3話 お出かけ
「ふぅ。美味しかったわ。流石アリアね」
「お嬢様。ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀をするアリアさん。というかさっきからミルさんのことお嬢様様って呼んでるけど......
「ミルさんとアリアさんって何歳なんですか?」
ヒュッ!と周りの空気が一気に冷たくなるのを感じる。え?ていうかマジで寒いんですけど......机に霜降りてきてるじゃん!!
「ヒッ!」
ミルさんとアリアさんの方を見てみると2人とも笑顔でこっちを向いている。だがその笑顔が怖い。
その笑顔を見ていると爺ちゃんの言っていた事を思い出す。
『いいか?柚月。レディに年齢は聞いてはいかんぞ?レディはいつまでもJKなんじゃよ』
それってこういう事だったのか...爺ちゃん。
「ふぅ。ユズキ。あんまり女性に年齢を聞くものではないぞ?......だが、妾はユズキの妻になる者。妾の秘密を教えておくぞ」
「私はいいません」
ミルさんは教えてくれるようだ。
「妾自体正確な歳を知っているわけではないが......1000歳は余裕で超えておるな」
「え?」
「ちなみにアリアは妾よりも歳上だ」
「お嬢様!!なんで言うのですか!?」
マジか!?ぱっと見アリアさんは俺とほぼ変わらんくらいの年齢だと思ってたんだが......1000歳を超えるババアだとは......
というかミルさんも見た目は20歳くらいだ。
「別に良かろう?アリアは歳と言う概念が無いのだし」
「はぁ......一応気にはしてるんですよ?」
「お2人で話すのはいいんだが、全く話に着いていけないんだが」
歳の概念が無いって事は不老って事だと思うが、それがあっているかなどわからん。アリア自身あまり言いたくない雰囲気を醸し出している。
「それは追々話していく。ユズキも食べ終わったようだしそろそろ買い物にでも行くか?」
純白のテーブルクラスに乗っている皿をアリアさんとは違うメイドさんが回収していく。手慣れた手つきで素早く回収していく動作に見惚れてしまうがミルさんに言われたことはしっかりと耳に入っている。
「俺はいつでもいいよ。ミルさんに任せる」
「それでは行こうか」
「え?この格好でいくの?」
俺はまだパジャマっ子だ。流石に手に持っていた枕はあの部屋のベッドの上に元々あった超高級そうな枕の隣に並べて置いてきているが服自体パジャマしか持っていないのだが。
「妾の屋敷には女しかいないものでな。女物の服でいいならあるが......どうする?」
「どうするって......決まってるだろ」
パジャマっ子で俺は行くッ!!
女物の服着てくのは流石に嫌だな。うん。
今から向かうのは人族の街。その中で2番目に大きな国、ディルムット王国の王都に転移する。そしてそんなミルさんは髪の毛を金色に変化させている。やはり吸血鬼しか持たない銀髪で人族の街に行くのはリスクがデカすぎるのか。
「じゃあ行くぞ。転移:ディルムット」
魔法か!?やっぱり吸血鬼がいるんだから魔法もあるよな!!それに転移って...転移魔法か?アニメとか小説だと転移魔法は相当レベルが高い魔法だと言う認識を持っているが......
地面に魔法陣が現れ、それが一気に5段になる。その5段の魔法陣は俺とミルを包むように光出す。目を瞑り光から目を守ろうと身体が反射反応を起こす。
何秒ほど経っただろうか。多分5秒とかそのくらいだろう。段々と目蓋に感じられた強い光が弱くなっていく。それと同時に耳に喧騒が聞こえてくる。先ほどの静かな森とは異なり人の声が不協和音の様に乱雑に奏でている。
匂いはどうだろう。そこまで何も感じられないが少しだけ肉を焼いたいい匂いがするような気がする。
目を開けて周りを見渡すとそこは部屋の一室。簡素なベッドと机、それにランプだけが置かれた部屋だ。
「では買い物に行くか」
ミルさんはそう言って扉を開けて部屋から出て行った。