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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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92)私も修業が必要です

夏休みも終盤になって、地方に帰省していた生徒達が少しずつ寮に戻って来た。


今日はウィル様とセルゲイ様が久しぶりに学園にやって来た。


「ウィル様!…あの、ケルルート様のことを教えてもらえませんか…?」

「叔父上?…ああ、ここにロベルトと来たんだったな」

「…はい」


私は真っ先にウィル様に質問した。


「叔父上は非常に優秀で王に望む臣下も多かったと聞く。叔父上は国が荒れるのを心配して早くに王位継承権を放棄したんだ。私が生まれた時には既に神官だったよ」

「…そうなんですか」


優秀で優しくて控え目で思い遣りがあって。


「…プリナは叔父上に会ってどう思った?」

「!は、はい!…とってもステキな人、です…」


顔が熱い。


「……………」


「プリナ、1つ言っておくと」

「?はい」

「我が国の神官は結婚出来ないよ?言わば神と結婚したようなものだ」

「!!?」


色々ショックで言葉が出なかった!!


「…私はそんな……」


言葉が続かない。

そりゃあ、ケルルート様とずっと一緒に居られたらとても幸せだと思うけれど…結婚なんて……

っていうか、私はケルルート様について質問しただけなのに!!何で!!?


「……………」

「えーっと…それで?皆はケルルート様とどんな話をされたんだ?」

「森に行って、プリナの修業が見たいと仰って、プリナが精霊の力を借りてました」

「何でも貴重な薬草が咲いたとか…」

「…そうか。プリナはさすがだな」


私が何も言えない間に皆が会話を続けてくれる。


「森の聖樹に辿り着けたのか?」

「はい、ケルルート様に言われてプリナが探しました」

「…空の聖樹、とケルルート様が教えてくれました」

「また他にも聖樹が見付かったのか…!?」

「そうです。とても美しかったですよ!」

「…それは私も見てみたい。プリナ、案内してもらえるか?」

「………………え。あ…はい!」



私達が森へ出掛ける準備をして寮を出たところで


「プリナさん」

「!!?」


ケルルート様がお一人で来られた。


「これから森へ行くのですか?」

「はい…!ウィル様が聖樹を見たいと…」

「私も一緒に行っても良いでしょうか?」

「はい…!」


ケルルート様と目が合うとドキドキが止まらない。高血圧で死ぬかも。


「…プリナはケルルート様を好いてるそうですよ」

「!?」


セルゲイ様!?いきなり何を言い出すんですかー!!!


「…プリナさんは私のお嫁さんになりたいのですか?」

「えっ」


本人に聞かれて頭全部が炎に包まれた気がした。

ケルルート様は私の様子を見て破顔した。


「ふふ………プリナさんはとても可愛らしいですね」

「…!!!」

「こんな可愛らしいお嫁さんがいたら、私もとても幸せです」

「!!!!」


「ケルルート様…お戯れを。あなた様は神官ですよ?乙女を拐かすような物言いはお控え下さい」

「そうですよ、叔父上。プリナはとっても純粋なんだ。本気にしたらどうするんですか?」


セルゲイ様とウィル様がケルルート様をやんわりと嗜める。私はこんなに幸せなのに!!


「私はプリナさんも、プリナさんが纏う空気も、プリナさんの温かさも、全て好きですよ」

「!!!!!」


どうしよう!!

私、ケルルート様に殺される!!!

死因はキュン死!!!!尊い!!!!!


