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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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99)聖樹達の想い

『大昔の人々は今よりもずっと身近で私達と共に生きていました』


気力回復した私は癒しの聖樹様にリンゴを食べさせてもらいながら、静かにお話を聞いていた。


『我々は大地に根を張りその土地を愛してくれる住民達を愛し護ってきた』

「…聖樹様は愛を返して下さるのですね」

『人間も他の生き物達も同じでしょう?愛情を注いでくれる者には愛情を返したいと思うものです』


聖樹様達がそれぞれの森の住民を撫でながら優しい笑顔で話してくれる。どれ程の愛情を持って下さっているかが分かる。


『…だが時の移り変わりと共に我々への人々の敬意や愛情というものは薄れていった。森林伐採で森を破壊し我々も切り倒されて行ったのだ』

「…………」


人々の暮らしは変わって行く。

それはどこの世界でも同じなんだろう。…とても悲しい事だけれど。


『それは人間が生きていくためには仕方がないことなのでしょう。私達はそれを受け入れてきました』

「でも聖樹…様が…その土地を護ってきたんですよね…?聖樹が失くなった土地は…どうなってしまうのですか…?」

『加護が失くなった土地は荒れ荒んでいく。…だがそれもその土地に生きる者達が選んだ道だ』


聖樹様達がとても悲しそうに目を伏せる。


『人々に忘れ去られても…その土地を愛し護り続ける聖樹もいます』

『また逆に人間に失望し自ら枯れる事を選択する聖樹もいる』

「…………」


1人の人間として、胸が痛む。


『あなたが住んでいた村の聖樹は民にとても愛され幸せな聖樹ですね』

「…!!そうです!!私達はいつも聖樹と精霊達に守られていることを感謝して生きてきました!精霊祭では村人全員が集まって感謝と祈りを捧げます!」


ヒルド村の聖樹は幸せだって!

村の人達は森の聖樹をとても大切にしてきた。

ずっとヒルド村で生きてきた私にとってもこれ以上幸せな事はない。


『…このフクロウはそなたの住んでいた森の聖樹に仕えていたようだ。王都まで心配して追い掛けて来たんだな』

「えっ!?フクロウさんが!?」


そんな古くからのお付き合いだったなんて!!

村に住んでいた頃からずっと私を見守ってくれていたんだね…!!



『お前は精霊が何処にでもいることを知っている。木に花に草に土に川に大気に…いつでもすぐ側に存在していることを』

「…前世の私が生きていた国では…八百万の神様がいて、自然だけじゃなくて、人々が大切にしてきた物にも神様が宿ると謂われています。…精霊は神様なんですか?」

『神様だと…?そんな立派なものではないよ』


聖樹様達がクスクスと笑う。


『私達は…ただ生まれた土地を愛してその地に生きるもの達を愛し見守り続けて生きる。…ただそれだけ。何もしない』

「………その…赤い鳥さんは…伝説上の業火の鳥さんなんですか…?」

『太古の人間が付けた名前だな』


そうなんだ…。

ゲームでは確かこの優しい鳥を怒らせて国中を火の海にするんだよね…?

こんなに優しい鳥さんを、精霊達を、私達人間が怒らせてしまうのだろうか…。

今からでも未来は変えられる………?



『人間は森を破壊して生きていけるだろうが、人間によって住処を失った住民達もいる。この森に住む生き物達はみな人間に迫害され住処を奪われたもの達だ』

「…!!」


私は森の住民達を見渡す。みんなが悲しそうな顔をしていた。

ここに居るみんなはここで聖樹に守られて新しく生きられる場所を見付けられて良かったね…。

でもきっと…この森に辿り着く前に命を奪われた生き物達も多かったのだろう。


住処を奪われ自分たちを護ってくれてる聖樹も奪われ…怒り狂う生き物達と精霊達の姿が目に浮かんだ。


そんな未来にしちゃ駄目だ!!



