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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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93)主人公の帰還

夏休みも残り数日となって寮に活気が戻って来た。

今日は私は図書館で教会やら修道女に関する本を読んで研究している。


「…プリナ、まさか神官を目指すとか言わないよね?」

「あのね、私前世で映画を見てシスターに憧れてたのを思い出したの。子どもの頃からシスターの衣装が着てみたくって」

「……………」

「神官になって、皆で合唱練習して発表会するの!ステキじゃない!?」

「…結婚出来ないよ?」

「側にケルルート様がいてくれるなら…」


顔が熱い。ケルルート様を思い出すだけでトキメキ高血圧症は悪化する。


「……今回は先生の時より重症だね」

「先生と違ってプリナ自身を望まれたからね…」

「単純だからなぁ…」

「プリナの神官のイメージが映画の修道女だよ?思い切りズレてるよねぇ」

「プリナが神官………」

「カロ元気出して!プリナの事だからきっと直ぐに熱が冷めるよ!」

「カロ、頑張れ」

「………………………おう」


皆の心配を余所に、私はシスターの服を纏って合唱団の指揮をする自分の未来のイメージに興奮していた。



図書館を出て寮に戻ろうと歩いていると入り口が何だか騒々しかった。


「ミサキ…!」

「帰って来たのか……」

「ね、側にいるのって」

「……ああ」


ミサキがウィル様とシャルル様にエスコートされて寮に入るところだった。3人の後ろをウィル様お付きのセルゲイ様、ダニエル様が着いていく。


「…!まぁ平民の皆さん。ごきげんよう。2学期からもよろしくね。ほら、ウィル様、シャルル様も平民にご挨拶して」

「…よろしく頼む」

「………2学期もよろしくな」


ミサキは私達に気付くと作り笑いを浮かべた。そしてウィル様達に挨拶を促した。

…これが精霊の御遣いとの力関係なのか。


「ミサキ様は我が国の至宝となられたそうよ!父が言ってましたわ!」

「…ああ、だから殿下を従えてらっしゃるのね」

「やはりミサキ様は特別な方でしたのね…!」

「殿下もシャルル様も、ついにミサキ様の魅力の虜にされてしまいましたか…!」

「…所詮僕らには高嶺の花だったと言う事か…」


ミサキ達の様子を他の生徒達がヒソヒソ噂する。


「…前途多難だな」

「だねぇ…」


ウィル様達は私達に辛そうな表情を見せたが、そのままミサキの後を着いていった。

私達は寮には戻らず、そのまま森へ向かう事にした。



ケルルート様の特訓以来、私は気配を辿って聖樹を探せるようになっていた。ただ最初に見付けた赤い聖樹だけはどうしても見付ける事が出来ないのだけれど。

今日はラベンダー色の聖樹にやって来た。


「あ~、やっぱりこの樹が一番癒される~!」

「本当だね…」

「気持ち良さが別格だな」

「メッチャ気持ち良い……」


ラベンダー色の聖樹の側にはホワイトタイガーの親子が寝そべっている。


「トラさん達にも名前があった方が良いかな?」


トラの親子は尻尾を振って頷いた。


「じゃあ…寅次郎は?」

「お母さんに!?子どもに!?」

「あ!長男かも知れないよね?じゃあダメか…。さくらと寅次郎にしようかと思ったんだけど…」

「イヤイヤ!映画から離れようよ!?」

「むぅ…」


トラの親子が期待の目を向けてくる。

…ステキな名前を付けてあげないと!


「えーと…トランポリンとトラック!」

「…………」


皆は微妙な顔をしてたけどトラの親子が了承してくれた!


「うふふ、トランポリンとトラック、今日はよろしくね!それじゃ、早速修業を始めよう!」

「分かった!」

「おう!」

「はーい!」


私は皆の顔を見渡してから提案する。


「今日は趣向を変えて、今までとちょっと違うことをしてみたいと思います」

「…?」

「皆で手を繋いで聖樹を囲むようにしてみて!」

「…分かった」


全員で手を繋いで聖樹に抱き着く。

それから手が離れないように聖樹から身体を離して、手を繋いだまま、腕を天に向かい掲げてみた。


「!!?」

「…何これ!!」

「マジか!!!」

「すげー…!!!」



辺り一帯の木々の葉っぱが聖樹と同じラベンダー色に変わった。

前世でお花見した公園の桜を思い出す。

花じゃなくて葉っぱだし、色もピンクじゃなくて薄紫色だけれど。


「すっごく綺麗だねぇ…!ここでお花見したいなぁ」

「本当に綺麗…」

「…それに何だか全身が癒されてくような感じがする…」

「ラベンダー色の聖樹のパワーが他の木々にも伝わったのかもね」


私達の身体も光のベールに包まれていた。

今なら怪我も治せそうな気がする!!……ん?

私はその場で屈伸したり上体反らしをしたりと身体を動かしてみた。


「痛くない…」

「えっ!?」

「怪我が治ったみたい!」

「えぇ!?全治2ヶ月だよ!?骨にヒビが入ったんだよ!?」

「うん。精霊が治してくれたみたい」

「半端ねぇな……」


私はしゃがんで草に手を触れた。

すると草にもラベンダー色の小さな花が咲いた。


「!皆もやってみて!」

「えっうん」


皆もラベンダー色の花を咲かせる事が出来た。


「…!!すごい!!」

「これで皆で協力し合えばすごいパワーが生まれる事が分かったね!」

「…私達の力で……」

「プリナの力になれる…?」

「皆の力だよ!あと森とトランポリン達のおかげ!!」

「…皆で力を合わせれば…!!」

「奇跡だって起こせそうだね!!」


私達は日が傾くまでラベンダー色の風景を楽しんだ。




「そろそろ寮に戻ろう」

「うん」


カロが当たり前のように私を抱っこしようとする。


「カロ、もう怪我は治ったよ?」

「良いから。疲れただろ?」

「毎日聖樹の気配を探す訓練して疲れてるでしょ?カロに甘えなさいな」

「そうだぞ?カロは抱っこする理由が無くなってガッカリしてるんだから」

「そうそう!カロはケルルート様にプリナを取られそうで焦ってるんだよ?」

「…みんな、うるさい」

「ふふ、分かった!」


確かに未だ聖樹の探索は気力を使ってヘトヘトになる。精霊がパワーをくれて直ぐに回復はするけれど。



「…カロは私のこと好き?」

「…好きだよ」

「メリザは私のこと好き?」

「大好き!!」

「…ポリーは私のこと好き?」

「だーい好き!!」

「…イルクは私のこと好き?」

「当たり前じゃん!オレも大好きだよ!」

「…うふふふ!私もみんながだーい好き!!!」


大好きな人達が私を好きだと言ってくれる。

なんて幸せなんだろう!!!


「ガウ…」

「ふふ、シロップもだーい好き!!!」



皆がいてくれれば2学期からも頑張れる!!


とっても温かな気持ちで寮へと帰った。

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― 新着の感想 ―
[一言] カロが自分を、恋愛的な意味で大好きってこと いい加減気づけ~!(T△T) カロも、もう少し攻めろ!
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