姉:10月
上司である相談役の過去の著書をAmazonで見付けたので、古本で買ってみた。
もう十年以上前の本だ。
一九六〇年代に、中小企業の社長の息子として生まれたが、中学生の頃にその会社は倒産。
一転して生活保護家庭になり……それでも何とか奨学金で都内の大学へ進学。だが、その頃には両親ともに死亡。
ご両親の会社が好調だった頃、両親が映画好きだった事から、有名映画会社へ就職するも……あくまで映画の作成・配給をやっているのは子会社で、本社は、都市部に持っているビルや土地の賃貸が中心の言わば「不動産業」だった。
どうやら「シネコン」と云う言葉が生まれる以前から、その大手映画会社は「映画を客寄せにした商業施設の運営」をやっていたらしい。
そして、相談役がその映画会社に就職した頃はバブル期。
勤め先が都内に持っていた遊休地に若者向けのディスコやバーを作るアイデアを思い付き……。
そこから相談役の企業家としての人生が始まった。
勤め先を退社し、自分が手掛けたディスコの役員になったが……やがて、経営を乗っ取られ……。
それから何度か、新しい事業を始め……そこそこ以上の成功をしては、信じていた相手に裏切られ、会社を乗っ取られる、と云う事を繰り返し……そして、二一世紀初頭の労働者派遣法改正を見込んで作ったのが、この会社だったらしい。
温厚に見える相談役も……苦労の連続としか言えない人生を辿ってきたようだ……。