『精霊は何も特別な生き物である訳ではないの。木も水も虫もここの生き物達も人間も…同じ』

「私達人間も精霊の一部という事ですか?」

『そうよ。…そしてあなたはその事をよく知っている』


私は前世の記憶と村での暮らしで当たり前のように知っている事だけれど、この世界でも失われつつある考えなのかも知れない。


『数百年振りに現れた精霊の御遣いもその事に気付いてくれたら良いのだが…』

「…………」



『あなたは村で、この森で、この国で出会った住民達をそのまま受け入れた。あなたの気持ちが嬉しくて住民達もあなたを受け入れました』


ミドリーノやトランポリン、キツネやリス、その他私の修業を手伝ってくれた森の住民達が私の側に来てくれた。みんなの優しい気持ちが伝わってくる。


『先程も言ったが、我々は何もしない。何も出来ない。…ただその場で見守るだけ。…精霊の御遣いのすることも』

「…!!」


力の入らない拳を握り締める。

癒しの聖樹様がそんな私の手をそっと取った。


『それでも…この森の住民達があなたを護りたいと願っています。この子達が護りたいものを私達も護ってあげたいと思いました』

「………あり、がとう…ございます……!」



聖樹様達の姿がだんだんと薄くなっていく。


「!!あの!!…私はこれから何をすれば良いですか……!?」

『あなたはあなたのままで』

『今までと同じように目の前にある命をありのままに受け入れて愛してあげて下さい』

『お前の優しさが伝われば精霊達もお前の助けとなるだろう』

『…我々も見守っているよ』

「……!!」



聖樹様達が優しい笑顔を残して消えてしまった。


私は私のままで………。




その時空から大きく羽ばたく何かが近付いて来るのが見えた。大きな鳥………?


どんどん近付いて来て、鳥ではないことが分かった。


「シロップ………?」


「プリナ!!!」

「プリナーッッ!!!!」

私を呼ぶ声が聞こえる。

助けに来てくれた………!!



脱皮して大きくなっていた時よりももっともっと大きな身体になったシロップが背中にみんなを乗せて飛んできてくれた。


「プリナ…プリナ……!!」

「プリナ…!!生きていてくれてありがとう…!!」

「プリナ…本当に…良かった……!!」


カロが一番に駆け付けて私を思いっ切り抱き締めた。


「…っ!!?」


身体に激痛が走ったけれど、震えながら私を抱き締めるカロの身体の温かさを感じてそのまま受け入れた。


「見付けてくれて……ありがとう………」

「プリナ…プリナ……」

「みんなが…プリナの居場所を教えてくれたんだよ。クロールと…トランポリンとキミドリーナと…みんながプリナを……」

「うん…ありがとう……」

「遅くなってごめんね………」


皆が私の手を握ったり身体を擦ったりしながら泣いてくれた。

今までで一番心配かけちゃったね……ごめんね。



皆が泣き止んでようやく落ち着いて、私の周りにいる住民達と側にあるリンゴや桃や木の実を見渡した。


「…みんなも…プリナを守ってくれてありがとう…!!」

「…プリナを助けてくれて本当にありがとう……!!」

「本当に…本当に…ありがとう!!」



私は毛布にくるまれてカロに抱き締められながらシロップの背中に乗せられる。


「身体が辛いかも知れないけれど、シロップが一番速いからな。少しの間我慢してくれ」

「うん」

「森の出口にウィル様達が救急車を呼んでくれて待ってるから!それまで頑張って!!」

「…うん」


大きな羽ばたきをしてシロップの大きな身体が浮いた。


「みんな…!本当に本当にありがとう!みんなのお陰で生き延びられたよ…!」




優しい森の住民達に見守られながら、私はようやく森を後にした。



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― 新着の感想 ―
[一言] プリナは死にかけてた?! あのゲスめ!ざまぁされないかなぁ。 カロは、もっとプリナに対して 過保護発動させるな、コレは。 本当にミサキが居なくても、 災害防げたら良いなぁ。 ソレでお役ゴメン…
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