「…ケルルート様もうそのくらいで」

「そうです!プリナがもう死にそうです」

「…死ぬ?」


私はトキメキ高血圧症で瀕死の状態をメリザとポリーに支えられて何とか倒れ込まずに済んだ。

シロップが心配そうにパタパタと飛びながら私の顔を覗き込んだ。


「プリナさんと一緒なら、ドラゴンともずっと一緒にいられるんですね」

「!!?」

「ガウ?」

「叔父上!?」

「ケルルート様!!?」


私がもう魂を半分送ってしまった状態なのに、ケルルート様は更に顔を近付けてきた。


「プリナさんも神官になったらどうでしょうか」

「!!?」

「神官になったらずっと一緒にいられますし、共に神に仕え、精霊への祈りを捧げながら生きて行けます」


ケルルート様が私をジーッと見詰めて微笑んだ。


「私と共に生きていただけますか?」

「…は」

「プリナ!!早まるな!!?」

「プリナ~!!即答しちゃダメぇぇ!!!」

「プリナ!!?」


皆が私の前に立ち塞がって大騒ぎした。


「プリナは!好きな人と結婚するのが夢でしょう!!?諦めちゃうの!?」

「そうだよ!?神官になったら生涯独身だよ!?良いの!!?」

「その場の勢いで受け入れたらダメだ!!!」

「そうだ!!叔父上に取られる位なら私が娶る!!!」

「僕も将来を真面目に考えるから!!!」


「…………………え?」


ウィル様とセルゲイ様の発言に皆の発言がピタッと止まった。


「ウィル様……?」

「セルゲイ様も!!どさくさに紛れて何を言い出すんですか!?」

「セルゲイ!!貴様、何を言ってるのか分かっているのか!!?」

「いや……思わず……………」


ウィル様はケルルート様に向き直ってため息を吐いた。


「…叔父上。私達は未だ学生です。人生の選択を迫らないで下さい。プリナがどんなに可愛くて優しくてとても魅力的だとしても」

「…そうですね。私も急ぎ過ぎました」


「プリナさん?」

「は、はい」

「卒業まで考えてみて下さいね。私は諦めません。あなたをずっと待ち続けます」

「プロポーズ……!」

「違うから!!プリナ、しっかりして!!」




私のトキメキ高血圧症が安定してから皆で森へ向かった。


「今日は何処に向かわれますか?プリナさんが行きたいところへ連れて行って下さい」

「はい。ウィル様が空の聖樹を見たいと仰っていたので、また行こうと思います」


今日は途中でミドリーノとキミドリーナのカップルに出会って一緒に歩いた。2人はラブラブだね!


自分の感覚を頼りに空の聖樹を目指す。

前に一度行ってるから直ぐに分かるかと思ったんだけど………


「あれ?」


分かんなくなった。


途中までは何となく気配があったのに…。


「プリナ?どうしたの?」

「分かんない」

「えっ?何で?」

「…分かんない。途中で分かんなくなった…」


皆で立ち往生してしまう。



「…それは私が邪魔をしているからですよ」

「!?」


ケルルート様が驚くような事を言い出した。


「邪魔?」

「そうです。…私は精霊の干渉を消しています」

「!?そんなことが出来るんですか!?」

「はい。…今日はプリナさんを試してしまいました」

「…どうしてですか?」

「…プリナさんは恐らく精霊の御遣いの少女と対立する事になるでしょう。精霊の御遣いの能力でプリナさんの力になりたい精霊達もあなたに近付けなくなるかも知れません」

「………!」

「それでも精霊の意思を尊重して力を借りられるように、プリナさんにも修業して頂く必要があります」

「…………」

「私はただ周囲の気配を消しただけです。精霊の御遣いの能力はもっと強力に精霊を抑える事でしょう」

「………ミドリーノ達が来てくれたのは…」

「まだ邪魔をする前に出会いましたからね」

「……………」

「私の力に勝って下さいね」

「……頑張ります」


目を閉じて一生懸命に聖樹を探す。

森の気配を必死に感じてみる。


…集中すると、少しずつ森の中の空気の流れを感じられるようになってきた。


もっと集中!!!


もっとだ!!!!


森の声が聴こえる。


私は歩き出した。

感覚を研ぎ澄ませて、皆の事も忘れて呼ばれる方へと歩く。



「…会えた……!」


空の聖樹だ!

初めて同じ聖樹の元に行けた…!!


安心したら力が抜けて倒れそうになった。


「…よく頑張りましたね」


ケルルート様が倒れかけた私を助けてくれて、そのまま支えてくれた。


「プリナ!!?」

「プリナ、大丈夫!?」


皆が心配してくれてるのが分かるけどボンヤリして答えられない…。


「気力を使い過ぎたんですよ。少し休めば直ぐに良くなります」

「だからと言ってプリナにこんな無茶させて…!!」

「そうですよ、叔父上!!」


キーキー!!ギャーギャー!


森の生き物達が騒いでる。


「おやおや。森が私を怒ってますね。プリナさんを苛めるなと」


私はカロに抱っこされてメリザに水筒の水を飲ませてもらった。

少し良くなった気がする。


「プリナさんは森から愛されてますからね。森の精霊があなたに気を送ってますよ。直ぐに回復するはずです」


ケルルート様の言う通り、少し休んだらかなり元気になった。


私はカロに抱っこされたまま皆の修業を見守った。

ウィル様も他の皆も草木の成長が見られたが、白い花が咲くことはなかった。


助っ人が少なかったからかも。



私はカロに抱っこされたまま、皆で森から帰る。


「プリナさん、黙っていてすみませんでした」

「いえ………」

「あなたは不思議な魅力があります。人も精霊も惹き付けるような」

「…………そうでしょうか……」

「プリナさんが愛情をくれるから周りもあなたを愛するのでしょうね」

「ガオ!」

「…このドラゴンのように」

「ガオガオ」

「そうでしょう?ウィル」

「!?………はい。叔父上の仰る通りです」

「ロベルトも」

「はい!!私は生涯プリナ様にこの身を捧げる所存であります!!」


ロベルト様…マジで重い。


「君達もプリナさんの力になってあげて下さいね。プリナさんの心を守ってあげて下さい」

「はい!!」


皆が力強く答えてくれる。

ふふ、幸せだなぁ…。





誤字・脱字報告をありがとうございました!


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[一言] ロベルトの親族、ロベルト含めなんか、嫌い。
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