であることがわかりました。


ハクは自然がもつ命の光を心春ちゃんに少しずつ照らしたのです。


ハクも心春ちゃんも、初めてできたお友だちです。


ハクは弱気になった心春ちゃんにこういいました。


「心春ちゃん、約束してね。」

「楽しみにしていれば、きっと来年も再来年も、その次も生きる力になるから。」


ハクの言葉に大きく頷きました。


命の尊さを感じながら、葉桜になった桜の木をみて、心春ちゃんはこう言いました。


「今年もありがとう。来年も楽しみしているからね!」



"約束だよ?"


……ハク。来年も貴方に会えますように。

小春ちゃん。来年も成長した君に会えるのを楽しみにしているよ。……


“私の大切な友人へ”





数十年後....


「おばあちゃん、ハクは桜の木の妖精さんだったのかな?」

「私も会えるかな?」


小さな男の子と女の子が聞きます。


「いつか会えるかもしれないねぇ。」

にこやかに笑って心春ちゃんは、今日も桜の木を見つめます。


春の季節になると、たくさんの人が桜を見上げます。

私たちにとって桜は特別な存在。


だからこそ、来年も見ることができますように…


"今年もありがとう、来年も楽しみにしてるね!"


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