5話 サブタイ思いうかばねぇ
フリフリのフリルが付いた女物の服が内側の筋肉によって押し出され弾け飛びそうになっている。顔は強面だが、濃いメイクをしている。
「エリザベス。また来たぞ」
「あら!ミルちゃんじゃないの♡いらっしゃい♡」
(ゔぇ)
あんまり人の見た目にどうこう言いたくは無いけど素直にやばい。クネクネしながら話している姿を見るだけで意識を失いそうになってしまう。
「今日も服を買いに来たのかしら?」
「いや、今日は妾の夫の服を見繕って欲しい」
ミルさんに背中を押されてエリザベスの前に立たされる俺。
そこで気付く。
(めっちゃデケェ)
このエリザベスというオカマ。身体がクソデケェ。身長は優に2メートルを超えている。それに腕や足など露出している身体だけを見ても筋肉が隆起しているのが見てわかる。胸筋もやばい。
「あら♡!可愛いじゃなぁい!!」
「ひっ!!」
一気にエリザベスの顔が近づいてくる。明らかに男にしか見えないその顔が目の前に存在する。
「だけど私のタイプじゃないからいいわぁ。それにミルちゃんの夫だし。それじゃあ服を選んでいくわね。ミルちゃん何着くらい必要?」
エリザベスは5秒程俺を見つめた後離れていき、ミルさんに服について聞き始める。
「そうだな。とりあえず5組くらい有ればいいか」
「了解したわ。ミルちゃんの夫さん。ちょっとだけ計らせてね」
ポケットからメジャーの様な物を取り出してジリジリと詰め寄ってくるエリザベス。ただ身体の大きさを測るだけなのはわかるがそれでも怖い。
「はい。じゃあ似合うものを持ってくるわね」
一瞬だった。気がついたらメジャーが既に終われている。計られたという感覚すらない。ただ立っていただけ。
「しばらく待っておけばいいだろう」
「ミルさん。あの人何ですか?」
異世界にはあんなヤバイやつがいるのかと戦々恐々としながら尋ねる。
「エリザベスはこの街随一の服屋の店主だな。あの見た目だがしっかりとした腕を持っている。以前は冒険者ギルドで1級冒険者として名を挙げていた奴だな」
マジか......あの人強いのか...
確かにあの身長であの筋肉を持っていたら冒険者も務まるか......
「妾も過去1度だけエリザベスと組んだ事があるが人間にしては異常な程の強さだったな」
「ん?ミルさんって冒険者だったんですか?」
「言ってなかったか?」
虚空に手を突っ込んでゴソゴソと取り出したものは免許証の様なカード。カードを覗いてみると日本語ではない文字が書いてあるが理解できる。
「1級冒険者?」
ミルさんは1級冒険者だった。
「あぁ」
意外だった。あのエリザベスとミルさんが同等の強さなのか?明らかに違うと思っていたのだが...
正直ミルさんの強さなんてわからない。そもそもエリザベスの強さすらわからないが、それでも何となくミルさんの方が強いと思ってしまっていた。
「意外だったか?」
「はい」
「妾はこの姿でたまに冒険者の真似事の様な事をして暇を潰している。だが、全力を出してしまってはつまらんだろう?なので力を1%程に抑えている結果が1級という訳だ」
つまり縛りプレイをした結果って事なのか。やばくね?めっちゃ強い。
「この後ついでに冒険者登録もやりに行くか。妾の紹介が有ればすぐに冒険者になれるだろう」
「わかった」
「それにしてもユズキは妾の夫となったのに全く構ってくれんのだな」
「構うって......何をしたらいいの?」
なんだ?何をすればいいんだ?俺は日本にいた頃から全くと言っていいほど女性と関わってこなかったからな。女の幼馴染とかもいないし姉妹もいない。小さな頃に将来の結婚を約束したこともなければ許嫁もいない。こんな俺にそんな高度なことができる思うのか?うん出来ない。
「手を繋ぐ......とか色々あるだろう?」
確かに。
チラッとミルさんの手を見る。ミルさんの手を見る...........決して駄洒落じゃないよ!!
細くしなやかな手...爪も綺麗に切り揃えられている。あれ?吉良吉影みたいになってる......
「後は......」
何か言っている様だが俺の耳には聞き取れなかった。
「選んできたわよ!!なに?この雰囲気」
*
「ユズキ!一応試着していけ。ユズキが気に入らないとかあるかもしれないからな」
エリザベスが両手一杯に持ってきた服を1着ずつ試着して行く。どの服も俺に合う様に選ばれている。色自体も俺の黒髪に合わせているのか黒っぽい系統の服が多くなっている。
「ここら辺は普段着ね!さっき聞こえてきた話だとミルちゃんの夫さんも冒険者登録するんでしょ?」
「そうですね。そういえば名前言ってなかったですね。ユズキと言います。よろしくお願いしますエリザベスさん」
「ユズキちゃんね!冒険者になるなら装備下のインナーもいると思って持ってきたのだけど、どう?」
「冒険者登録はするがまだどんな武器を使うか決めてないからな。決まったらまた来る」
「わかったわ!じゃあ普段着5組の購入ね!25000ノルツよ!」
25000ノルツ......ってどのくらいなんだ?
「安いわね」
「結婚祝いみたいなものよ♡」
「金貨3枚で払う。釣りは要らん」
金貨3枚って事は金貨1枚で10000ノルツって事か?多分そうだよな。この世界の金事情は知らないけど。
1組分の服だけ着て残りはミルさんが虚空に服達は収納されていった。
「じゃあ」
「また来てね〜!♡」
だいぶ慣れたわ。
実際、アニメとかでこういう服屋のムキムキオネエ出てくるけど実際にいるんかね?ってところが気になりますね。
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