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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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9)同じ運命を背負う仲間との出逢い

「ちょっと、すみません!!米料理って他にどんなのがありますか!?」


後ろから聞こえた声は背が高い暗めの金髪の男の子だった。彼は注文するカウンターに駆け寄ってオーダーを取る男性店員?にいきなり質問した。店員は彼の勢いに飲まれながらも


「あ、ハイ。えーリゾットやピラフなどがご用意出来ます」

「白米は!?」

「ハクマイ…?すみません。ハクマイとはどのような料理でしょうか?」

「だーっ!!肝心の白米は無いのかよ!!!」


私も気になったので彼の横まで行って会話に参加する。


「西洋的なスープで米を炊く感じか…。えっとスミマセン、調理前のお米を戴く事は出来ませんか?」

「材料としてですか?それはちょっと難しいかと…。上の者に確認を取りませんと何とも…」

「デスヨネー」


そこでお米料理に食い付いた男の子がパッと私を振り返った。


『もしかしてキミ、米があれば白米作れるの!?』

『そ、そうだね…。お米があれば水で炊くだけなんで、出来るかも。ホラ、始めチョロチョロ中パッパ、って昔学校で習わなかった?』

『あ~~そういや小学校の家庭科の調理実習で白米と味噌汁作ったような…』

『そうそう!!お味噌汁!!うわぁ超懐かしい~!!』


と2人で盛り上がっていたところで、ハッとお互いについてある可能性に気付いた。


『…キミ、ひょっとして前世日本人?』

『えっ、まさか…そっちも!?』


お互いポカーンと顔を見合わせた。改めて初めてちゃんと彼の顔を見てみると背が私より20センチ位高くひょろっとして見えるけれどガリガリではなく人の良さそうな顔をしてる。白い肌に透き通った茶色の瞳。うん、普通だ。恋愛小説やドラマだとイケメンと出会えるのになぁ。まぁ私も普通の田舎モンなんで向こうも同じ事思っているかも。ごめんね、美少女じゃなくて。

お互い何から聞こうか次の言葉を探しているところ、やや掠れ気味の女の子の声が聞こえた。


『今ここで日本語が聞こえてきたんだけど…』


声の主を見てみると今度はダークブラウンの髪と瞳を持った、スタイルの良い女の子がやって来た。ニホンゴ?…って私今日本語で喋ってたんだ!うわぁ今でも日本語話せるんだ、私!!前世の記憶が戻ってからだってヒルド村で育ってきたプリナとしての記憶がメインだし、そもそも日本語使えるチャンスもなかったから指摘されてビックリした。無意識だったけれど前世の記憶は頭の中で日本語で考えていたんだろうか?ひょっとしたら今の私ってば前世で憧れたバイリンガルってやつ!?2つの言語脳が使えるってやつ!?


『あ~、そう聞いてくるってことは、貴女も前世は日本人だったりするの…?』

『…そう、なの、かも。今あなた達の話す声がポンと聞こえて来てパッと会話内容を理解して、そうしたら一気にバーッと』


ポンとかパッとかバーッとか。

でも言わんとしてる事はなんとなく分かる。


まさかの前世日本人だと思われる人間がこの場に3人!!これは正しく運命的な出会い!!…イヤイヤ、これは絶対に仕組まれてる運命だろうね。お互い何が何だか判らないけれど、とにかくこの学園に同時期に同じ過去を持つ人間が揃うというのはきっと深い意味があるんだろう、との共通認識が生まれた。


これは大事な事なので、食事を済ませたらラウンジに集合する事にした。食堂じゃユックリ話せないもんね。女の子は既に食べ終えてて食堂を出ようと歩いていたら私達の声が聞こえたらしく『先にラウンジに行ってるから』と出ていった。男の子は注文はこれからだったけれど『オレ早食いだから』と言ってたので私も急がねば!


急いでパエリアを注文して受け取ってカイリーが座っているテーブルを探すとカイリーは私以外の知り合いを見付けたようで他の女の子と一緒に食べていた。


「あ、プリナ!ここ!ごめんね先に食べてるよ~。さっきカウンターで話してたよね?何だか盛り上がってたけど誰か友達が入学してたの?」

「うんまぁそんなとこ。食べたらこの後直ぐに集まる事になったの」

「初日にさっそく友達に会えて良かったね!私達の事は気にしなくて大丈夫だから、ホラ急いで食べないと!何で急ぐ時にパエリアなんて食べるのに手間がかかる料理を選んだの?」

「うっ………食べたかったから」


そしてカイリーは「あくまでも善意」と言ってチャッカリ私のお皿から殻付きエビやムール貝みたいな貝を取って行った。そんなに具を取ったらお米だけになっちゃうじゃん!容赦ないな!!


王都で初、学園で初の記念すべき食事だったのに、この後の集会に気が急いてこの世界で生まれて初めて食べるお米だったのに味わう余裕なんてなかった。


私は急いで食べ終えて片付けようとトレイを持って立ち上がった。するとカイリーが


「あ、プリナ。食べ終わったらそのままで平気だよ。給仕さんが後はやってくれるからナプキンだけ置いとくの」

「そうなんだ!教えてくれてありがとう!じゃ行ってくるね!」

「行ってらっしゃ~い」


2人をその場に残して私は教わったラウンジへ小走りで向かった。が、出口付近で「淑女がはしたない!優雅に歩きなさい!」とキツく注意されてしまった。走って叱られるなんて小学校以来だよ!小学生の時に校内鬼ごっこして廊下を全力で走ってて、そしたらいつの間にか鬼が先生になってて全力で追い掛けてきた先生に捕まってそのまま職員室まで連れていかれた事を思い出した。あれほど恐い鬼ごっこはなかったよ…。廊下を歩いていた先生に気付かなくて全速力で追い抜いちゃったらしかった。


前世の記憶を1つ思い出すとどんどん記憶が甦ってくる気がする。相変わらずどうでもいいエピソードばっかりだけれど。…アレ?私の前世にそんなに重要な思い出なんてあったっけ?


15年も気にせずやってこれたのに、彼らと話したお陰で御飯が恋しい…。白まんまが食べたくて堪らない。探せばいつかこの世界でも白いご飯にお味噌汁、という和食が食べられるんだろうか。


うん。先ずは情報の共有からだよね。


ラウンジに着いた。

緊張と期待でドキドキしながらラウンジのガラスのドアを開けた。



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